| Introduction 序盤アウトライン: |
| 「ベッドラム」と名付けられたブロフェルド捕獲作戦から外されたボンドは、釈然と出来ぬ心境でポルトガルでの2週間の休暇を迎えていた。そんな中、仏最大の犯罪組織「ユニオン・コルス」の首領マルク・アンジュの一人娘トレーシーとの一夜の関係をキッカケにブロフェルドの情報を入手したボンドは、何と爵位の入手に躍起になるブロフェルドが、英国系譜紋章院にその証明を依頼していた事実を突き止める。やがて、系譜紋章院から派遣された准男爵としてブロフェルドのアジトに乗り込んだボンドだったが、そこで目の当たりにしたのは、世界各地から集められた謎の美女軍団だったーー |
| Various Note メモ: |
スペクターとボンドの死闘を描くシリーズ第6弾。イアン・フレミングの原作は、小説リリースの順番では10番目。脚色は、シリーズ前作「007は二度死ぬ」と「007/ムーンレイカー」を除く「007/消されたライセンス」までの本家シリーズ全作品を手掛けるリチャード・メイボーム。演出は、前作までのシリーズ5作品すべての編集を手掛けていたピーター・R.ハント。編集のスキルを活かすアクション映像の迫力はシリーズでも随一。序盤の格闘アクションや雪崩シーンなどでのスプリングリバーヴを多用する音響にも注目。
以下、完全ネタバレ。未鑑賞の方はご留意下さい。 |
| various novels and movies 原作と映像化作品のリスト: |
| 原作 novels |
映像化作品 movies |
| year |
邦題
別文節の「007号」は省略 |
original title |
year |
title
邦題
|
| 1953 |
カジノ・ロワイヤル |
Casino Royale |
1953 |
US/CBS TV
Climax Mystery Theater
Casino Royale
* Barry Nelson as 007 |
| 1967 |
same |
| 2006 |
same |
| 1954 |
死ぬのは奴らだ |
Live and Let Die |
1973 |
same |
| 1955 |
ムーンレイカー |
Moonraker |
1979 |
same |
| 1956 |
ダイヤモンドは永遠に |
Diamonds Are Forever |
1971 |
same |
| 1957 |
ロシアから愛をこめて |
From Russia with Love |
1963 |
same
007 危機一発
007 ロシアより愛をこめて
|
| 1958 |
ドクター・ノオ |
Dr. No |
1962 |
same
007は殺しの番号
007 ドクター・ノオ
|
| 1959 |
ゴールドフィンガー |
Goldfinger |
1964 |
same |
| 1960 |
007号の冒険
以下5編収録の短編集。
#1: バラと拳銃
#2: 読後焼却すべし
#3: 危険
#4: 珍魚ヒルデブランド
#5: ナッソーの夜 |
For Your Eyes Only
* omnibus as 5 episodes
#1: From a View to a Kill
#2: For Your Eyes Only
#3: Risico
#4: The Hildebrand Rarity
#5: Quantum of Solace |
1981 |
same
007 ユア・アイズ・オンリー |
| 1985 |
A View to a Kill
007 美しき獲物たち
|
| 1961 |
サンダーボール作戦 |
Thunderball |
1965 |
same |
| 1962 |
わたしを愛したスパイ |
The Spy Who Loved Me |
1977 |
same
007 私を愛したスパイ
|
| 1963 |
女王陛下の007号 |
On Her Majesty's Secret Service |
1969 |
same
女王陛下の007
|
| 1964 |
007号は二度死ぬ |
You Only Live Twice |
1967 |
same
007は二度死ぬ
|
| 1965 |
黄金の銃を持つ男 |
The Man with the Golden Gun |
1974 |
same
007 黄金銃を持つ男
|
| 1966 |
ベルリン脱出
以下3編収録の短編集。
#1: オクトパシー
#2: 所有者はある女性
#3: ベルリン脱出 |
Octopussy
* omnibus as 3 episodes
#1: Octopussy
#2: The Property of a Lady
#3: The Living Daylights |
1983 |
same
007 オクトパシー
|
| 1987 |
same
007 リビング・デイライツ
|
|
| release dates 英/米/日本での封切り状況: |
| ロンドン・プレミア:1969年12月18日/全英公開:1969年12月18日/全米公開:1969年12月18日/日本公開:1969年12月27日。(1969年12月12日のフランスでの公開が世界最速。ロンドンでのプレミアおよび全英、全米は、デンマーク、イタリア、オランダ、ノルウェー、スウェーデンなど欧州各国と同日の封切りだった。) |
| a novel and a movie 原作と脚色: |
| 運命の女性トレーシーとの出会い、スペクターのアジトへの潜入捜査とトレーシーも交えての決死の脱出劇、ブロフェルドの細菌戦争のシナリオ、ユニオン・コルスとの共同作戦で野望を阻止、ボンドとブロフェルドの一騎打ち、逃走したブロフェルドとブントにトレーシーが暗殺される悲劇のクライマックスなど、物語の骨子部分が共通する脚色は、原作にも最も近い作品として挙げられる事も少なくないが、実はポイント部分の脚色がかなり違う。と云うより、原作の肉付けという意味では、最もスリリングで釈然としていたのが本作の脚色。個人的な意見では。 |
