| Introduction 序盤アウトライン: |
| 南アフリカ経由のダイヤの密輸人が相次いで消される中、そのダイヤの行方を突き止めるべく密輸ルートに潜入したボンドは、密輸ダイヤを横取りする謎の一味の存在を突き止める。やがて、人間嫌いと噂される米西海岸の大富豪がその黒幕として浮上する中、数々の罠を掻い潜りそのアジトに辿り着いたボンドだったが、何とそこに待ち受けていた人物は、一度は息の根を止めたはずの仇敵ブロフェルドだったーー |
| Various Note メモ: |
スペクターとボンドの死闘を描くシリーズ第7弾。イアン・フレミングの原作は、小説リリースの順番では4番目。脚色は、シリーズ前作「007は二度死ぬ」と「007/ムーンレイカー」を除く「007/消されたライセンス」までの本家シリーズ全作品を手掛けるリチャード・メイボームと、本作に続くシリーズ作「死ぬのは奴らだ」「黄金銃を持つ男」も手掛けるトム・マンキウィッツ。演出は、シリーズ3作目「ゴールドフィンガー」のガイ・ハミルトン。脚色のトム・マンキウィッツと同様、監督のハミルトンも「死ぬのは奴らだ」「黄金銃を持つ男」で続投。
シリーズ前作「女王陛下の007」で2代目ボンドを襲名したジョージ・レーゼンビーが続投を辞退する中、シリーズ復帰を果たしたショーン・コネリーだが、83年の番外作品「ネバーセイ・ネバーアゲイン」を除けば、コネリーがボンド映画へ出演するのも本作が最後。
以下、完全ネタバレ。未鑑賞の方はご留意下さい。 |
| various novels and movies 原作と映像化作品のリスト: |
| 原作 novels |
映像化作品 movies |
| year |
邦題
別文節の「007号」は省略 |
original title |
year |
title
邦題
|
| 1953 |
カジノ・ロワイヤル |
Casino Royale |
1953 |
US/CBS TV
Climax Mystery Theater
Casino Royale
* Barry Nelson as 007 |
| 1967 |
same |
| 2006 |
same |
| 1954 |
死ぬのは奴らだ |
Live and Let Die |
1973 |
same |
| 1955 |
ムーンレイカー |
Moonraker |
1979 |
same |
| 1956 |
ダイヤモンドは永遠に |
Diamonds Are Forever |
1971 |
same |
| 1957 |
ロシアから愛をこめて |
From Russia with Love |
1963 |
same
007 危機一発
007 ロシアより愛をこめて
|
| 1958 |
ドクター・ノオ |
Dr. No |
1962 |
same
007は殺しの番号
007 ドクター・ノオ
|
| 1959 |
ゴールドフィンガー |
Goldfinger |
1964 |
same |
| 1960 |
007号の冒険
以下5編収録の短編集。
#1: バラと拳銃
#2: 読後焼却すべし
#3: 危険
#4: 珍魚ヒルデブランド
#5: ナッソーの夜 |
For Your Eyes Only
* omnibus as 5 episodes
#1: From a View to a Kill
#2: For Your Eyes Only
#3: Risico
#4: The Hildebrand Rarity
#5: Quantum of Solace |
1981 |
same
007 ユア・アイズ・オンリー |
| 1985 |
A View to a Kill
007 美しき獲物たち
|
| 1961 |
サンダーボール作戦 |
Thunderball |
1965 |
same |
| 1962 |
わたしを愛したスパイ |
The Spy Who Loved Me |
1977 |
same
007 私を愛したスパイ
|
| 1963 |
女王陛下の007号 |
On Her Majesty's Secret Service |
1969 |
same
女王陛下の007
|
| 1964 |
007号は二度死ぬ |
You Only Live Twice |
1967 |
same
007は二度死ぬ
|
| 1965 |
黄金の銃を持つ男 |
The Man with the Golden Gun |
1974 |
same
007 黄金銃を持つ男
|
