| Introduction 序盤アウトライン: |
| 英国情報部のジェームズ・ボンドがイスタンブールに派遣される。当地の総領事館に勤務するソ連公安部のタチアナという女性が英国への亡命を希望する中、彼女の護送とその手土産の暗号解読器をロンドンに持ち帰る事がボンドの任務だったが、極秘ファイルを見てボンドに一目惚れしたと語るタチアナからその護衛役に指名されると云うそもそもの段階での不条理な経緯は、実は罠である事も明白なものなのだった。やがて、暗号解読器の奪取にも成功する中、タチアナが単なる操り人形に過ぎない事に気付いたボンドは、オリエント急行での国外脱出を図るのだがーー |
| Various Note メモ: |
ボンドへの復讐を目論むスペクターとの闘いを描くシリーズ第2弾。イアン・フレミングの原作は、小説リリースの順番では5番目。脚色は「007は二度死ぬ」と「007/ムーンレイカー」を除く「007/消されたライセンス」までの本家シリーズ全作品を手掛けるリチャード・メイボーム。アダプテーションは、前作「007/ドクター・ノオ」のジョアンナ・ハーウッド。演出のテレンス・ヤングも前作に続いての登板。
以下、完全ネタバレ。未鑑賞の方はご留意下さい。 |
| various novels and movies 原作と映像化作品のリスト: |
| 原作 novels |
映像化作品 movies |
| year |
邦題
別文節の「007号」は省略 |
original title |
year |
title
邦題
|
| 1953 |
カジノ・ロワイヤル |
Casino Royale |
1953 |
US/CBS TV
Climax Mystery Theater
Casino Royale
* Barry Nelson as 007 |
| 1967 |
same |
| 2006 |
same |
| 1954 |
死ぬのは奴らだ |
Live and Let Die |
1973 |
same |
| 1955 |
ムーンレイカー |
Moonraker |
1979 |
same |
| 1956 |
ダイヤモンドは永遠に |
Diamonds Are Forever |
1971 |
same |
| 1957 |
ロシアから愛をこめて |
From Russia with Love |
1963 |
same
007 危機一発
007 ロシアより愛をこめて
|
| 1958 |
ドクター・ノオ |
Dr. No |
1962 |
same
007は殺しの番号
007 ドクター・ノオ
|
| 1959 |
ゴールドフィンガー |
Goldfinger |
1964 |
same |
| 1960 |
007号の冒険
以下5編収録の短編集。
#1: バラと拳銃
#2: 読後焼却すべし
#3: 危険
#4: 珍魚ヒルデブランド
#5: ナッソーの夜 |
For Your Eyes Only
* omnibus as 5 episodes
#1: From a View to a Kill
#2: For Your Eyes Only
#3: Risico
#4: The Hildebrand Rarity
#5: Quantum of Solace |
1981 |
same
007 ユア・アイズ・オンリー |
| 1985 |
A View to a Kill
007 美しき獲物たち
|
| 1961 |
サンダーボール作戦 |
Thunderball |
1965 |
same |
| 1962 |
わたしを愛したスパイ |
The Spy Who Loved Me |
1977 |
same
007 私を愛したスパイ
|
| 1963 |
女王陛下の007号 |
On Her Majesty's Secret Service |
1969 |
same
女王陛下の007
|