| 細かい違いを挙げれば列挙にも暇がないが、まずは冒頭。トレーシーとの出会いも任務として描かれていた原作だが、脚色では偶然の出会い。また、トレーシーと出会った後にボンドが拉致されるまでに騒ぎも起こらない原作だが、一方の脚色では、エストリルの海岸とリスボンのホテルでダイナミックなアクションが挿入されている。さらには、ブロフェルドが爵位の取得に奔走する中、原作では、その事実を突き止めるボンドがまず向かう先は系譜紋章院だが、脚色の方ではベルンの弁護士事務所。ついては、弁護士の留守を計って問題のドキュメントを最新機器で複写するスリリングなシーンも登場する。 |
| そして何より大きく違っていたと云えば、シルトホルンでの潜入捜査からクライマックスに至るまでの一連の顛末。出だしと結末だけを挙げれば全く同じだが、その印象はかなり違う。まずは、仲間の諜報員が捕まる中、原作では正体もバレる寸前に逃走していた一方、脚色では一度は捕まった後に逃走する辺り。細菌兵器として各地に送り返される女性たちの名前と帰還先をきちんと書き取った後に逃走する原作では、細菌戦争という悪事の目的すら判らぬままでの逃走だった中、英国の専門家によってその目的が解明されるという筋書き。一方、捕まった際にブロフェルドの口から計画の全貌は語られるものの、肝心の女性らの名前と帰還先は判らぬままでの逃走劇だった脚色だが、ボンドが帰還した後に上司や専門家との会合のために時間を割くなどスクリプトではあり得なかった事を考慮すれば、一度は捕まったボンドとブロフェルドのダイアローグも、軽快なテンポを真骨頂とする脚色では極めて重要なファクター。一方、女性らの名前と帰還先を寸でのタイミングでカメラに収める脚色については、原作の描写の方がより確実に思える事も確かだが、やはり、重要な証拠を持ち帰ったとなれば、相応のシーンの挿入も必至。スクリプトのテンポを考慮すれば、あの最終局面の性急な描写も避けられなかったという事に。 |
| 次に、逃走体制から逃走に至るまでの一連の描写。スキーの格納部屋からいきなりの逃走劇に突入する中、ラウターブルンネンで再会したトレーシーの手助けを得てそのまま空港に向かう原作だが、一方、ケーブルロープでのスリリングな場面を経てようやくスキーでの逃走劇に入る脚色は、以降、筋立てはもとよりドラマティック度も全く違う。逃走劇に巻き込まれたトレーシーがブロフェルドに捕まるという筋立てそのものが違っていた脚色だが、ラウターブルンネンでのストックカーレースはもとより、一夜を明かした後にトレーシーも交えて再開する2度目のスキーチェイスなど、運命の2人が織り成す崖っぷちでの二人三脚の情景があのクライマックスの悲哀に拍車をかけていた事は明らか。また、フィアンセのトレーシーが囚われの身になる脚色は、終盤での盛り上がり方も格段に違う。逃走劇の開始点となるケーブルロープのシークエンスも脚色ならでは出色のアレンジだったが、ただ一点、サイズに無頓着でイイのかというスキーのシーンについては、ビンディングの調整にどれ程の時間を要するかをあらかじめ目測していた中、実際の局面での時間のロスに苛立ちを見せる原作でのボンドの描写は脚色でも踏襲して欲しかった所。 |
| 原作と映画が逆の順序でリリースされる中、映像シリーズの前作「007は二度死ぬ」では大幅な脚色も焦点にされた訳だが、ついては、原作では「007は二度死ぬ」のシリーズ前作だった本作が脚色される中、最も気になったのはボンドとブロフェルドが面談する場面。原作の場合、ボンドが一人称では描かれない「わたしを愛したスパイ」を除けば、「サンダーボール作戦」に続く作品だった訳だが、ラルゴとの死闘を描く前作ではブロフェルドとの面識はなかった事を考慮すれば、その流れもごく自然。一方、前作の「007は二度死ぬ」では、あの狭いミサイル制御室で会話まで交わしていながら、ボンドの正体にも気付かぬ本作のブロフェルドだが、この辺りはご愛嬌。と云うより、ボンド映画を愛するファンであれば、前作のブロフェルドは影武者だったと捉えるのが常識。また、世紀の大犯罪者ブロフェルドにとっては、一介の諜報員など取るにも足らぬ存在だったという見方や、実は類稀なき創造力を持つブロフェルドもバハマ(サンダーボール作戦)での失敗があまりにショックで記憶障害を起こしていたという見方などもアリなのかも。ちなみに「サンダーボール作戦」に続く原作の場合、全世界に包囲網を張り巡らすMI6の方ではブロフェルドの元の「顔」もお馴染みで、ピッツグロリアでボンドと面談するブロフェルドは、整形後の新たな造作という設定。 |
| そんなリリースの順番に起因するトピックなどはさて置き、唯一、筋立ての部分で腑に落ちなかった脚色は、ボンドが「ベッドラム作戦」から外される辺り。序盤、ボンドがなぜポルトガルで油を売っていたのかも定かにされない中、連絡不通になっていた事でアッサリと作戦から外されるボンドだが、冒頭のシークエンスがトレーシーとの出会いを描くために用意されていたのであれば、何も作戦から外されるようなオチは必要なかったはず。ポルトガルに再び出向くのも、あの海岸での襲撃にブロフェルドの匂いを感じたという説明で充分。何より、バハマ(サンダーボール作戦)での立役者でブロフェルドのやり口を誰より知るボンドが、少々羽を伸ばしていただけで解任されるというのもかなりヘン。ちなみに、原作で描かれる「辞表」のモチーフは、その理由からボンドの心境までのすべてが逆。その内容は、ブロフェルドの追跡命令が下される中、その行方も皆目見当もつかぬまま月日が過ぎる事に虚無感を余儀なくされていたボンドが、モチベーションもガタ落ちの中で辞表を提出するという筋書き。つまり、丸裸同然で生死も定かではないブロフェルドなどほっとけという原作のボンドと、執念を燃やす捕獲作戦から外されてヘソを曲げる脚色でのボンドのコントラストは全く逆。 |