| 1966 |
ベルリン脱出
以下3編収録の短編集。
#1: オクトパシー
#2: 所有者はある女性
#3: ベルリン脱出 |
Octopussy
* omnibus as 3 episodes
#1: Octopussy
#2: The Property of a Lady
#3: The Living Daylights |
1983 |
same
007 オクトパシー
|
| 1987 |
same
007 リビング・デイライツ
|
|
| release dates 英/米/日本での封切り状況: |
| 全米公開:1971年12月17日/日本公開:1971年12月25日/全英公開:1971年12月30日。(1971年12月14日の西ドイツでの公開が世界最速。また、お膝元の英国で公開される以前の各国での公開状況は次の通り。フランス・スペイン・スウェーデン:12月20日/イタリア:12月22日/香港・オランダ:12月23日/フィンランド:12月25日/ノルウェー:12月26日) |
| a novel and a movie 原作と脚色: |
| ノンフィクション自著「ダイヤモンド密輸作戦」を下敷きにしていたかのようなフレミングの原作だが、こちらの脚色で頂戴しているのも、ダイヤ密輸ルートに潜入したボンドが密輸組織の女性ティファニーと接触する中、米国に乗り込むというアウトラインの触りだけ。密輸ルートのダイヤを横取りするスペクターが、衛星の反射板に敷き詰めたダイヤで強力レーザー光線を生成する中、全世界を強請るという宇宙規模の内容は、「007は二度死ぬ」でも体験済みの時勢を反映する大娯楽路線。当然、ボンドvs米国ギャングという直球勝負の原作とはその印象も全然違う。 |
| バリバリのマフィア密輸団と英国情報部のボンドが真正面から対決するという両者相容れぬようなコントラストも原作の面白味の一つだが、「ABC」と呼ばれる黒幕の正体を最後まで明かさぬミステリ感覚が原作での何よりの醍醐味。一方、6~7割方のキャラクターをそのまま登場させながらも、内容は殆ど異なる脚色だが、面白かったのは、原作のモチーフが思わぬ形で飛び出す数箇所の段落。と云うより、骨子そのものがかけ離れた内容になる中、原作のモチーフを半ば強引に活かそうとする脚色のサービス度は、これまでの映像シリーズでも随一だったと云える。 |
| まずは、冒頭で飛び出す「泥浴」のシーン。脚色ではアムステルダムからLAに飛ぶボンドだが、原作で真っ先に向かう先はNYで、CIAを引退したフェリックス・ライターが登場するのもこの辺り。ダイヤの運び屋を装うボンドは、その報酬を合法的に受け取る為にサラトガ競馬場に向かう訳だが、ライターとの連係プレイで八百長旗手を抱き込む中、やがて、その八百長旗手が密輸団に裏切りの制裁を加えられるシーンで登場する「泥浴」のシーンは、他ならぬブロフェルドの影武者が登場する脚色版でのイントロの情景。ブロフェルドの「影武者」と云うキーワードは、中段以降でもフィーチャーされる脚色だが、これも要は、前作「女王陛下の007」でトレーシーを殺害されたボンドの復讐劇を皮切りにする必要に迫られた脚色ならではの苦肉の策。ついては、冒頭での復讐劇を経る中、意外な形でのブロフェルドとの再会をある種の見せ場にする脚色だが、原作を知るファンにしてみれば、あの八百長旗手の制裁を描く「泥浴」の描写がブロフェルドの影武者を葬り去る描写で登場する脚色には驚かされたはず。ちなみに、原作に登場する八百長旗手が乗る馬の名前は「ハニカミ」。 |
| 次に、2人組の殺し屋ウィントとキッドがダイヤの密売人を暗殺する序盤のシーン。殺し屋の1人ウィントにサソリを忍ばされた密売人の医師が絶命する中、密売人に成りすました2人の殺し屋に偽物を掴まされたヘリの運び屋が爆死する脚色だが、これは原作で云えばクライマックスの段落の大胆なアレンジ。脚色では2人組の殺し屋とボンドのクイーン・エリザベス号での死闘がクライマックスとして描かれるが、原作では、その正体もようやく明かされる密輸ルートの黒幕「ABC」との決闘シーンこそが待ちに待たれたクライマックス。その内容は、密売人の口封じに奔走するABCが密売人の医師を暗殺する中、ヘリで逃亡する最中にボンドの攻撃でヘリもろとも爆死するというもので、ついてはこれも、密売人の医師以外のキャラを総入れ替えする原作へのオマージュにも近い脚色。 |