| 1964 |
007号は二度死ぬ |
You Only Live Twice |
1967 |
same
007は二度死ぬ
|
| 1965 |
黄金の銃を持つ男 |
The Man with the Golden Gun |
1974 |
same
007 黄金銃を持つ男
|
| 1966 |
ベルリン脱出
以下3編収録の短編集。
#1: オクトパシー
#2: 所有者はある女性
#3: ベルリン脱出 |
Octopussy
* omnibus as 3 episodes
#1: Octopussy
#2: The Property of a Lady
#3: The Living Daylights |
1983 |
same
007 オクトパシー
|
| 1987 |
same
007 リビング・デイライツ
|
|
| release dates 英/米/日本での封切り状況: |
| ロンドン・プレミア:1963年10月10日/NYC:1964年4月8日/日本公開:1964年4月18日/全米公開:1964年5月27日。 |
| a novel and a movie 原作と脚色: |
| 冷戦下での英ソの闘いを描く原作に対して、その英ソの確執にスペクターを便乗させる辺りが脚色の大きな違い。双方のメインキャラもほぼ同じで、共通点は、献身的な女性保安局員をボンドに接近させる中、スキャンダルの捏造を図る辺りまで。イスタンブールでの東西両陣営の小競り合いを激化させる辺りも、そのヒール側の意図は同じ。全く違うのはその魂胆。原作に登場するソ連(実行グループは「スメルシュ」)の魂胆は、捏造したスキャンダルでMI6を国際世論の槍玉に挙げた挙句、起爆装置を仕込んだニセ暗号解読器でMI6に物理的なダメージも負わせようとするもの。 |
| 一方、脚色に登場するスペクターの魂胆は、クレッブのスペクターへの寝返りなどなど露知らぬタニヤにモノホンの暗号解読器を持ち出させた上、ボンドとの痴話話のもつれに見せ掛けて双方を殺害、奪取した暗号解読器は高値でソ連に売り付けると云う筋書き。要は、政治色を回避する中、極上の娯楽路線として甦った脚色だが、そんな中での「スペクターは約束を守る」と云うブロフェルドのセリフにはフツーに爆笑させられる。 |
| オリエント急行でのグラントとの対決、ヘリvsライフル、ボートチェイスなど怒涛のアクションをフィーチャーする脚色のクライマックスだが、一方の原作は、オリエント急行を経て即座にクライマックスと云う流れ。となれば、やや淡白なようにも思える原作だが、実は原作のクライマックスではとんでもない事に。と云うのも、ボンドの安否も不明のまま幕を下ろすため。詳しくは、以下、ボンドの敵「ローザ・クレッブ」の段落で。 |
| about James Bond ジェームズ・ボンド: |
| さまざまな特殊装備もお約束となる後年の映像シリーズだが、その片鱗を見せ始めたのがこの作品。催涙ガスやナイフ、金貨などを忍ばせたアタッシュケースがそれ。その全てのアイテムを駆使してグラントを撃退する映像版のボンドだが、原作のボンドが使用するのはナイフだけ。と云うより、原作のアタッシュケースには催涙ガスは装備されていない。危機に瀕したボンドが「ガスが噴出すような装備であれば…」と泣き言を思い巡らせる原作だが、その辺りをサクッと実現させていたのが脚色だったと云うわけ。また、一服を拒絶される映像版のボンドに対して、そのシガーケースで命拾いをする原作のくだりも、ある意味では対照的な描写。アクション描写についてもその殆どが異なるグラントとの対決だが、この辺りの一連の脚色については、大方の観客が原作を熟知する中、その最大の見せ場の第2ラウンドを描くような粋な計らいだったようにも思える所。 |