| 細菌戦争の範囲については全世界をターゲットにするワールドワイドな脚色だが、原作では英国のみ。最終盤、ブロフェルドのパトロンとしてソ連の名前が飛び出す辺りもかなり違う。また、原作でのピッツグロリアの襲撃は夜明けではなく深夜で、ボンドのボブスレーに手榴弾を見舞ったブロフェルドもその足で逃走、宙吊りにはならず。また、ボンドとトレーシーが襲撃されるクライマックスも、原作では互いに走行中の出来事でボンドもしばらくは気を失ったまま。また、原作でのピッツグロリアの描写では、何と「ドクター・ノオ」のウルスラ・アンドレスの名も登場するが、この辺りは、映像シリーズ処女作の大ヒットにフレミングが気を良くしていたとも考えられる興味深い描写。ついては、映像版でのオープニングタイトルやボンドのオフィスの場面に登場する過去シリーズの映像も、原作への逆オマージュとでも云うべき類の計らいだったのかも。他の原作と脚色の違いについては、適宜以下の段落で。 |
| about James Bond ジェームズ・ボンド: |
| 後家&人妻キラーの異名をとるボンドが実は熱い男だったという事を描いていたのがこの作品。というより、原作の方では処女作の「カジノ・ロワイヤル」で既に描かれていた事だが、脚色版でボンドが「結婚」を口にするのも、06年の「カジノ・ロワイヤル」以前のシリーズではこの脚色が唯一。そんなシリアスなトーンの中でも面白かったのは、身を固めようとする一方で飄々としたプレイボーイぶりも遺憾なく発揮されていた辺り。ピッツグロリアのボンドガールズに対する殺し文句は、マジで笑える。ピッツグロリアに潜入する際、スコットランドの准男爵ヒラリー・ブレイ卿を名乗るボンドだが、ボンドガールに「ヒリー」と呼ばせるのも脚色版だけ。原作にも同様の濡れ場は登場するが、脚色での軽快なノリとは明らかに違う。 |
| ちなみに、ボンドが名乗るヒラリー・ブレイ卿は、実在の人物。脚色では、系譜紋章院の担当官としてボンドと面談するヒラリー・ブレイ卿なるキャラクターだが、原作では、セイブル・ベジリスクという担当官がボンドと面談する中、ボンドに容姿が似ているという世捨て人のヒラリー・ブレイ卿(姿は登場せず)なる人物の名前を借りるという設定。セイブル・ベジリスクという担当官も実在の人物らしいが、原作の冒頭では、先のヒラリー・ブレイ卿との連名で実名での登場に対する感謝の意が記されている。 |
| その系譜紋章院の段落で最も興味深かったのは、グリフォン・オアという話好きの担当官がボンドの家系について言及する辺り。後年、ボンドファンの間でもトピックになる"The World is not Enough"という家憲の文句は、原作(翻訳の文言は「この世も足らず」)と脚色の双方の紋章に描かれているが、その紋章のデザインや家系について言及する台詞はやや異なる。脚色では、「左向きの騎士の鎧」と「3個のベザントを配した盾」が中心デザインの紋章を「1734年に死亡したボンド准男爵の家紋です」と提示した上で、「あなたのルーツは、1387年に荘園を買収したル・ボン卿です」とグリフォン・オアが断言しているが、一方の原作で提示される紋章は、「銀地にサーベルの山形、その上に3個のベザント」というデザイン。ル・ボンという家系については、「1180年のノルマン人がルーツの農夫・小作人の立派な家」とした上で、飽くまで推論の域は出ていない。ちなみに、その仮説に至るまでの推論も結構長い。 |
| スキーチェイスがメインのスピード系アクションとして描かれる中、ボンドが運転するのも、ゴルゴ13ばりのアーマライトをダッシュボードに忍ばせた1969年型アストンマーティンDBSだけ。むしろ、従来のカーアクションとして登場するのは、ヒロインのトレーシーが運転する同年型フォード・マーキュリークーガ・コンバーチブルによる怒涛のカーチェイス。脚色では語られる事もないタイヤの仕様だが、原作ではスパイクを装着した「ダンロップ」と言及される。先の通り、ラウターブルンネンでのストックカーレースは原作では描かれないが、その前後のスキーチェイスの描写も原作と脚色はかなり違う。トレーシーが捕獲されない原作では、ラウターブルンネンに降下する前段でスキーチェイスも終了、ついては、あの雪崩のシーンもその前段で描かれるが、何よりの違いと言えば、スピード感あふれるスキーアクションを真骨頂とする脚色に対し、原作の方では、ヘリから投下される爆弾の脅威がメインで描かれていた辺り。 |
| 脚色の冒頭では、小型化に成功したという放射性の探知機が登場するが、これは、原作に登場する「シンクラフォン」というポケベルのようなアイテムへのオマージュ。また、「IMB機械」という言葉が何とも興味深い原作だが、寿退職したローリア・ポンソンビーに変わりメアリー・グッドナイトがボンドの新たな秘書になる辺りは、原作の方ではチョットした事件。 |
| ブロフェルドの顧問弁護士事務所に侵入するベルンのシークエンスでは、金庫のコンビネーション番号を探知するコピー付の新兵器が登場するが、その支給元については一切触れられず。ボンドも2週間の休暇中だった中、あの新兵器もドラコ建設の工事現場からクレーン輸送されていた事を考慮すれば、ユニオン・コルスから支給されたアイテムだったようにも思えるが、後のシルトホルンでのブロフェルドのダイアローグによれば、あの仲介役となる情報員は、フランス人ではなく英国人。氷点下の中で宙吊りにされた遺体を前にボンドも怒りを爆発させていた事を考慮すれば、恐らくはMI6の同僚。となれば、あの新兵器も国外から持ち込まれていた可能性もある。と云うか、あの情報員は、原作に登場するMI6の同僚ショーン・キャンベル(チューリッヒのZ支局の次長だった人物。原作でも拷問された後に殺害される)にインスパイアされたキャラだが、となれば、現地支局が調達した機器だったという説明がよりベター。 |
| Intro Sequence 冒頭シークエンス: |
| レーゼンビー唯一の主演シリーズという事で、冒頭のガンショットシーンもシリーズでは唯一の映像だった訳だが、良し悪しといった話ではなく、最もキマッていたのがこのレーゼンビー版のイントロ。シャープな動作には軸のブレもない。続くオープニングでまず目に付いたのは、垢抜けたアクション演出。奇しくも後の仲間同士によるこのバトル、スクリプトでもユニオン・コルスの2人には止めが刺されない慈悲が掛けられているが、そんなソフトなスタンスにしてあの迫力というのも、他ならぬ演出の手腕。ステゴロを描く場面など枚挙に暇がないボンド映画だが、とにかくジョン・グレンのアクション描写は超一級。またアクションを問わず、全てのシークエンスで編集スペシャリストとしてのスキルが如何なく発揮されている。 |
