| Introduction 序盤アウトライン: |
| 米国の宇宙ロケットが未確認飛行物体と遭遇した直後に行方不明になる中、疑心暗鬼の米国と無実を唱えるソ連の関係悪化を憂慮した英国は、問題の未確認飛行物体が着陸した日本にボンドを送り込む。やがて、膨大な液体燃料を輸入する「大里産業」と事件の関係を突き止めたボンドは、その積荷を行う神戸に向う中、謎の一味に囚われてしまうのだがーー |
| Various Note メモ: |
スペクターとボンドの死闘を描くシリーズ第5弾。イアン・フレミングの原作は、小説リリースの順番では12番目でシリーズ終盤。脚色は、人気TVミステリー「ロアルド・ダール劇場/予期せぬ出来事」や「チャーリーとチョコレート工場」の原作者としても知られるロアルド・ダール。演出は「アルフィー」「フレンズ/ポールとミシェル
(1971)」のルイス・ギルバート。後の70年代には「私を愛したスパイ」「ムーンレイカー」で再びメガホンを握る。
以下、完全ネタバレ。未鑑賞の方はご留意下さい。 |
| various novels and movies 原作と映像化作品のリスト: |
| 原作 novels |
映像化作品 movies |
| year |
邦題
別文節の「007号」は省略 |
original title |
year |
title
邦題
|
| 1953 |
カジノ・ロワイヤル |
Casino Royale |
1953 |
US/CBS TV
Climax Mystery Theater
Casino Royale
* Barry Nelson as 007 |
| 1967 |
same |
| 2006 |
same |
| 1954 |
死ぬのは奴らだ |
Live and Let Die |
1973 |
same |
| 1955 |
ムーンレイカー |
Moonraker |
1979 |
same |
| 1956 |
ダイヤモンドは永遠に |
Diamonds Are Forever |
1971 |
same |
| 1957 |
ロシアから愛をこめて |
From Russia with Love |
1963 |
same
007 危機一発
007 ロシアより愛をこめて
|
| 1958 |
ドクター・ノオ |
Dr. No |
1962 |
same
007は殺しの番号
007 ドクター・ノオ
|
| 1959 |
ゴールドフィンガー |
Goldfinger |
1964 |
same |
| 1960 |
007号の冒険
以下5編収録の短編集。
#1: バラと拳銃
#2: 読後焼却すべし
#3: 危険
#4: 珍魚ヒルデブランド
#5: ナッソーの夜 |
For Your Eyes Only
* omnibus as 5 episodes
#1: From a View to a Kill
#2: For Your Eyes Only
#3: Risico
#4: The Hildebrand Rarity
#5: Quantum of Solace |
1981 |
same
007 ユア・アイズ・オンリー |
| 1985 |
A View to a Kill
007 美しき獲物たち
|
| 1961 |
サンダーボール作戦 |
Thunderball |
1965 |
same |
| 1962 |
わたしを愛したスパイ |
The Spy Who Loved Me |
1977 |
same
007 私を愛したスパイ
|
| 1963 |
女王陛下の007号 |
On Her Majesty's Secret Service |
1969 |
same
女王陛下の007
|
| 1964 |
007号は二度死ぬ |
You Only Live Twice |
1967 |
same
007は二度死ぬ
|
| 1965 |
黄金の銃を持つ男 |
The Man with the Golden Gun |
1974 |
same
007 黄金銃を持つ男
|
| 1966 |
ベルリン脱出
以下3編収録の短編集。
#1: オクトパシー
#2: 所有者はある女性
#3: ベルリン脱出 |
Octopussy
* omnibus as 3 episodes
#1: Octopussy
#2: The Property of a Lady
#3: The Living Daylights |
1983 |
same
007 オクトパシー
|
| 1987 |
same
007 リビング・デイライツ
|
|
| release dates 英/米/日本での封切り状況: |