| ユーニス・ゲイソンを皮切りに、アリザ・ガー、マルティーヌ・ベズウィック、そしてダニエラ・ビアンキとさまざまなタイプの美女を相手にする映像版のボンドだが、ストイックな原作の方でボンドが相手にするのは、御多分に洩れずメインの美女たるダニエラ・ビアンキだけ。ボンドの生みの親フレミングがコネリーのキャスティングに不満を抱いていたと云うのも、この辺りのギャップが原因だった訳だが、ただ如何せん、セックスアピールなくしてシリーズの大ヒットがあり得なかったのも確かな所。シリーズと云えば、ボンドが唯一握る車のハンドルもトラックだったと云う辺りは、本作の大きな特徴。ちなみに、ユーニス・ゲイソンとの絡みのシーンでは「ベントレーMK4」も登場するがハンドルは握らず。覚えている限りでは、あの著名な自己紹介ダイアローグもなかったはず。 |
| Intro Sequence 冒頭シークエンス: |
| 殺し屋の毒牙に掛かったボンドが実は偽者だったと云うオチも強烈なインパクトの冒頭だが、そもそも、最初の見せ場をタイトルの前に持ってくるアイディア自体、公開当時は斬新だったはず。何れにせよ、この流れは以降全てのシリーズでもお馴染みに。ちなみにこの描写は、原作には登場せず。 |
| シリーズのタイトルデザインと云えば、前作「ドクター・ノオ」や「サンダーボール作戦」以降の「007/消されたライセンス」までの本家シリーズ全作品を担当するモーリス・ビンダーだが、ここでは、次回作「ゴールドフィンガー」も手掛けるロバート・ブラウンジョンが担当。気にしなければモーリス・ビンダーのようにも思えるエキゾチックなタイトル映像だが、スクリーン映像の波状効果のようなエフェクトは、モーリス・ビンダーのそれとはやはり違う。ちなみに、あのシルエットの女性は、後年の「炎の女」や「太陽を盗め」にも出演するジュリー・メンデス。 |
| マット・モンローが歌うテーマ曲はシリーズ屈指の名曲としても知られているが、その冒頭タイトルでインスト版がフィーチャーされるというのも、実はこの作品だけ(テーマ曲が歌モノではなかった前作は除外)。ついては、ユーニス・ゲイソンとコネリーが絡むシーンやエンディングでフィーチャーされるマット・モンロー版のテーマ曲だが、何より特筆すべき点は、テーマ曲の作曲(ライオネル・バート)に音楽監督(本作はジョン・バリー)が一切関与していなかったと云う辺り。これは、後年全てのシリーズ作でも例外は見当たらない特例中の特例。 |
| location 舞台: |
ヴェニス → イスタンブール → オリエント急行(ベオグラード、ザグレブなどで停車) → ヴェニス
冒頭と最後のヴェニス、所在地不明のスペクター島、ロンドンのMI6本部などを除けば、その殆どがイスタンブール市街地とオリエント急行で占められる。ちなみに、小説のほぼ1/3をグラントのバックグラウンドなどソ連側の描写で占める原作の印象はかなり違う。また、原作のクライマックスの舞台となるのは、イタリアではなくフランス。脚色の方でもホームに下車する描写は登場するが、原作の方では、ベオグラードで下車した後、連絡員と共に市街地のアパートに向うシーンも描かれる。 |
| enemy ボンドの敵: |
ローザ・クレッブ (ロッテ・レーニャ)
Rosa Klebb (Lotte Lenya)
スペクターの「No.3」。女性には違いないが、さすがにボンドガールとは呼べないキャラ。スペクターの登場しない原作では、ソ連国家保安省スメルシュ(公式殺人機関)の第二課長で大佐と云う肩書きだが、ちなみにここでもその威光は発揮される。それは、クレッブがスペクターに寝返った事をタニアが知らなかったため。映像版では、クライマックスを飾るボンドの宿敵としても著名な悪役キャラだが、原作でのインパクトはあらゆる意味で映像版を凌駕。靴先にしのばせた毒刃でボンドに襲い掛かる描写は双方一緒ながらも、その触りからオチまでの全てが違う。映像版では格闘の果てにその場で息絶えるクレッブだが、原作では死なず。原作の方で真っ先に手にする武器も毒の塗りこんだ編み針で、靴先にしのばせた毒刃が登場するのは、ボンドに手玉に取られた挙句、やがて駆け付けたフランス当局(舞台も違う)にお縄になる瞬間。