| ちなみに、脚色に登場する2人組の殺し屋ウィントとキッドは、原作とは特徴が正反対。と云うより、ウィットがイニシアティヴを握るという設定は同じだが、大柄で根っからのサディストだというウィントと若干30歳にして白髪交じりのその情夫のキッドという原作の2人組は、大柄のプッター・スミス(キッド)と、どちらかと云えば小柄でサディスティックなイメージのブルース・グローヴァー(ウィント)という脚色版でのキャスティングとは全く逆のイメージ。ちなみにブルース・グローヴァーと云えば、ロバート・ゼメキスの大ヒット映画BTTFでもお馴染みのクリスピン・グローヴァー(主人公の風采の上がらない父親役)の父親だが血は争えないもの。見るからに面影を残す容姿も然る事ながら声までがソックリ。 |
| また、「サーカス・サーカス」のシーンでは、会場内に張り込むCIAの面々がアメフトのフォーメーションでティファニーを追い詰めようとするが、恐らくこれは、ウィントとキッドの2人組みがアメフト式のフォーメーションを合図にボンドを仕留めようとする原作終盤に対するオマージュ。ちなみにその終盤、帰国の途に着くボンドがティファニーと乗り込む船は「クイーン・エリザベス号」だが、公開から間もなくしての72年1月、「クイーン・エリザベス号」が香港のビクトリア湾で炎上する事件は周知の通り。後年の映像シリーズ「黄金銃を持つ男」では、本作の原作に対するオマージュとして同船の残骸が登場する。 |
| 「ダイヤモンドは永遠に」と云うタイトルの由縁は、原作ではクライマックスで登場。米国での任務を終えて「永遠」の休息にでも浸るかのような安堵を覚えたボンドが、葬り去ったウィントの死体の傍らで「死こそが永遠」と悟らされる事がその前置き。やがて、密輸団の黒幕ABCを葬り去る中、たとえ密輸ルートが壊滅しても市場に甦るダイヤモンドは「死と同様に永遠の存在」なのだとボンドが悟る辺りがそのオチ。ついては、衛星のパーツとして宇宙に打ち上げられてしまったダイヤを指して「永遠」とでも言いたげだった脚色のオチもフレミングの意図とは全く違っていた訳だが、そもそもが、視覚的要素を真骨頂とする脚色版は、原作とは完全に切り離して楽しむべき一遍。原作と脚色の他の違いについては、適宜以下の段落で。 |
| about James Bond ジェームズ・ボンド: |
| 脚色では、米国に上陸した後も運び屋ピーター・フランクスの名を語るボンドだが、原作ではフランクスの名を語るのも最初だけで、ティファニーとの出会いの段落から既にジェームズ・ボンドの名前で行動する。筋立てそのものが全く異なる原作と脚色では比較のしようもないその後の展開だが、原作でのボンドが窮地らしい窮地に陥るのは終盤だけ。「スペクター」とは無縁の原作ながらも、そのクライマックスの舞台となるのは「スペクターヴィル」という広大な私有地。「ゴースト」にも並ぶ「スペクター」という名詞には何も含みはなかったはずだが、何れにせよ、手荒な拷問を受けたボンドが、特別仕様のSL列車で追いかける相手にティファニーと共にハンドカーで逃げる情景は圧巻。そのまま映像化されていれば、まさしく異様な迫力だったはず。 |
| 一方、障害物競走のようにピンチの連続となる脚色では、視覚要素にも富む見せ場がてんこ盛り。序盤では偽の指紋で窮地を凌ぐシーンも登場するが、あのネタ、ボンドやセメダインで工作の時間にマネをした方なども少なくなかったのではないだろうか。また、敵味方の双方で利用する音声変換装置や、暴漢の撃退に役立ちそうなポケットタイプの小型ネズミ捕りなども懐かしい所。そんな小技の数々も楽しかった一方、地上数十階のペントハウスに侵入するハラハラドキドキのスタントアクションや、怒涛のカーチェイスもここでの大きな見所。月面車に乗り込んだボンドが三輪バギー(ホンダUS90)の追撃を振り切るチェイスでは、三輪バギーを奪い取ったボンドが走行中のバギーをそのまま乗り捨てるカットが登場するが、これはコネリー自身のチョットしたスタントアクション。また、QのラボではあのアストンマーティンDBSも姿を見せるが、そもそもはティファニーの車だった赤のムスタングマッハ1が今回のボンドカー。 |
| ヴェガスでの45度アクロバット走行のシークエンスでは、右に傾いていたムスタングが路地を通過した後に逆の左側45度に傾いているが、これは続きのショットを撮影した際の単なるミスショット。ついては、逆方向に傾いた事を示唆すべく、撮影済みのコマを回転させるという前代未聞の苦肉の編集が炸裂する。これだけの規模の撮影でなぜ撮り直せなかったのかは謎だが、何れにせよ、この辺りを目の当たりにすれば、怒涛のアクション映像の傍らでつなぎ同然のスクリプトが問題視されなかった事にも頷ける。それにしても、このシークエンスはマジで凄い。45度に傾く事でようやく進入する事が出来た狭い路地で、どうやって逆45度に傾けるのかなと。と云うより、これも大風呂敷を広げたイリュージョンのようなもので、正直、この辺りにも全く気付かなかった公開当時だが(小4だったので)、そんな事実がクローズアップされた後にもフツーに許せてしまう辺りはボンド映画ならではの凄み。 |