| ロンドン・プレミア:1967年6月12日/全米公開:1967年6月13日/日本公開:1967年6月17日。 |
| a novel and a movie 原作と脚色: |
| 日本を舞台にボンドとブロフェルドが死闘を演じる辺りは原作に同じだが、米ソの宇宙開発をネタに世界戦争を目論む脚色でのブロフェルドと、日本で隠居生活を送るブロフェルドの自己陶酔と半狂乱状態でのローカルな犯罪を描く原作の印象はかなり違う。ただ、何より違っていたと云えば、原作と脚色のリリースが逆だったと云う事。「女王陛下の007」で新妻トレーシーを殺害されたボンドの因縁の対決を描く原作に対して、脚色版は一発モノの大活劇でトレーシーが殺害されるのも次回作での事。 |
| 過去4作品の映像シリーズの場合、さまざまな違いも大きなトピックになるようなものではなかったが、ここでは取り上げるべき所もあまりに多い。まず原作については、自堕落な生活を送っていた事から00ナンバーを体よく剥奪された挙句、「7777」と云う暗号名で登場する辺りも重要なファクターだが、何より、ヒロインのキッシー(脚色では浜美枝さんの役)を孕ませた挙句に記憶も失う衝撃のエンディングは、原作ならではのサプライズ。また最も興味深いのは、あのデイヴィッド・ニーヴンが鵜の名前で登場する辺り。ニーヴンと云えば、映像化プランが持ち上がった当初、フレミングがボンド候補として最初に推していた人物だが、本作の2ヶ月前に封切られた番外編「カジノ・ロワイヤル」の実質的主人公もデイヴィッド・ニーヴン。要は、「カジノ・ロワイヤル」のキャスティングそのものが、同時期公開のライバル作品たる本作の原作を意識していたとすれば、これぞ正しく上質なパロディだったと云う話。 |
| 1962年の秋には、あのサマセット・モームに同行する形で来日を果たしていたフレミングだが、ボンドとタイガーがジャンケン勝負(3R3本勝負)で距離を縮める描写を皮切りに、日本人の伝統や文化、気質についても細かく言及する原作の内容は、さながらフレミングによる日本見聞録。日本文化のディープな描写に終始する中、間延びしていると云う批判も受けた原作だが、フレミングが自らの足で稼いだ独自のレポートは、個人的にはかなりウケた。三味線の調べを不協和音と切り捨てるなど嗜好性が露にされる辺りもかなり面白い。「神風特攻隊」と「切腹」をブレンドするタイガーの回想録も何気にドラマティックだったが、やはり面白かったのは、脚色にも挿入される「忍者」と「相撲」。 |
| ボンドを狙うスパイが忍者トレーニングの最中に退治される脚色だが、あのパートも恐らくは、石垣を登る訓練の最中に部隊の一人が死亡する原作のシリアスな情景をモチーフにした脚色。と云うかそもそも、当時としては珍しいほどの日本通な内容の一方、島国の日本については、取り敢えず何を書いてもイイのかもと云ったフレミングのお気楽なスタンスが笑える。恐らくは、来日した中でも「忍者」というカテゴリーについては接触する手立てもなかったはずのフレミングだが、何れにせよ、柔道・剣道の有段者が最終的には「忍者」の世界に辿り着くという頓珍漢な「公安」の描写は、世界中のフレミングファンが真に受けたはず。後年、マジなカテゴリーとして定着する「忍者」だが、本作の影響も少なからずあったのかも。と云うか、60年代の娯楽作品の中で描かれる「忍者」と云うのも日本人には爆笑モノだった訳だけど。 |
| 相撲については「横綱」をダイアローグ付きで登場させる脚色だが、一方の原作での相撲談義はかなり凄い事に。フレミングによれば、太ももの筋肉を十代から発達させる事で金的への攻撃を防ぐ事が出来るという「相撲」だが、思えば、この辺りの文化講釈が一番凄かったのかも。執筆当時の英国でも柔道の人気が定着していた事を考慮すれば、と云うか、フレミングの作品では柔道の講釈も随所でアピールされていた事を考慮すれば、フレミングが英国の柔道に触れる中で又聞きしたような日本文化が、金的をカヴァーする横綱取りという話になったのかも。ただ実際、太ももを異常なまでに発達させる事で金的を急所としないファイターなどもさまざまな界隈には存在したらしいが、日本の相撲取りには急所攻撃に備えて四股踏んで鍛えている人もいない訳なので。 |
| 他に原作ならではと云えば、平成以降ではかなり珍しい煙草ブランド「しんせい」やウィスキーブランドの「サントリー」も再三登場しているが、あのウィスキー製造の過程をレクチャーする辺りはフレミングの来日時の体験記に他ならない。ちなみに、脚色の方では「アサヒビール」「フルヤ」「東芝」などのネオン看板が登場。 |