ついては、ボンドが毒刃の餌食になる結末は映像版とは全く違う。そんなボンドの殉職も匂わせるシビアなエンディングは、原作と脚色の大きな違いの一つだが、瀕死の状態だったボンドとフランス当局に逮捕された両者のその後については、原作シリーズ次作の「ドクター・ノオ」の方で明らかにされている。ちなみにその内容は、Mの台詞によって「死んだ」と吐き捨てられるクレッブと、フランスの協力者マチスによる応急処置で実は一命を取り留めていたボンドが、強靭な精神力で苦境を乗り越えたというもの。あと一点、原作でのクレッブについては、彼女が両刀使いである事を示唆する忘れ難い描写も。「ヒキガエルのような醜さ」と形容される中、突如着飾ったクレッブがタチアナに迫る原作のひとコマはかなり笑える。 |
ドノヴァン・“レッド”・グラント (ロバート・ショウ)
Donovan 'Red' Grant (Robert Shaw)
端からスペクターの一味として登場する中、英語に堪能な事や殺人者になった経緯など全てのバックグラウンドが割愛される映像版のグラントだが、ソ連の殺人機関スメルシュの一員として登場する原作では、一連のバックグラウンドも事細かに描かれる。重量挙げ選手だったドイツ人の父親と南アイルランド人の母親の間に生まれる中、十代の頃から殺人に快楽を覚えていたナチュラルボーンな殺人者だった事、ボクシングのタイトルを獲得した事から兵役中にも一目置かれる存在だったものの、あるタイトル戦で反則負けを喫した事から左遷される中、そのままソ連に亡命した事などが描かれているが、面白かったのは、オリエント急行での死闘の際、グラントの体格と殺気に怯えたボンドが取っ組み合いを端から避けようとする心理描写。ついては、胸元にしまったシガーケースで九死に一生を得る中、一撃のナイフ攻撃と駄目押しの攻撃でグラントを仕留めるボンドだが、この辺りの描写も映像版とはかなり違う。 |
モルツェニー (ウォルター・ゴテル)
Morzeny (Walter Gotell)
スペクターの幹部。原作には登場せず。演じるウォルター・ゴテルは、後年の「私を愛したスパイ」から「リビング・デイライツ」までシリーズ全作品に出演するお馴染みの人物。と云うか、後年の作品でもそのままの印象という辺りは何気に凄い。 |
クロスティーン (ヴラデク・シェイバル)
Kronsteen (Vladek Sheybal)
スペクターの「No.5」。スペクターの計画を考案する組織のブレイン的なキャラ。チェスの選手権に臨む中、召集をかけられる描写など原作を踏襲する脚色だが、映像ではブロフェルドに処刑されていた一方、原作の方ではその末路は明かされず。演じるヴラデク・シェイバルは、67年のシリーズ番外編「カジノ・ロワイヤル」や「スコルピオ」「風とライオン」、人気TVドラマ「謎の円盤UFO」などでもお馴染み。 |
クリレンク (フレッド・ハガーティ)
Krilencu (Fred Haggerty)
ソ連お抱えのブルガリア人の殺し屋。原作ではソ連、脚色ではスペクターに躍らされるそのキャラ色は双方同じだが、映画看板の女優イラストの口元に設置された窓から逃げる中、その直後に仕留められる描写は若干違う。原作では着地した後に仕留められるが、脚色では壁面にぶら下がっている状態でジ・エンド。また、映画看板の女優がモンローだった原作に対して、脚色の看板女優はアニタ・エクバーグ。ちなみにその看板の映画は、本作と前作の脚色に携わったジョアンナ・ハーウッドの脚本作品「腰抜けアフリカ博士」。 |
ベンツ (ピーター・ベイリス)
Benz (Peter Bayliss)
ソ連の保安局の役人。クリレンクと同様、スメルシュの計画など露知らずに躍らされる人物。オリエント急行に乗り込んだボンドとタニアを追跡するキャラだが、原作に登場する同様のキャラは総勢3名。グラントによってケリムとの相打ちに見せかけられる辺りは原作も脚色も一緒。 |