| 続くオープニングテーマは、JBのテーマ=テーマ曲だった「ドクター・ノオ」を除けば、シリーズでも唯一のインストナンバー。他作品では使用されないオリジナルのインストという話になれば、まさにシリーズでも唯一のインストテーマ。タイトルやスクリプトを考慮すれば、サッチモが歌うナンバーも「テーマ」以外の何ものでもないが、やはりここでの一番手はこのインスト。しかもその出来栄えは、もう一つのボンドのテーマと銘打っても良いほどのカッコ良さ。何より、ヘ短調の主調性から平行調の変イ長調に展開するチョットしたテーマの構成がアカデミックこの上がない。モノフォニックのムーグを管弦楽にスッポリ融合させたジョン・バリーのセンスも光る。オープニングではフルサイズのテーマが楽しめるが、シークエンスに合わせる形となったエンディングは、Bb/Ab/G/Gbと4/4で1拍ずつスロープするワンセットの小節が4小節追加されている。 |
| また、サッチモが歌う挿入テーマも、劇中のヴァージョンは貴重。既成ヴァージョンではトラックダウンされていなかったギターのオブリガードがふんだんに聞ける上に、サッチモのヴォーカルも恐らくは別トラック。ついては、後年のリマスター盤サントラにも未収録のこの別ヴァージョンの挿入テーマは、劇中でのみ楽しめる貴重な音源。 |
| おなじみモーリス・ビンダーによるタイトルデザインもチョットした衝撃。懐かしのシリーズ映像をフィーチャーする試みは、3作目「ゴールドフィンガー」のロバート・ブラウンジョンのデザインと何ら変わらないが、衝撃だったのはあの女性シルエット。例外はあるものの、乳首も基本ご法度のボンド映画では、あの横向き女性シルエットのセクシーなバストラインはかなり希少。 |
| location 舞台: |
エストリル → ロンドン → リスボン → パリ → ベルン → ロンドン → シルトホルン → ラウターブルンネン → シルトホルン → ロンドン → シルトホルン → アラビダ
エストリルの海岸ラインから近郊のホテルとポルトガルを舞台にする脚色のオープニングだが、一方の原作はあのロワイヤル・レゾーがその舞台で、トレーシーとの接触も任務の一環。ちなみに、脚色版の冒頭の舞台はエストリルのグインチョ海岸で、休暇中のボンドが訪れるリスボンのホテルは「パラシオ・エストリル」。クライマックスの一連のシークエンス全てもポルトガルでの撮影。リスボン最南端のセトゥーバルでの結婚式からアラビダ自然公園での惨劇という流れ。残る殆どのシークエンスは、屋内セットや一部のロンドンを除けば、スイスのシルトホルン~ラウターブルンネンという事になるが、唯一、ブロフェルドの顧問弁護士の事務所に侵入するシーンは、スイス・ベルンのシュバイツァーホフ・ホテルでのロケ。ちなみに、原作ではベルンのシーンは登場しない。 |
| ブロフェルドのアジトとして登場する「ピッツグロリア」は、シルトホルン山頂に実在するスポット。チューリッヒ支局の同僚キャンベルが一味に捕まる直前、ボンドガールズがカーリングに興じるシーンも登場するが、90年代の冬季五輪からにわかな脚光を浴びるようになる中、本作を思い出したボンドファンも少なくはなかったはず。撮影後、イオンプロから提供された資金で展望台レストランを構えたという「ピッツグロリア」だが、同施設には、007ランチやボンド・スパゲッティといったメニューもあるとの事。ちなみに「ルビー」と銘打たれたチキン料理でもメニューに追加すれば、ウケると思うのだが。 |
| シルトホルンからラウターブルンネンに至るスキーチェイスの撮影では、1960年の米スコーバレー冬季五輪に出場したウィリー・ボグナー・Jrがカメラのオペレーターを務めているが、後年の第10作目「私を愛したスパイ」のイントロや第12作目「ユア・アイズ・オンリー」、続く14作目「美しき獲物たち」のイントロなど、シリーズでも屈指のスキーアクションとして知られる一連の撮影は、全てボグナー・Jrが携わる映像。ちなみに「美しき獲物たち」が公開された当時、あのスケボーが昨今のような市民権を得るとは全く予想出来ず。 |
| MI6の隠れ蓑として原作ではおなじみの「ユニヴァーサル貿易」だが、そのロケーションはリージェント通り。その名前が登場していただけでも希少価値のある本作のスクリプトだが、何と、看板に鏡写しの「ビッグ・ベン」のカットから開始するシークエンスでは、建物内部のボンドのオフィスまでが映し出される。原作では、任務の合間でしばし登場するボンドのオフィスだが、デスクの引き出しからハニーライダーの皮ベルトや宿敵グラントの必殺兵器だったワイヤー仕込みの腕時計、サンダーボール作戦の携帯用小型ボンベなどを引っ張り出すシーンは結構笑える。と云うより、持ってきてたのねという感じ。そんなタイトルデザインでも顕著だった懐古趣味的なノリは、ボンドの「辞職」を描くネタの一環に他ならないが、先の段落でも述べた通り、ネタそのものに説得力がない中ではイマイチな印象。と云うか、娯楽路線でのサービス演出はこの上なく嬉しいのだが、本編のプロットが傑出していただけに蛇足な印象も否めなかったという話。06年の「カジノ・ロワイヤル」までお預けとなるMの自宅が登場する辺りも、意表を突かれる脚色の一つ。と云うか、06年の「カジノ・ロワイヤル」の場合、基本から違う訳だが。 |
| enemy ボンドの敵: |
エルンスト・スタブロ・ブロフェルド (テリー・サヴァラス)
Ernst Stavro Blofeld (Telly Savalas)
スペクターの首領。原作でのイントロ肩書きは「国際秘密組織の首領」だが、そもそも原作では、英語のスペルでは語尾のRとEが逆になる事から「スペクター」ではなく「スペクトル」と翻訳されている。映像シリーズで顔を出すのは、前作に続いて2度目。顔見知りのボンドに気付かなかった辺りについては先の段落の通り。細菌戦争を目論む傍ら、爵位(伯爵)のゲットに躍起になる俗物ぶりを発揮する辺りについては原作・脚色共に同じだが、実は大きな違いが4つある。まず、「ブロフェルド」というそのままの名前で伯爵名を名乗っていた原作に対し、脚色では「デ・ブルーシャン」という伯爵名で登場する事。次に、細菌戦争のエリアを英国に限定していた原作の一方、脚色では全世界がターゲットだった事。国際社会に対して「恩赦」を要求する辺りも脚色ならでは。また、ボンドのフィアンセ、トレーシーに横恋慕(という訳じゃないが)するようなメロウなトーンが脚色には加味されていた事。そして、クライマックスのボブスレー対決での末路の違い。