| 復讐に燃えるボンドが東京(かな?)からカイロに飛ぶ中、ボンドガールをのっけから殴るイントロはいきなりショッキングだったが、正直、オープニングのコネリーもいきなり老けていたような印象。と云うより、本作からシリーズの劇場鑑賞に入った個人的にはこういうものだと思っていたのが正直な所だが、やはりシリーズ序盤の数作品とここでのいぶし銀のイメージにはかなりの開きがある。レーゼンビーの降板を経て数名の候補者にオファーが出される中、最終的にはシリーズ復帰を遂げたコネリーだが、手にした破格のギャラをスコットランド国際教育基金に全額寄付したエピソードはあまりに有名。また、シリーズ復帰のもう一方の条件としてUAから用意されたコネリーの主演作が、あのシドニー・ルメットの「怒りの刑事」。 |
| ちなみに、この「怒りの刑事」は、奥行きのある脚本(自身の戯曲をジョン・ホプキンス自ら脚色)の良さも然る事ながら、ルメットの演出、コネリーのメインロールも全てが完璧。かなり面白い。日本国内では劇場未公開、本国の英米でもDVD化されていない1本だが、凶悪犯罪と深層心理を扱うテーマは昨今の社会ではレクチャーにもなるはず。07年11月現在、輸入VHSであれば容易に入手出来るが、DVDでのメディアリリースが何より望ましい所。72年の「怒りの刑事」への出演後、コネリーがスクリーンに復帰するのも74年の「未来惑星ザルドス」での事だが、ついては「怒りの刑事」に対するコネリーのモチベーションもどれだけのものだったかという事。時代が要求していた作品ではなかったのかもしれないが。 |
| Intro Sequence 冒頭シークエンス: |
| コネリーのシリーズ復帰となれば、オープニングのガンショットも当然コネリーのヴァージョン。微妙によろめく辺りも相変わらず。続く冒頭シークエンスでは、"Hit
Me"という意思表示でカードをもう1枚引こうとするエジプト人をホントにぶん殴った挙句にレディーの首をブラジャーで締め上げるという衝撃のシーンが連発。これも要はトレーシーの復讐に燃えるボンドの怒りの鉄拳だった訳だが、続くスペクターとのバトルシーンでは、先の通り、原作では八百長旗手の拷問を描く「泥浴」のシーンが登場。原作を知るファンであれば微妙に驚かされる。 |
| 続くオープニングテーマは、チョットした初モノ。前段のシークエンスにつながるイントロはさて置き、これはそもそもが別ヴァージョンのテーマ曲。シャーリー・バッシーのヴォーカルトラックも既成ヴァージョンとは全く違う。フィルム専用にテーマ曲の別ヴァージョンが用意されたのも本作が初めてだが、ちなみに、前作の「女王陛下の007」のように劇中で挿入されるサッチモのテーマ曲で別ヴァージョンが用意された例外もある。また、本作以外に「ゴールドフィンガー」「ムーンレイカー」と計3作品のテーマ曲を歌うシャーリー・バッシーは、シリーズでも例外中の例外。と云うより、1人のアーティスト名義で2作品以上のクレジットを飾るという例もシリーズでは皆無。 |
| モーリス・ビンダーのタイトルデザインは、ダイヤというテーマも明快な中での仕事。抽象的なテーマの下では、タイトルデザインのテーマの選定にも頭を捻る所だが、ここでは始めから終わりまでダイヤ中心の構図に終始、ブロフェルドの猫もダイヤの引き立て役で駆り出される。チョットした衝撃だったのは、シルエットデザインの女性がモノホンの乳房を見せていた辺り。これは前作のオープニングに引き続くような傾向の出来事だが、ここでのタブー解禁はまさに本物。と云うより、スクリーニング処理された映像ではアートな感覚に近かった事も確か。と云うか、騒ぎ立てるような事でもないんだけど。 |
| location 舞台: |
東京 → カイロ → 南ア → ロンドン → アムステルダム → LA → ヴェガス → バハ(加州沖) → 大西洋