マッサージ嬢 (ジャン・ウィリアムズ)
Masseuse (Jan Williams)
ボンドガール。グラントにマッサージを施す女性。原作にも同様の描写が登場するが、原作のマッサージ嬢は上半身には何も纏わず。 |
エルンスト・スタブロ・ブロフェルド (アンソニー・ドーソン)
Ernst Stavro Blofeld (Anthony Dawson)
云わずと知れたスペクターの首領。その登場は、序盤と終盤の2箇所のみで顔は見せず。ついては、「?」と云うエンドクレジットだったが、演じていたのは前作で悪役デント教授を演じていたアンソニー・ドーソン。シリーズ4作目の「サンダーボール作戦」でも同様の配役となるアンソニー・ドーソンだが、ちなみに声の方は、両作品共にエリック・ポールマンによる吹き替え。「レッド・サン」や「バラキ」など後年もメジャー作品に名を連ねるアンソニー・ドーソンだが、他の面白い所では、シリーズきっての超絶パロディとも云える67年の「ドクター・コネリー/キッドブラザー作戦」(コネリーの実弟が主演。バーナード・リーやロイス・マクスウェルのシリーズ御馴染みの面々やダニエラ・ビアンキも出演)にも登場。 |
| company ボンドの仲間: |
M (バーナード・リー)
M (Bernard Lee)
後のシリーズでもお馴染みのMI6長官。演じるバーナード・リーは、11作目「ムーンレイカー」まで本家シリーズ全作品に登場。執務室の直ぐ手前に位置するミス・マネーペニーのオフィスに立ちすくむ姿は、シリーズ中でもかなり珍しいはず。 |
ミス・マネーペニー (ロイス・マクスウェル)
Miss Moneypenny (Lois Maxwell)
お馴染みのMの秘書。と云うより、ボンドガールのお局的な重要キャラ。演じるロイス・マクスウェルは、14作目「美しき獲物たち」まで本家シリーズ全作品に登場。ボンドとの電話連絡の際、シルヴィア・トレンチが割って入る中での皮肉たっぷりの台詞や、ボンドとタニアの会話テープを盗み聞きしている事をMに見透かされている辺りの描写など、そのアピール度は前作を上回る。 |
ブースロイド少佐 (デスモンド・ルーウェリン)
Major Boothroyd (Desmond Llewelyn)
前作「ドクター・ノオ」と「死ぬのは奴らだ」を除く「ワールド・イズ・ノット・イナフ」までの映像全作品に登場するデスモンド・ルウェリンのシリーズデビュー。後年は「Q」と云うコードネームがおなじみとなるブースロイド少佐だが、ここでは「Q局」と云うセクション名が登場。ちなみに、ブースロイドと云うラストネームと「Q」が同一とみなされるのも、本作で「ブースロイド少佐」を演じるデズモンド・ルーウェリンが、次回作以降は「Q」名義で登場するため。 |
アリ・ケリム・ベイ (ペドロ・アルメンダリス)
Ali Kerim Bey (Pedro Armendáriz)
英国情報部イスタンブール支局の主任。原作では「ダーコ・ケリム」と云う名前で登場するキャラだが、ここでは別名。と云うのも、子沢山だったと云う両親の元に生まれた際、色黒だった事からダーコと名付けられた過去などが語られる原作とは違うスレンダーな脚色だった訳だが、一方、お仲間は作らない主義のボンドに友情を芽生えさせる中、終盤での死別のシーンを盛り上げる辺りは脚色でも再現されている。
メキシコの人気俳優ペドロ・アルメンダリス・Jrの父親としても知られるアルメンダリスだが、ここでの最も著名なエピソードは、クランクインの最中、末期ガンに侵されていた事が判明した事で撮影の日程が大幅に調整されたと云う話。ついては、滞りなく撮影をやり遂げたアルメンダリスだが、映像での表情を見る限りでは健康そのもの。歩行する際にやや不自由があったのかとも思わせるカットも幾つか登場するが、何れにせよ、末期ガンだったと云う話には只々絶句させられる。 |