| 一方、メインキャラが遺恨を抱える訳でもなく、エンタメの王道を行くような豪放磊落な印象の脚色だが、これも実はかなり笑える。と云うか、この手の路線に理路整然を要求するのもナンセンスなのだが、それにしても、否が応でも目に付く箇所が満載。まずは冒頭の香港。ボンドの存在を抹消すべく手の込んだ芸を披露するMI6だが、香港と云う他所の土地(と云うか領地だが)で事件を起こす中、地元メディアを誘導するまでは良いとして、海軍の水葬にボンド本人を「出演」させる辺りはフツーに変。水葬の現場をメディアが中継する訳でもなく、結局は猿芝居に加担した海軍が自らボンドを回収する訳だが、何れにせよ、香港当局がボンドの死亡声明を出す中、MI6がボンドの身柄を引き受けた時点でどうにでも出来たはず。 |
| 次は、日本通の情報提供者ヘンダーソンがボンドの眼前で暗殺されるシーン。アサシンに化けたボンドが一味の車にまんまと乗り込む中、成り行きで大里産業の存在に気付く訳だが、そもそもアサシンに化けたボンドを、あの屈強な殺し屋が担ぎ上げてアジトの中に運び込むってのもあり得ない。と云うか、プロレスラーのP.F.メイヴィアを「屈強」な殺し屋として登場させていたのも、中肉中背のアサシンも巨漢のボンドも、殺し屋にとっては同じような目方だったとする意図だったのかもしれないが、何処を損傷したのかも返事出来ないほどの重傷者の仲間を、肩口に担いで事務所に運び込むヤツってのもそうザラにはいないはず。 |
| また、大里産業に探りを入れるボンドが、建物から退去した後に狙われるというのもおかしい。と云うより、アジトを出る前に消してしまえ!と云うのがどう考えてもフツー。個室に通して毒を盛るか、背後からの一発で事は足りていたはず。市街地でマシンガンをぶっ放す事など以ての外だが、その後の展開も結構凄い。ボンドを追跡する悪漢一味も巨大マグネットで海に放り込まれてジ・エンドとなる訳だが、実はあの悪漢一味も、黒幕の正体も皆目見当つかぬ中ではその糸口にもなる稀少な生き証人。ワイルド7のような問答無用での「退治」劇も確かにスカッとはするが、そんなダイナミックな筋書きも、自衛権を巡りすったもんだするここ日本ではリアリズムも皆無。と云うか、そんなもの必要ないのだが。 |
| 要はこれら一連のシークエンスも、相次ぐダイナミックな見せ場の為に用意された繋ぎのようなスクリプトだった訳だが、そんな違和感は終盤でも続く。目と鼻の先に漁港を構える小さな島でロケットを離着陸させても誰も気付かなかった辺りもヘンだが、ソ連を装うスペクターのロケットが米国のロケットを格納するドキドキのクライマックスなども、そもそもキッシーが援軍を呼びに行った時点でスペクターの暗躍をタイガー経由で米国に報告していれば、丸く収まっていた話。と云うより、事件の真相をいち早く報告せずに米ソ関係を窮地に追い込んだ日本は、米国はもとより国際世論にも火だるまにされたはず。 |
| ただ、根っからのボンドファンとしては、基本、ボンド映画であれば何でもオッケー。原作とは別モノのダイナミックな大人の童話を楽しめれば文句ナシ。と云うか、何でもシャレになってしまう辺りがこのシリーズならではの醍醐味。ちなみに、原作には登場しない神戸でのシークエンスも、当代ならではの懐かしい描写。銃も持たずにこん棒やナイフで応戦する愚連隊のような悪漢キャラは、監督のギルバートが当時の邦画を参照にしていた事も明らか。忍者トレーニングで居合いのような剣舞を披露する人物が終盤で再び登場する辺りも嬉しい。原作と脚色の細かな違いについては、適宜以下の段落で。 |
| about James Bond ジェームズ・ボンド: |
| 脚色での任務は、米ソ関係に終止符を打たんとするブロフェルドの計画阻止。一方の原作では、新妻トレーシーを失った事で自堕落な生活に身を置く中、Mの顔なじみの医師の温情で日本に送られるボンドだが、ついては、00ナンバーを剥奪されて「7777」と云う新たな身分になる描写も脚色では描かれず。ちなみに、00ナンバーの剥奪を巡る原作の経緯については、相次ぐ任務の失敗でMにクビにされるはずだったボンドが「7777」と云う新たな身分を体の良い「昇進」と言い渡される中、最前線への復帰と解釈したボンドが日本行きの任務でモチベーションを取り戻すという流れ。 |