名前の違いについては、「ブロフェルド」と云う姓もドイツではポピュラーな事からそのまま飛び出す原作だが、既に欧米はもとよりアジアでも前代未聞の犯罪に手を染めていた脚色では、名前の変更もある必須だったと云う事。ついては、細菌戦争のエリアの違いも世界規模という事に。まぁ、英国に限定する原作の方がリアリズムには富んでいるのだが。トレーシーとの絡みについては、そもそもトレーシーが誘拐されない原作とは比較にもならないが、フレミングの描く偏執的なブロフェルドの性質を考慮すれば、ブロフェルドの下心というネタも原作ではあり得ない。爵位のゲットに奔走する辺りの俗物ぶりについては、これは人一倍の虚栄心やエゴがアレンジメントされた類のもの。ボブスレーチェイスでの違いについては、ページをめくり返す事が出来る原作では正にあり得ない脚色での末路だが、エンタメ作品として白黒ハッキリさせる必要性にも迫られる脚色版はあれでオッケー。どうやって逃げたのかと云う事については、天下のブロフェルドだったと言う事で。と云うより、逃げるというくだりについては、イルマ・ブントの方が謎だったはず。
あと、脚色の方で笑えたと言えば、急転直下の展開に狼狽するブロフェルドが、おなじみのペルシャ猫を乱暴に捨て去るカット。ナデナデするのキモい振る舞いも映像版ブロフェルドのお約束だった訳だが、テリー・サヴァラスにはナデナデが似合うはずがない事を端から理解していたジョン・グレンはある意味スゴイ。シリーズのヒールキャラでも屈指の印象を残したテリー・サヴァラスは、「マッケンナの黄金 (1969)」「戦略大作戦 (1970)」「狼の挽歌 (1970)」の前後での大忙しの中での出演。ちなみに、ハヤカワミステリのポケットサイズ版カヴァーのデザインは、ボンドではなく、メット姿のテリー・サヴァラスだった。 |
イルマ・ブント (イルゼ・シュテッパト)
Irma Bunt (Ilse Steppat)
ブロフェルドの腹心。女性キャラでもボンドガールにはあらず。屈強な男たちをアゴで使う中、スーパー意地悪な姑タイプのキャラ像はかなり鮮烈だが、シモーヌ・シニョレのファンであれば、頭ごなしには憎めなかったのかも。と云うか、演じるイルゼ・シュテッパトと云う女優さんにある種の気品があった事も確か。原作では続編の「007は二度死ぬ」では「豚のように醜い」と云った類の露骨な表現も登場するが、この辺りの脚色版でのキャスティングは実に難しい所。と云うより、ブント女史に対するボンドの感情も特別なものだった事を考慮すれば、露骨な表現にも頷けるのだが。ついては、クライマックスでトレーシーに凶弾を命中させるのは、他ならぬこのイルマ・ブントだが、そもそもの謎は、あの四面楚歌状態の要塞からどうやって脱出したのかという辺り。と云うか、端から不在だったのかも。それにしても、コルセットをはめたブロフェルドが運転手でブントがスナイパーってのもかなり笑える。ちなみに、ブロフェルドが宙吊りにはならない原作ではコルセットも登場せず。 |
グンボルト (ジェームズ・ブリー)
Gumbold (James Bree)
ブロフェルドの顧問弁護士。ブロフェルドの代理人として紋章院に爵位の認定依頼書を送付するキャラ。ベルンのオフィスが登場する脚色ではグンボルト本人も登場するが、手紙の紹介だけにとどまる原作では名前だけでの登場。 |
グルンター (ユーリ・ボリエンコ)
Grunther (Yuri Borienko)
ブロフェルドの身近に仕えるスペクターのメンバー。美女たちに催眠術を施す際、テープ捜査をするブロフェルドに仕えていた身近な家来。ついては、クライマックスでトレーシーと一騎打ちを演じるのもこのキャラ。また、チューリッヒ支局の同僚キャンベルをプライベートのケーブルカー乗車室から追い返していたのもこのユーリ・ボリエンコ演じるグルンター。 |
ピッツグロリアの戦闘員など (サム・アモン、デイヴィッド・ブランドン、ジョージ・リーチ、ウィリー・オアーリ、アンドレアス・シュルネッガー、ハンス・シュルネッガー、ジョセフ・ヴァーサ、ルディ・ヴェーレン、ブルーノ・ズリィド、ステファン・ツールハー)
Piz Gloria Guards, Skier, etc (Sam Ammon, David Brandon, George Leech, Willy Oehrli, Andreas Schlunegger, Hans Schlunegger, Joseph Vasa, Rudi Wehren, Bruno Zryd, Stefan Zürcher)
スペクターの戦闘員。警備員の一人を演じるデイヴィッド・ブランドンは、後年の「私を愛したスパイ」「オクトパシー」「美しき獲物たち」ではスタントで活躍。また、同じく警備員の一人を演じるステファン・ツールハーは、後年の「美しき獲物たち」「ゴールデンアイ」「リビング・デイライツ」ではロケーションマネージャーとして活躍、「ワールド・イズ・ノット・イナフ」では、スキー撮影のコンサルタントとしてプロダクションに参加する人物。
スキーチェイスの際、ボンドにストックで首筋を押え付けられる戦闘員を演じるジョージ・リーチは、「ゴールドフィンガー」ではスーパー防弾チョッキを着用するMI6のQ課スタッフを演じ、「サンダーボール作戦」では、ラルゴの移動アジト「ディスコ・ヴォランテ号」のクルーを演じていた人物。また、後年の「私を愛したスパイ」「ユア・アイズ・オンリー」にも登場する。 |
| company ボンドの仲間: |
M (バーナード・リー)
M (Bernard Lee)