タチアナ・ロマーノヴァ (ダニエラ・ビアンキ)
Tatiana Romanova (Daniela Bianchi)
ボンドガール。ソ連の保安局員。シリーズでも上位人気の本作のヒロインだが、本作と似たようなトーンの活劇ヒロインを演じる「077/地獄の挑戦状」や先述の「ドクター・コネリー/キッドブラザー作戦」など後年の作品には恵まれず。言葉の壁がその大きな要因だったと思うが、ちなみに中年マダムのような本作の吹き替えもフツーに微妙。乙女のような声の方が絶対に良かったのだが。ちなみに、その吹き替えに当っていたのは、「恐怖の吸血美女」「ナインスゲート」など足掛け数十年の女優キャリア(と云うか、劇場長編の出演は十数本だけ)のバーバラ・ジェフォード。 |
シルヴィア・トレンチ (ユーニス・ゲイソン)
Sylvia Trench (Eunice Gayson)
ボンドガール。前作同様、原作には登場せず。コネリー版ボンドの登場シーン(ロンドンのアンバサダークラブ)に立ち会う歴史的な登場人物。また、いわゆる「ボンドガール」で2作品「連続」で出演するのはシリーズでも彼女だけ。別名キャラでの飛び石出演と云う事では「黄金銃を持つ男」「オクトパシー」のモード・アダムスの例もある。また、ボンドには絡まない端役のボンドガールでは、「ロシアより愛をこめて」「ゴールドフィンガー」に連続で出演するナージャ・レジンのような例もあり。 |
ヴァヴラ (フランシス・デ・ウォルフ)
Vavra, the Gypsy Leader (Francis De Wolff)
ジプシー村のリーダー。ケリムの協力者。原作では、ソ連お抱えのブルガリア人の殺し屋クリレンクの筆頭ターゲットになる人物だが、ちなみにこちらの脚色ではケリムが筆頭ターゲットだったと描かれる。格闘する2人の女性の運命をボンドに委ねる辺りは台詞などもほぼ一緒だが、村を去るボンドに手を振る描写は原作には登場せず。 |
ケリムの女 (ナージャ・レジン)
Kerim's Girl (Nadja Regin)
ボンドガール。ボンドとはダイアローグを交わす事もない端役のボンドガールだが、ケリムとのシーンでは妖艶なパフォーマンスを披露。映像シリーズ次回作の「ゴールドフィンガー」にも出演。2作品連続で顔を出すシリーズでも珍しいボンドガール。 |
ヴィダ (アリザ・ガー)
Vida (Aliza Gur)
ボンドガール。ジプシー村で一人の男性を巡って決闘する2人の女性のうちの1人。どちらの女性がヴィダだったのかもスクリプトや映像では判らないが、相手のゾラが大柄だと云う事を明らかにする原作を参照すれば、映像では、やや小柄だった赤い衣装の女性がこちらのヴィダ。 |
ゾラ (マルティーヌ・ベズウィック)
Zora (Martine Beswick)
ボンドガール。ジプシー村で一人の男性を巡って決闘する2人の女性のうちの1人。先の理由から、やや大柄な緑色の衣装の女性がこちらのゾラ。演じるマルティーヌ・ベズウィックは、後年の「サンダーボール作戦」ではボンドと任務を共にする重要な役柄で登場するお馴染みの女性。ブルガリア人の殺し屋クリレンクに決闘を邪魔される中、その勝敗をボンドに委ねる2人だが、ボンドへの夜の接待を匂わせる脚色部分は、云うまでもなくストイックな原作には登場せず。 |
ジプシーのダンサー (ライザ・ギロー)
Gypsy Belly Dancer (Lisa Guiraut as Leila)
ボンドガール。ジプシー村のダンサー。直訳すれば、腹踊りのダンサーと云う事にもなる微妙なキャラ名はさて置き、充分なアピール度の映像ではかなり印象に残る女性キャラの一人。演じるライザ・ギローは、前年度に公開されたあの「酒とバラの日々」や後年の「カーツーム」などでも踊りを披露。 |
ケリムの運転手 (ネヴィル・ジェイソン)
Kerim's Chauffeur (Neville Jason)