| ちなみに原作での任務は、「マジック44」と云う暗号解読器を日本政府から入手する事。つまり、当初は日本と云う国家がボンドの標的だった原作だが、ブロフェルドとの対決に至るのも「マジック44」を引渡す日本側が提示した交換条件だったもので、そのターゲットがブロフェルドだと云う事が判るのも終盤での事。当然、あのイルマ・ブントも登場する原作だが、鉄壁の要塞と化した天守閣と城郭に丸腰のボンドが単身乗り込むという無茶な設定は、ダイナミックな脚色をも凌ぐ緊張感。しかも、やがて迎えるクライマックスは、激しい戦闘で記憶を失った挙句に、脚色とは違い地元の協力者として登場するキッシーを孕ませると云うボンド作品にはあるまじき衝撃の幕切れ。次回作にネタを残すエンディングも原作シリーズでは珍しくないが、次回作への期待度となれば、本作がシリーズでも随一ではないだろうか。 |
| 日本人に化ける辺りは原作にも同じだが、ちなみに原作での変装名は「轟太郎」。そんな偽名は登場しない脚色だが、ムダ毛処理させられた挙句にカツラをかぶるここでのボンドもかなり笑える。しかも、わざわざその格好でアキとの一夜を迎えると云うかなり微妙な設定。ちなみに、日本の女性情報員アキは脚色ならではのオリジナルキャラ。アキと云えば、メインのボンドカーとも云えるトヨタ2000GTを運転するのはアキ。独占契約を結んでいたトヨタ車(クラウンやコロナなど)だけで統一される車だが、ボンドがハンドルを握らないのはシリーズ全作品でも本作だけ。 |
| ダイビングスーツのボンドをそのまま「発射」する軍艦、敵の車を捕獲する巨大マグネット、小型オートジャイロ「リトル・ネリー」、ロケットガン、ミニ・ロケット(タバコ型)など奇抜な装備も多数登場するが、この辺りのエンタメ度も過去4作品とは明らかに違う所。英国人カメラマンが片足を切断する事故に見舞われた「リトル・ネリー」については、後方に付ければほぼ勝利も確定するヘリの空中戦が展開する中、小回りを真骨頂にする辺りが重宝だった事は理解出来るが、安全ベルトがなかった辺りはかなり微妙。また、必殺の武器でも何でもないが、最後に登場するゴムボートは印象的。それなりの頭数が海に逃げ込む中、ボンドとキッシーがその一つを占領していたので。 |
| Intro Sequence 冒頭シークエンス: |
| タイトルデザインの担当は、後の「消されたライセンス」までの本家シリーズ全作品を手掛けるおなじみモーリス・ビンダー。マグマ+蛇の目傘+日本女性の映像による三位一体のタイトルデザインは、全シリーズの中でもかなりの異色度。火山を舞台に日本の女性情報部員も活躍する筋書きを考慮すれば理解出来なくもないが、見ているだけでも結構熱いマグマと美女のコラボというのもフツーに微妙だった。ただ、蛇の目傘のアイディアは絶品。他のメインモチーフも考え難いので。 |
| ナンシー・シナトラが歌うテーマ曲は、全シリーズの中でも屈指の名曲。あのイントロは、劇的という視点ではシリーズでも随一。BとF#mを転調感覚で交差させるヴォイシングや和風ペンタのメロは、とにかくカッコイイ。"And love is a stranger..."のサビで転調する構成もアカデミック。 |
| location 舞台: |
ハワイ上空の宇宙 → 香港 → 東京 → 神戸 → 神戸と上海を結ぶ日本海の島「まつ」
ジャマイカ、トルコ、米国、バハマと続いた映像シリーズだが、ここでの主な舞台は西日本。あのメイン舞台の島は、神戸と上海を結ぶ近海というロケーション設定の脚色だが、京都も登場する原作のメイン舞台は福岡と大分の近海。国技館は登場せず。ちなみにそれぞれの撮影は、火山口の撮影は阿蘇で、漁村のシーンは鹿児島県坊津。 |
| enemy ボンドの敵: |
エルンスト・スタブロ・ブロフェルド (ドナルド・プレザンス)
Ernst Stavro Blofeld (Donald Pleasence)
云わずと知れたスペクターの首領。映像シリーズでの登場は3度目だが、顔を見せるのは今回が初めて。ちなみにダイアローグでの発音は「エルンスト」ではなく「アーンスト」。演じるドナルド・プレザンスは、「大脱走」「ミクロの決死圏」などメジャー作品でもおなじみだった人だが、後年は「ハロウィン」「ドラキュラ (1979)」「フェノミナ」「パラダイム」などホラーへの出演が目立つように。
統率の取れた一味を率いて米ソを戦争に導く中、利益を得る第三国から不当な利益をせしめようとするここでのブロフェルドだが、原作でのバックグラウンドは全く別。その内容は、「サンダーボール作戦」「女王陛下の007」での大犯罪計画をボンドに木っ端微塵にされた事で半ば気の触れた状態で日本に移住する中、世界中から仕入れた毒花などで自殺者を引き寄せる悪の楽園を構築、何と社会貢献を謳いながらアイデンティティを証明しようとするルナティックな計画。