MI6長官。演じるバーナード・リーは、11作目「ムーンレイカー」まで本家シリーズ全作品に登場。所在不明だったボンドをアッサリと「ベッドラム作戦」から解任した挙句、ピッツグロリア襲撃プランにも聞く耳を持たぬなど「石頭」が今回のキーワードだが、蝶の収集に没頭する自宅のシーンも登場するなど出番は多い。忘れられないのは、ボンドの花婿姿に涙を流すマネーペニーに対する「お前にはオレがいる」と云う台詞。やはり、英国海軍歴戦の勇士も俗物だったのかなと。ちなみに原作での結婚式に参加するのは介添え役となったMのみで、マネーペニーとQは参列しない。
休暇中だったボンドがMの自宅に押しかける中、執事に「提督」と呼ばれるMだが、これは、フレミングの原作「黄金の銃を持つ男」で明らかにされる海軍提督マイルズ・メッサヴィ卿と云う私生活での実名を示唆していたもので、後年の映像シリーズだけでは解決されない謎の一つ。ついては、このわずかなスクリプトも映像シリーズではかなりの希少価値。ちなみに、脚色版でのMの本名は機密中の機密。06年「カジノ・ロワイヤル」では、Mの本名を言いかけたボンドが、「その先を言ったら殺すわよ」と言い放たれるシーンも登場する。 |
ミス・マネーペニー (ロイス・マクスウェル)
Miss Moneypenny (Lois Maxwell)
Mの秘書。と云うより、ボンドガールのお局的な重要キャラ。演じるロイス・マクスウェルは、14作目「美しき獲物たち」まで本家シリーズ全作品に登場。ニューフェイスのレーゼンビーを相手にする序盤の台詞は、ガード一辺倒で味気なかったりもするが、ボンドとMの仲を取り持つ裏工作や結婚式での見せ場など好感度も尻上がりに上昇。 |
Q (デスモンド・ルーウェリン)
Q (Desmond Llewelyn)
秘密兵器を製造調達するMI6「Q」課の責任者。演じるデスモンド・ルウェリンは、シリーズ処女作「ドクター・ノオ」と「死ぬのは奴らだ」を除く「ワールド・イズ・ノット・イナフ」までの映像全作品に登場。通常はワンポイントでの出番だが、今回は序盤と終盤の2箇所に登場。序盤で紹介される小型放射性探知機は、「シンクラフォン」というポケベルのような装備が登場する原作へのオマージュだが、実際にボンドは使用せず。ボンドの結婚式に参列する終盤ではお約束のアイロニーも飛び出すが、さすがに花婿の前ではトゲトゲしさも鳴りを潜める。 |
トレーシー・ディ・ヴィチェンゾ (ダイアナ・リグ)
Tracy Di Vicenzo (Diana Rigg)
ボンドガール。シリーズでは只一人、ボンドの「妻」となるキャラクター。仏最大の犯罪組織「ユニオン・コルス」の首領マルク・アンジュの一人娘。英国人の母親を持つハーフ。本名は、テレーザ・ディ・ヴィチェンゾ。イタリアの伯爵と結婚する中、伯爵夫人として登場する辺りや、ボンドとの大恋愛を経て結婚、間もなくして暗殺される大方の顛末は、原作も脚色も一緒。ただ、伊伯爵との間に儲けた子供を脊髄膜炎で失った事で自暴自棄になっていたというへヴィーな段落は脚色ではノータッチ。
原作ではブロフェルドとは関わる事もないトレーシーだが、事件に関わるのもラウターブルンネンでのワンポイントに止まる原作と、事件の渦中に引きずり込まれる脚色でのヒロイン度にはかなりの差がある。と云うより、脚色で最も成功していたのも、このトレーシーを中心キャラにまで引き上げていた辺り。実際、紆余曲折を減る脚色版を鑑賞すれば、根無し草のボンドがじゃじゃ馬のトレーシーに熱を上げる事にも納得させられるが、そんな脚色と比較してしまえば、原作のトーンはかなり落ちる。
演じるダイアナ・リグは、69年の「世界殺人公社」と70年の「ジュリアス・シーザー」の間での出演。ちなみに、82年「地中海殺人事件」でのセレブな被害者役も印象的だが、同じクリスティの映像作品では、同年度のTVドラマ(演出はアラン・ギブソン)「検察側の証人 "Witness for the Prosecution"」でのパフォーマンスはかなりの切れ味。 |
マルク・アンジュ・ドラコ (ガブリエル・フェルゼッティ)
Marc Ange Draco (Gabriele Ferzetti)
仏最大の犯罪組織「ユニオン・コルス」の首領。トレーシーの父親。原作によれば、シシリーのマフィアよりも歴史の古い「コルシカ人組合(ユニオン・コルス)」は、仏全土およびその植民地での組織犯罪の大半を牛耳る冷酷で強大な組織で、その頭目たるドラコの通称は「カピュー」。終盤、原作の結婚式では、レジスタンス勲章を持つドラコの意外な過去も明かされるが、一方、英国情報部のトップ「M」とのダイアローグが飛び出す脚色では、ドラコの過去については一切言明されず。
コルシカの山賊に会うために渡仏したと云う無鉄砲な英国人家庭教師がトレーシーの母親だった事は脚色でも描かれるが、その女性を「強姦」した後、成り行きでの道中で恋愛感情が芽生えたという描写は、脚色ではかなりソフトな表現に。やがて、無軌道な一人娘に手を焼く中、苦肉の策としてボンドに白羽の矢を立てる辺りは原作にもほぼ同じだが、問題は最後のパート。ボンドのリクエストで特攻隊を組織する中、ブロフェルドのアジトを襲撃するクライマックスだが、ボンドを見殺しにするかのような脚色の描写は、原作には登場せず。と云うか、その脚色での意図については謎も多い。
スペクターに戦争を仕掛けた「大義名分」としてのボンドの存在を消し去ると云うのもあり得ないもので、ましてやボンドは、一人娘のトレーシーが溺愛するバリバリの花婿。ついては、見殺しにしたという解釈も誤りだったという事になるが、となれば、ボンドが置き去りにされた理由も謎のまま。ただ、ユニオンコルスとその周辺でボンドが邪魔な存在だった事も明らかで、組織の首領「カピュー」の娘と英国情報員の結婚に異議を唱える外部からの圧力が掛けられたという見方も出来なくはないが、何れにせよ、娯楽路線のこの作品、そんな複雑な背景では一気に興ざめさせられる。と云うより、伏線も皆無の脚色だけでは、そんな推察もナンセンス極まりない。まぁ、それ以外の線も考えられないのだが。
演じるガブリエル・フェルゼッティは、イタリアの名優。声の吹き替えは74年の「ドラゴンvs7人の吸血鬼」でドラキュラの吹き替えを担当するデイヴィッド・デ・キーサー。 |
オリンペ (ヴァージニア・ノース)