原作にも登場するケリムの息子。ボンドと暗号を交わすダイアローグは、後のベオグラードでグラントが暗号を見破るくだりの最初の伏線。 |
ヴェニスの橋に佇む女性 (ドロシア・ベネット)
Woman on Bridge in Venice (Dorothea Bennett)
ボンドガールなどとは呼べない端役のキャラだが、演じるドロシア・ベネットは、何と83年に映像化される「ジグソーマン」の原作著者。"De la part
des copains"と云う作品で70年に脚本を手掛ける以外、業界とも無縁のドロシア・ベネットだが、ついては、執筆業とも無縁だった頃の行楽中での偶然の出演だったのかも。 |
ナッシュ大尉 (ウィリアム・ヒル)
Captain Nash (William Hill as Bill Hill)
ベオグラードでグラントに殺害されるMI6の連絡員。原作には登場しないキャラだが、ナッシュと云う名前は、グラントが使う偽名として原作に登場する。脚色では、ナッシュとボンドの会話を盗み聞きする中、暗号を覚えるグラントだが、このキャラ自体が登場しない原作のくだりは全く別。グラントがボンドへの接近を成功させるのも、本国が入手していた暗号リストを既に暗記していたためだった。 |
オープニング・タイトルでダンスを披露する女性 (ジュリー・メンデス)
Girl dancing during opening titles (Julie Mendez)
キャラクターとしてリストアップ出来るような人物ではないが、ボンドガールという話になれば、リストアップされても不思議ではないのかなと。演じるジュリー・メンデスは、後年の「炎の女」や「太陽を盗め」にも出演。 |
オリエント急行の女性客 (ジャキ・サルツマン)
Woman on train (Jaqi Saltzman)
客室脇の廊下でロングからアップ(1時間8分台のシーン)になる人物が恐らくはこの女性。先のドロシア・ベネットと同様、ボンドガールとは呼べないようにも思える端役の女性だが、「サルツマン」と云う名前から製作者の親族なのかなと云う事で。まぁ、この程度の端役でも後年のシリーズでは間違いなくボンドガール扱いされる訳ですしね。ちなみに、オバサン臭い格好を無視すればなかなかの美貌。 |
| Various Note メモ: |
| あのJFKの愛読書としても著名だったフレミングの原作だが、何と云ってもその売りは、現実に実在していたと云うソ連の公的殺人機関「スメルシュ」の長たるグルボザボイスチコフ将軍の正確な描写や、モスクワ・シレテンカ通り13番地に位置していたスメルシュ本部の住所までを明らかにするリアルな内容。その本部内での会議の様子もほぼ忠実に再現されていたと云う原作だが、その舞台をイスタンブールに移す脚色の方は、その黒幕もスペクターと云う半ば荒唐無稽なヒールキャラ。余剰的なセックスアピールにも違和感を抱く中、本作の試写を最期に後年のシリーズを観る事は出来なかったフレミングだが、その本音も想像には難くない所。ストイックな原作を満喫すれば、そんな作者の心情にも納得させられるが、ただ、的を押さえたシビアな描写と怒涛のダイナミズム、娯楽度満点のお色気が絶妙なバランスだった初期の映像作品が、なかんずく出色だった事も疑いようのない事実。個人的には、原作と映像を別チャネルで楽しめると云うのもこの上なくありがたい話だった。お国の為に火中の栗を拾うのはボンドの常だが、そんなシビアなキャラクターにはサビの効いたウィットや女気も良く似合う。映像シリーズではまだ2作目の本作だが、世紀を越えるロングシリーズになろうとは、63年の当時に誰が予測しただろうか。 |
| 後年の作品でもお馴染みのジョン・バリーの挿入スコア"007"は本作がお披露目。次回作の予告テロップもお約束だが、"THE
END"に続く"NOT QUITE THE END"と云う言い回しは如何にも英国的なウィット。 |