「女王陛下の007」のイルマ・ブントを始めとする取り巻きについては、「ブラック・ドラゴン」と云う20人程度のゴロツキ集団を従える中、大分の城跡でヒッキーになる情景はさながらお山の大将と云った所だが、丸腰のボンドと思わぬ形で再会するクライマックスはかなりのスリル度。日本という異国でのあまりに予想外の再会だった上に、身分を偽るボンドの正体にも確信を抱けぬブロフェルドだが、その口を割らせるべく用意した拷問もかなり凄い。脚色での舞台が火山だったと云うのも、実はこの辺りがベース。また何より、自身の要塞に蔓延する毒気に犯されないように「鎧」を身にまとうと云う設定が物凄い。と云うか、かなり楽しい。 |
ヘルガ・ブラント (カリン・ドール)
Helga Brandt (Karin Dor)
ボンドガール。ブロフェルドには「No.11」と呼ばれるスペクター幹部の1人。原作には登場せず。自らの欲求を満たす為に一時的にボンドを生かしてしまった事からブロフェルドに処刑されるキャラだが、「黄金銃を持つ男」や「ムーンレイカー」など一味側の女性キャラが処刑されるおなじみの筋書きも、シリーズでは本作の脚色が最初。面白かったのは、産業スパイを装うボンドがヘルガを目の前にしながら「お国のため」とボヤく台詞。娯楽路線のスタンスを露にするそんな台詞も、初期の作品では本作だけ。演じるカリン・ドール「怪人フー・マンチュー」やヒッチコックの「トパーズ」でもおなじみの人。 |
ミスター大里 (島田 輝)
Mr. Osato (Teru Shimada)
ブロフェルドにアゴで使われる大里産業の総裁。プロレスのレフェリーのようなキャラ名も然る事ながら、英語ダイアローグに織り込まれる「あーそー。」という日本語での相槌がかなり印象的。原作には登場せず。演じる島田輝さんは、オリジナル版「宇宙戦争」やサミュエル・フラー作品「東京暗黒街・竹の家」にも出演。 |
スペクターNo.3 (バート・クウォーク)
SPECTRE #3 (Burt Kwouk)
ミサイル発射のブレインの1人。濃い顔の造作が印象的なヒールキャラ。原作には登場せず。演じるバート・クウォークは、本家シリーズ「ゴールドフィンガー」でもアピールしていた人。2ヶ月前に封切られた番外編「カジノ・ロワイヤル」と本作の両作品に出演するという荒行を敢行。と云うか、同時期公開の本作と番外編の両方に顔を出すのもバート・クウォークと下段のジャンヌ・ローランの2人だけ。 |
スペクターNo.4 (マイケル・チョウ)
SPECTRE #4 (Michael Chow)
ミサイル発射のブレインの1人。前段のバート・クウォークとペアで顔を出すキャラだが、何気にダイアローグの数も多い。原作には登場せず。演じるマイケル・チョウは、後年の「ラッシュアワー」3作品全てに出演する人物。 |
ハンス (ロナルド・リッチ)
Hans, Blofeld's Bodyguard (Ronald Rich)
ブロフェルドのボディガード 。マッチョ系のイケメンヒールキャラ。原作には登場せず。ボンドとの一騎打ちは見せ場の一つ。面白かったのは、ピラニアの池に落とされてジ・エンドになるその直後。ピラニアの餌食になるハンスを尻目に「召し上がれ」と云うボンドだが、あの人工池の中にピラニアがいる事もボンドは知らなかったはずなので。 |
寝室を襲撃する殺し屋 (デイヴィッド・トグリ)
Assassin in Bedroom (David Toguri)
日本通の情報提供者ヘンダーソンを殺害する大里の手先。ボンドとの一騎打ちでジ・エンド。原作には登場せず。 |
殺し屋の運転手 (ピーター・ファニーン・メイヴィア)
Car Driver (Peter Fanene Maivia)
殺し屋を送迎する運転手。と云うか、前段の殺し屋よりも数段強いボンドの強敵だが、悪党の大里がボンドに尻尾を捕まれるばかりか、そもそもブロフェルドの野望が打ち砕かれるのも、元はと云えば全部この人のせい。ボンドとの一騎打ちのシーンは序盤でも一番の見せ場。ちなみに後頭部をボンドに強打されるものの、恐らくは気絶していただけ。原作には登場せず。演じるピーター・ファニーン・メイヴィアは、WWWFでも活躍したハワイ出身の著名なプロレスラー。 |
大里の秘書 (フランチェスカ・チュー)
Osato's Secretary (Francesca Tu)
ボンドガール。悪事への加担も定かではない大里の秘書。原作には登場せず。演じるフランチェスカ・チューは、「0(ゼロ)の決死圏」「さらば荒野」にも出演する東洋系の美人女優。 |
| company ボンドの仲間: |
M (バーナード・リー)
M (Bernard Lee)
MI6長官。演じるバーナード・リーは、11作目「ムーンレイカー」まで本家シリーズ全作品に登場。海軍コスチュームで登場する今回は出番も少なめ。 |