Olympe (Virginia North)
ボンドガール。ドラコとボンドの「商談」をトレーシーに打ち明ける女性。闘牛場のシークエンスで登場。原作には登場せず。ちなみに、序盤のアジトで登場するシェリーという女性とは別人。そのシェリーと云うキャラは、IMDbなどでも一切の記載がない。 |
キャンベル (バーナード・ホースフォール)
Campbell (Bernard Horsfall)
ピッツ・グロリアに潜入するボンドを陰で支える情報員。原作では「チューリッヒのZ支局の次長だった人物」という肩書きで登場。また、原作でのフルネームはショーン・キャンベル。脚色では、ピッツ・グロリア潜入の最中に捕らえられる中、拷問された後に氷山に吊り下げられているが、原作では、ボンドも関知しない別行動の最中に捕らえられる中、ボンドのファーストネームをブロフェルドの前でうっかり喋ってしまう失態を演じる。ちなみに原作では、その急転直下の展開によってボンドの逃走劇が加速するという流れ。 |
ヒラリー・ブレイ卿 (ジョージ・ベイカー)
Sir Hilary Bray (George Baker)
ボンドに名前を貸し出す紋章院の担当官。原作では、セイブル・ベジリスクと云う紋章院の担当官がヒラリー・ブレイ卿なる准男爵の名前をボンドに貸し出すという流れ。ついては、その2人の登場人物を1人にまとめたのが、脚色版でのこのキャラクター。ボンドの家系にも話が及ぶ原作は結構楽しめる。ちなみに、セイブル・ベジリスクと云う紋章院の担当官とヒラリー・ブレイ卿と云う准男爵は、共に実在する人物。演じるジョージ・ベイカーは、後年の「私を愛したスパイ」でも船長の役で登場。 |
ルビー・バートレット (アンジェラ・スコーラー)
Ruby Bartlett (Angela Scoular)
ボンドガール。鶏のアレルギー患者。ボンドとの濡れ場を迎える辺りは原作に同じだが、原作で濡れ場を迎えるのはこのルビー1人だけで、女性患者の名前と故郷も全てこのルビーから聞き出すという筋書き。あのショッカーのアジトのような催眠治療のシーンについても、帰還した後の具体的な指示も登場する脚色とモノホンの催眠治療のような情景に終始する原作は内容もかなり異なる。と云うより、原作の「コッコッコッというかわいいヒナ鶏の声~」といった台詞がそのままスクリプト化されていたらかなり笑えたはず。演じるアンジェラ・スコーラーは、番外編の「カジノ・ロワイヤル」ではデイヴィッド・ニーヴンと風呂を共にするおなじみの女性。 |
ナンシー (カトリーヌ・シェル)
Nancy (Catherine Schell)
ボンドガール。ジャガイモのアレルギー患者。ルビーとの情事を終えたボンドが部屋に帰り着く中、そのボンドの部屋で待ち構える積極派キャラだが、見た目は女性患者の中でも最も清楚。原作にも「ヴァイオレット」と云う名前のジャガ芋アレルギーの女性が登場するが、ボンドとの濡れ場も迎えていない事を考慮すれば、このナンシーは脚色ならではのアレンジキャラ。演じるカトリーヌ・シェルは、「アリーmyラブ」でもおなじみのキャリスタ・フロックハートのようなタイプの美女。 |
北欧の美女 (ジュリー・エーゲ)
The Scandinavian Girl (Julie Ege)
ボンドガール。牛肉のアレルギー患者。名前はクレジットされないが、ダイアローグによれば、ファーストネームは「ヘレン」。歓迎の食事会のシーンでは、ボンドとテーブルを共にする1人。その位置は、ボンドの右側。美女軍団の中では最高の美貌の一人なのかも。ちなみに、細菌戦争のエリアが英国に限定される原作では、以下、英国系以外のキャラクターは登場せず。演じるジュリー・エーゲは、74年の「ドラゴンvs7人の吸血鬼」では冒険好きな悲劇のヒロインを演じる。 |
中国の美女 (モナ・チョン)
The Chinese Girl (Mona Chong)
ボンドガール。黄色いドレスの東洋美女。パサパサしたもの(長細い豪州米のような米か?)を食べているが、アレルギーの種類は判らず。原作には登場せず。カーリングのシーンではボンドに色目を飛ばすなど中々のアピール度。ダイアローグも数箇所に登場。 |
ジャマイカの美女 (シルヴァーナ・ヘンリケス)
The Jamaican Girl (Sylvana Henriques)
ボンドガール。バナナのアレルギー患者。白のドレスに身を包む黒人美女。原作には登場せず。 |
米国の美女 (サリー・シェリダン)
The American Girl (Sally Sheridan)
ボンドガール。ボンドガール。ブロンドの髪を左右に丸めた赤いドレスの美女。原作には登場せず。 |
英国の美女 (ジョアンナ・ラムレイ)
The English Girl (Joanna Lumley)
ボンドガール。黒もしくは濃紺ワンピースの美女。アレルギーの種類は判らず。食事のシーンでは、ボンドとは別テーブルのトップに座る。ヒラリー・ブレイ卿を装うボンドの熱弁シーンでは、あくびをするカットも。演じるジョアンナ・ラムレイは、74年の「新ドラキュラ/悪魔の儀式」ではヘルシングの孫娘を演じる事でも有名。 |
インドの美女 (ザヒーラ)
The Indian Girl (Zaheera)
ボンドガール。ナンのアレルギー患者。青のドレスに身を包む美女。と云うか、日本で云えば米に相当するナンのアレルギーというのもかなり可哀相。原作には登場せず。 |
豪州の美女 (アヌースカ・ヘンペル)
The Australian Girl (Anouska Hempel)
ボンドガール。ブロンドのロン毛でベージュのワンピースの美女。アレルギーの種類は判らず。70年の「血のエクソシズム/ドラキュラの復活」では、本作でアイリッシュ美女を演じるジェニー・ハンレイと再び競演する。原作には登場せず。 |
ドイツの美女 (イングリッド・バック)
The German Girl (Ingrid Back)
ボンドガール。黒髪を後ろで結った白のブラウスと水色のスカートの美女。アレルギーの種類は判らず。ラウンジのシーンではボンドの右隣に陣取る緑色ドレスの美女。記憶によれば、さまざまな写真や宣材などでは目立っていた1人。原作には登場せず。 |