ミス・マネーペニー (ロイス・マクスウェル)
Miss Moneypenny (Lois Maxwell)
Mの秘書。と云うより、ボンドガールのお局的な重要キャラ。演じるロイス・マクスウェルは、14作目「美しき獲物たち」まで本家シリーズ全作品に登場。海軍コスチュームも何気にフィット。互いに軍服に身を包む中、序盤でのボンドとのダイアローグもフツーに笑える。 |
Q (デスモンド・ルーウェリン)
Q (Desmond Llewelyn)
秘密兵器を製造調達するMI6「Q」課の責任者。演じるデスモンド・ルウェリンは、シリーズ処女作「ドクター・ノオ」と「死ぬのは奴らだ」を除く「ワールド・イズ・ノット・イナフ」までの映像全作品に登場。今回は「リトル・ネリー」の調達シーンで登場。シビアなダイアローグは相変わらずだが、今回は微妙にトゲトゲしい。「長旅で疲れている」と云う台詞もルーウェリン氏の本音だったのかも。 |
アキ (若林映子)
Aki (Akiko Wakabayashi)
ボンドガール。窮地のボンドを救う女性エージェント。ダブル・オーという殺しの番号を「ゼロゼロ」と云う辺りは、日本での認知性を踏まえた粋な脚色。当初は、ヒロインのキッシーを演じるはずだった若林さんだが、配役の変更に至るまでの経緯がやや複雑。その発端は、丹波さん、若林さん、浜さんの3名でロンドンに英語留学した際、英語力を問題視された浜さんの更迭が決められた事。やがて、浜さんを気の毒に思った丹波さんが「ホテルから投身自殺するかもしれない」と製作者に詰め寄る中、最終的な配役で落ち着いたと云うものらしいが、ついてはさまざまな憶測も。
当時の邦画社会の場合、銀幕スターもリーマンのような順列だった事を踏まえれば、撮影当時既に引退も視野に入れていた若林さんが、「花嫁三重奏 (1958)」「アッちゃんのベビーギャング (1961)」「キングコング対ゴジラ (1962)」「国際秘密警察 鍵の鍵 (1965)」などでも競演した後輩の浜さんに快く席を譲ったとも考えられなくはないが、たとえ偽装的なものとは言え「ボンドの花嫁」の座をスンナリと渡したと云うのもやや不自然。と云うか、そもそも若林さんが本作を最後に引退した辺りにも違和感が。クレジットの順列では、確かに若林さんが筆頭のボンドガールだが、ボンドと共に事件解決の最前線で奔走する中、クライマックスを飾るヒロインが実質的な1stレディだった事は明白。全ても丹波さんの立ち回りで動いたとの事だが、何れにせよ、その真実の裏舞台など部外者には推し量れるはずもない所。
ボンドを傍らに2000GTをかっ飛ばし(実際には運転せず)、ボンドと枕を並べる中で非業の死を遂げるキャラ像は、ある意味シリーズ屈指のインパクトだったアキという隠れヒロインだが、当初は端役だったキャラクターに肉付けされたのも、配役変更の影響によるもの。ちなみにこの「アキ」と云うキャラは、原作に登場する「スキ」と云う女性エージェントに基づいていたという話も耳にするが、個人的には「スキ」と云う女性エージェントの記憶は全くない。読み返せば何処かで発見出来るのかもしれないが、少なくとも、2箇所以上で名前が登場するようなキャラではなかったはず。ソープ嬢の「真理子」や黒人バーテンダーの「メロディ」など、他の端役キャラは全て覚えているので。と云うか、ドラフトと原作を誰かが勘違いする中、誤った情報が飛び交っているのではないだろうか。 |
キッシー鈴木 (浜 美枝)
Kissy Suzuki (Mie Hama)
ボンドガール。アキと同様、タイガー配下の女性エージェントだが、原作では、現地で協力する一般庶民。また、両親も他界する中、一人暮らしという設定の脚色だが、原作の方では両親は健在。タイガーの冗談でブタ呼ばわりされる中、実は美形でしたというくだりも笑える脚色だが、原作でのバックグラウンドは、ハリウッドに渡った元女優の帰国子女。その際に好印象を得たデイヴィッド・ニーヴンの名前を「鵜」に命名する辺りでは、フレミングの好みも如実に。そして何より、ボンドの子を身篭る(番外本によれば後に出産)という衝撃の展開が、脚色との大きな違い。演じる浜さんは、アキ役の若林さんとは「花嫁三重奏 (1958)」「アッちゃんのベビーギャング (1961)」「キングコング対ゴジラ (1962)」「国際秘密警察 鍵の鍵 (1965)」などでも競演。
前段の通り、すったもんだの経緯ばかりがクローズアップされる浜さんだが、海女というキャラだったが故にビキニ姿のカットが大挙登場する事を考慮すれば、当時の日本では珍しかったスレンダーなスタイルの浜さんがキッシーの役に辿り着いたのも、ある種の必然だったようにも思える所。憶測以外の何ものでもないが、相応の水泳のスキルなども影響していたのかも。映像でも確認出来る通り、最終的には難なく英語のダイアローグもクリアする浜さんだが、要は、オーディションではポテンシャルを発揮出来なかったものの、最終的には自力で勝ち取った配役だったと云えるのではないだろうか。 |
タイガー田中 (丹波哲郎)
Tiger Tanaka (Tetsuro Tamba)
秘密警察のトップ。さすがに「公安」とは明言しない脚色だが、原作では「公安調査局長」というキッパリとした肩書き。演じる丹波さんとはイニシャルが重なる辺りも面白いが、金歯を覗かせるずんぐり体型と云う原作での容姿は、丹波さんとは似ても似つかない。海外勤務のキャリアもかなぐり捨てて四十代にして自ら神風特攻隊に志願したと云う特異なキャラ像も、時代もややスライドする脚色の方では当然描かれず。また脚色では、地下に構える専用私鉄をオフィスにするタイガーだが、これは、10年後完成予定の地下鉄駅ホームに車輌オフィスを構える原作のアレンジ。
日本人の現地スタッフ/キャストと製作者の間を取り持ったという丹波さんは、全ての台詞も当初は自身でこなしていたが、全世界公開の映画に登場する公安トップには相応しくない発音だったと云う判断から、最終的には吹き替えされる事に。その声の吹き替えは、シリーズでもおなじみのロバート・リエッティだが、セスナの危機から生還したボンドがタイガー&アキと日本庭園で打ち合わせするシーン(開始から51分辺り)では、他ならぬ丹波さん自身によるダイアローグも登場する。"Yes, we have identified the coastline in the photograph."までは明らかに丹波さんの声。その直後の"It is an island called Matsu..."と云うラインからいきなり声色が変化するダイアローグだが、これはかなり笑える。と云うか、風雲急を告げる状況の説明ゆえに早口のダイアローグも必至だった中、ゆったりとした日本英語ではシャレにもならなかったと云う事だが、それにしてもそのあまりに違いには大爆笑。 |
ディッコ・ヘンダーソン (チャールズ・グレイ)
Dikko Henderson (Charles Gray)
ボンドに情報を提供する現地協力員。原作での肩書きは、日本在住の豪州の外交官。脚色では大里一味に殺害されるキャラだが、ボンドとの交流も長く描かれる原作では殺害されず。義足という特徴も原作では描かれない。演じるチャールズ・グレイは、コネリー最後の本家シリーズ出演となる「ダイヤモンドは永遠に」では、ブロフェルドを演じる人。 |
中国人女性リン (ツァイ・チン)
Ling, Chinese Girl in Hong Kong (Tsai Chin)
ボンドガール。ボンドの殉職をカモフラージュするMI6が香港に配した協力員。原作には登場せず。衝撃のイントロを飾るボンドガールゆえにインパクトもかなりデカイ。演じるツァイ・チンは、「北京のふたり」や「SAYURI」にも登場するハリウッド女優。何と2006年公開の「カジノ・ロワイヤル」でシリーズに復帰。 |
マッサージ嬢 (ジャンヌ・ローラン)
Bond's Masseuse (Jeanne Roland)
ボンドガール。横たわるボンドを前に、背後から忍び寄るアキと入れ替わるマッサージ嬢。演じるジャンヌ・ローランは、前段のバート・クウォークと同様、2ヶ月前封切られた番外編「カジノ・ロワイヤル」と本作の両作品に顔を出す稀少な一人。と云うより、相容れぬ関係の両作品に顔を出すのは、バート・クウォークと彼女だけ。 |
香港警察の面々 (パトリック・ジョーダン、アンソニー・エインリー)
Hong Kong Policemen (Patrick Jordan, Anthony Ainley)
香港でボンドの死亡を確認する面々。MI6の息が掛かっていたのもどの辺りまでだったのかを考慮すれば、見過ごす事にも抵抗が。少なくとも、ボンドの首筋で脈を見た人物はMI6の仲間。 |
忍者 (ヴィク・アームストロング)
Ninja #1 (Vic Armstrong)
スペクターの基地に出撃する忍者の一人。正直、誰が誰だったのかは不明。演じるヴィク・アームストロングは、スタントの世界ではハリウッドでも名の知れた人物。「女王陛下の007」「死ぬのは奴らだ」「トゥモロー・ネバー・ダイ」「ワールド・イズ・ノット・イナフ」「ダイ・アナザー・デイ」など本家シリーズや番外編の「ネバーセイ・ネバーアゲイン」などボンド映画にも縁が深い。 |