イスラエルの美女 (エレナ・ロニー)
The Israeli Girl (Helena Ronee)
ボンドガール。赤茶に模様入りで胸元の大きく開いたドレスのブルネット美女。アレルギーの種類は判らず。ブントの居ぬ間に皮肉を飛ばす場面も。アレルギーの種類は判らず。演じるエレナ・ロニーは、一同の中でもかなりの美女。 |
アイルランドの美女 (ジェニー・ハンレイ)
The Irish Girl (Jenny Hanley)
ボンドガール。トウモロコシのアレルギー患者。ラウンジのシーンではボンドの左隣に陣取る緑色ドレスの美女。歓迎の食事会のシーンでも、ボンドとテーブルを共にする1人。髪はブルネットのストレートだが、ヒロインのサラを演じる後年の「血のエクソシズム/ドラキュラの復活」ではブロンドの巻き毛で登場。と云うか、恐らくはブロンドの方が地毛。また、ここではかなりの長身に見えるジェニー・ハンレイだが、ついては、「血のエクソシズム/ドラキュラの復活」でクリストファー・リーと慎重が釣り合っていた事にも納得。 |
トウサン (ジェフリー・チェシャイア)
Toussaint (Geoffrey Cheshire)
ユニオン・コルスの殺し屋。リスボンのホテルからボンドが拉致される中、その車の後部座席ではボンドの左隣に陣取るキャラ。原作では爆弾の専門家として登場。以下、ユニオン・コルスの殺し屋が続くが、ボンドと一戦交えるキャラばかりながらも、最終的には味方に付く流れからこちらの「仲間」の段落にリストアップ。 |
シェ・シェ (アーヴィン・アレン)
Che Che (Irvin Allen)
ユニオン・コルスの殺し屋。リスボンのホテルからボンドが拉致される中、その車の後部座席ではボンドの右隣に陣取る黒人キャラ。リスボンのホテルでは、ボンドとの一騎打ちも演じるキャラだが、ちなみに原作では、一味とボンドが格闘するのもアジトに着いてからの事。ついては、海岸での格闘シーンやホテルでの格闘は脚色ならではのアレンジ。原作では、組織一の強面の肉弾派キャラとして登場。脚色では死なないが、原作ではピッツ・グロリアの戦いで犠牲になる。演じるアーヴィン・アレンは、後年の「私を愛したスパイ」にも出演。 |
ラファエル (テレンス・マウンテン)
Raphael (Terence Mountain)
ユニオン・コルスの殺し屋。冒頭の海岸シーンでボンドに銃口を向けるユニオン・コルスの殺し屋。原作には登場せず。 |
掃除人 (ノーマン・マッグレン)
Janitor (Norman McGlen)
ユニオン・コルスのアジトの掃除人。掃除人とは云っても、フィルム・ノワールに登場するような「掃除人」ではなく、ドラコの事務所をキレイにするモノホンの掃除人。ボンドがドラコ一味に拉致された際、一同が歩いて通過するその脇で「ゴールドフィンガー」のテーマメロを口笛で吹いていたキャラ。 |
ユニヴァーサル貿易の看板に映る男性 (ピーター・ハント)
Man Reflected in Universal Export Sign (Peter Hunt)
ボンドの味方でも何でもないが、監督ピーター・ハントのカメオと云う事で。先の通り、ビッグベンが鏡写しになる「ユニヴァーサル貿易(MI6の隠れ家)」の看板が冒頭に登場するが、手前の方に向かって歩くスーツ姿の男性が監督のハント。足音もバッチリフィーチャーされる。 |
| Various Note メモ: |
| スパイアクションを基調とする引き締まったトーンから大迫力の娯楽活劇調にシリーズも変化する中、原点回帰のようにも思える地味なトーンが時代に逆行していたという見方もあるようだが、ビッツグロリアでのボンドの濡れ場を飄々と描く辺りや、ボンドが辞表を握る段落ではサービス満点の懐古趣味をフィーチャー、結婚式でのウィットなど、実の内容は、娯楽性にも配慮された大胆な脚色。「ベッドラム作戦」前後の脚色にはやや難点もあるが、他の要所要所での脚色はことごとく成功、何より、トレーシーを事件の渦中に引きずり込む事で劇的な変化を遂げたクライマックスのペーソスは、原作を遥かに凌駕している。大衆娯楽としての脚色部分と原作の内容を踏まえた脚色がここまで見事に昇華する作品というのも、シリーズはもとよりスパイアクション全般でも極めて希少。とにかく面白い。 |
| コネリーに次ぐ2代目ボンドの名をシリーズ史に刻みながら、出演作は本作のみとなったジョージ・レーゼンビーだが、それもあまりに惜しい話。かなりフィットしていたので。高額ギャラの要求やプロダクションに対する迷惑三昧な行動などマスコミ主導のゴシップが真しやかに流された事で、縦割り社会のここ日本などではファンにも引かれてしまったレーゼンビーだが、その実、ギャラのベースアップを要求するのもプロスポーツ選手のように交渉テーブルに着いたに過ぎない事。しかも、プロダクションでの内輪の話など何処までが真実だったのかなど外野には判るはずもない所で、パフォーマンスの良し悪しにも全く関係のない話。 |
| 実際、シリーズの歴代監督の中でも卓越したスキルを発揮した本作のピーター・ハントや後年の名作を手掛けるジョン・グレン(本作では編集と第二班監督)はレーゼンビーを高く評価していたが、ついては、本作終了後の降板劇もレーゼンビー側から出されたものだったと云う真実は広く知らしめられるべき所。レーゼンビーのブリティッシュアクセントが不自然だったという辺りも全く問題なし。全世界を股に掛けるエージェントが生粋の英国英語しか喋れないような芸無しでは困るので。と云うか、今更どうこう言っても仕方のない事だが、何れにせよ、レーゼンビーの降板劇は勿体なかったという話。今となっては後悔していると語るレーゼンビーだが、ついては、ダニエル・クレイグという強力なメインロールを得たリニューアルシリーズで悪役としてシリーズ復帰するというのは如何なものか。一時期、コネリーとムーアのコラボレーションで新作を撮るという突拍子もない話も出ていたが、そんな話を引き合いに出せば、レーゼンビーの悪役での復帰プランも極めてマシなノリ。その後のキャリアでもヒールは板に付いている訳なので。 |