米合衆国大統領 (アレクサンダー・ノックス)
American President (Alexander Knox)
序盤での首脳会議や緊張高まるクライマックスに登場。ダイアローグも結構目立つ脚色だが、ちなみに、ボンドが日本に出向く原作での任務は、米国との不仲を理由にするもの。その内情とは、米国に見放された英国がCIAからの情報提供も当てに出来なくなる中、日本が所持する暗号解読器「マジック44」に望みを託すというお寒い事情。演じるアレクサンダー・ノックスは、「史上最大の作戦」「わらの女」「シャラコ」などでもコネリーと共演する人。 |
トルコ風呂の女性たち (マイ・リン、イー=ワー・ヤン、ヤスコ・ナガズミなど)
Bath Girl (Mai Ling, Yee-Wah Yang, Yasuko Nagazumi and the others)
ボンドガールズ。海外の宣材などでは富に著名なお色気キャラ。中華系のキャストで占められる中、ヤスコ・ナガズミさんという日本人キャストも。ボンドに向って右側の女性が「ゴールドフィンガー」で客室乗務員役だったマイ・リン。 |
海女 (松岡きっこ)
Diver Girl (Kikko Matsuoka)
ボンドガール。リトル・ネリーに乗る上空のボンドを見上げる3人の海女の1人。松岡さんは画面右端。ホラーファンには「吸血髑髏船」でもお馴染みの松岡さんだが、「私を愛したスパイ」の公開当時のテレビ特番などでは、歴代ボンドガールの1人としてゲスト出演していた記憶も。 |
ハワイ基地のレーダー技師 (シェーン・リマー)
Shane Rimmer (Hawaii Radar Operator)
冒頭、スペクターに捕獲される米ロケットとコンタクトを取るキャラ。演じるシェーン・リマーは、後年の本家シリーズ「ダイヤモンドは永遠に」をはじめ、70年代の「スコルピオ」「合衆国最後の日」「スター・ウォーズ」「ジュリア」や80年代の「レッズ」「ガンジー」「ホワイトナイツ/白夜」「愛と哀しみの果て」、90年以降は「死の接吻」「スパイ・ゲーム」「バットマン ビギンズ」などハリウッドでも著名な中堅俳優。 |
大相撲力士 (佐田の山晋松)
Japanese Sumo Wrestler (Shinmatsu Sadanoyama)
ボンドに観戦チケットを手渡す現地協力員。演じる力士は、第50代横綱・佐田の山関。東京に降り立ったボンドが現地情報部員(アキ)と落ち合う国技館に直行する中、わざわざ横綱からチケットを手渡されるというのもかなり奇異な光景だが、これも大相撲を国技とする日本での撮影だった事をアピールするかなり強引な脚色。と云うより、西欧人にとっての日本がどれだけの異国だったのかと云う事。ちなみに、米国を舞台にする「ゴールドフィンガー」の場合、NBAやMLBの選手は一切登場せず。と云うか、当たり前の話。 |
| Various Note メモ: |
| 原作によれば、「人生は二度しかない。生まれた時と、死に直面した時と」と云う芭蕉の詩にインスパイアされた"You Only Live
Twice"というタイトルだが、これも要は、大きな節目を迎えていた原作でのボンドの人生そのものを指していた引用。となれば、ボンドの存在を抹消するMI6の偽装工作に引っ掛ける脚色の印象もかなり微妙な事になってしまうが、シリアスな既存作品とは一味違う超娯楽路線の映像は、当時のオーディエンスには大歓迎されたはず。原作を知るファンにとっては、「女王陛下の007」を待たずしての映像化はショックだったようにも思えるが、時系列も端からバラバラで背景設定も基本から異なる映像シリーズは、逆に比較する術もなく素の状態で楽しめたのかも。「ダイヤモンドは永遠に」以来の劇場鑑賞だった自身の場合、やはり、TV放映される以前に原作から入っていたが、正直、原作シリーズとはかけ離れた番外編を目の当たりにしたような感覚だったので。 |
| あり得ないタイミングで飛び出すウィットや、ダイナミズムの傍らで置き去りにされるスクリプトなど娯楽路線に終始する作品のトーンは、後年、シビアなボンドファンの不評を買う「私を愛したスパイ」や「ムーンレイカー」(共にギルバートの演出)の先駆けのような存在だが、思えば、「ダイヤモンドは永遠に」以降、徐々にエンタメ度が加熱するというのも他ならぬ市場のニーズ。本作に続く「女王陛下の007」のシビアなトーンには、市場もむしろ面食らったのではないだろうか。何れにせよ、チグハグな筋立てでも夢中になれる事を証明したのがこの作品。数々のシュールな描写が荒唐無稽と言われる節もあるようだが、結果オーライで楽しめるパワフルさは荒唐無稽なんかじゃない。 |