東京やカイロ、続くスペクターのアジトや南アは現地の撮影でない事も確かだが、アムステルダムでは現地ロケを敢行、ホバークラフトでのドーバー横断を経た後、スキニー橋を始めとするアムステルダムの観光名所がスポットでアピールされる。ちなみに南アでのダイヤ密輸を描くシークエンスは、原作の描写にもほぼ忠実。ただ、ダイヤを地下から盗み取る黒人労働者が、歯科医の前でペロッと舌を見せるという描写は、脚色では白い歯を見せる描写にアレンジされている。また、そもそもがアムステルダムでのティファニーとの接触というのも脚色ならでは設定。原作では英国からダイレクトで米国に渡る。 |
| ムスタングのカーチェイスの撮影は、当時のヴェガスの中心地だったフリーモントストリートで行われたものだが、ついては、例の問題シーンの撮影も市の観光局などとのギリギリの折衝を経ても撮り直しは出来なかったと云う事だったのかも。と云うより、日程をズラす事でヴェガスでの撮り直しも先送りになる中、再び撮影許可を取っての取り直しと云う事になれば、嫌気が指すのも当たり前。そもそも、45度に傾いてのアクロバット走行という発想そのものがシュールだった事を踏まえれば、何でもありだったのかなと。そんなヴェガスでの大活劇を経た後、海洋油田基地でのアクションは脚色ならではの見せ場だが、ボンドとティファニーが航路で英国を目指す描写は原作に同じ。ただし、原作では取って置きのクライマックスがその後に登場。 |
| enemy ボンドの敵: |
エルンスト・スタブロ・ブロフェルド (チャールズ・グレイ)
Ernst Stavro Blofeld (Charles Gray)
国際犯罪組織スペクターの首領。密輸団との闘いを描く原作には登場せず。映像シリーズでは過去6作品で名を連ねているが、顔を見せるのは「007は二度死ぬ」「女王陛下の007」に続き3度目で、今回は毛髪付きでの登場。今回の企みは、国際ダイヤ密輸ルートから横取りしたダイヤを衛星の反射板に敷き詰める事で強力なレーザー光線を生成、国際社会に揺さぶりをかけるというまたしても壮大な計画だが、如何せん、超娯楽路線の脚色では従来の鬼気迫るパフォーマンスもお預け。後年の「ミセス・ダウト」のような女装までが飛び出す中、クライマックスでは形無しの目に遭わされる。
演じるチャールズ・グレイは「007は二度死ぬ」でもお馴染みのキャスト。前回は日本に滞在する豪州人の協力者として登場していたが、今回は歴代でも最も紳士的なブロフェルドの配役。善玉と悪玉を演じ分けたキャストは、後年の「リビング・デイライツ」「ゴールデンアイ」「トゥモロー・ネバー・ダイ」でのジョー・ドン・ベイカーのような例もあるが、「ロシアより愛をこめて」と「ゴールドフィンガー」で敵味方を演じ分けていたナージャ・レジンのようなボンドガールの例もある。 |
アルバート・R."バート"・サクスビー (ブルース・キャボット)
Albert R. 'Bert' Saxby (Bruce Cabot)
ヴェガスの「ホワイトハウス」の支配人。2人組の殺し屋ウィントとキッドにも通じるブロフェルドの手下。監禁されていた大富豪ホワイトの暗殺に単身出向いた所で射殺されてジ・エンド。当然、原作には登場しないキャラだが、イニシャルのA.R.Sとミドルネームに入る通称の頭文字Bを組み合わせれば、恐らくこの名前は、原作では黒幕として登場する「ABC」に因んだもの。ただし、幾つもの顔を持つ「ABC」とはキャラ色は全く違う。 |
ミスター・キッド (プッター・スミス)
Mr. Kidd (Putter Smith)
殺し屋ウィントの相棒。脚色ではブロフェルドの手下という肩書きで登場。一方の原作では、セラフィモ・スパングというギャング配下の腕利きの殺し屋として登場。先の通り、脚色での容姿は原作の容姿とは正反対。原作では、大柄で太った感じのウィントの傍らに寄り添う30歳にして白髪交じりの細身の情夫という描写だが、演じるプッター・スミスは、ブルース・グローヴァー(ウィント)より身長もデカい。 |
ミスター・ウィント (ブルース・グローヴァー)
Mr. Wint (Bruce Glover)
殺し屋キッドの相棒。キャラ設定や特徴は、前段(ミスター・キッド)に記載した通り。こちらの方が主犯格的なキャラという設定は原作に同じ。丸焼きにされたキッドが海に落ちる中、あまりにジャストなタイミングで作動する時限爆弾もろとも海に放り込まれてジ・エンドという脚色での最期だが、あの辺りのお気楽な描写は超娯楽路線の脚色ならでは。変質的で手際の良い仕事ぶりに終始する中、ボンドの始末ではドジを連発させる辺りもご愛嬌。序盤での棺桶で丸焼きにしようとする辺りは、生きたまま丸焼きにしようとする変質性が裏目に出た事も理解できるが、昏睡状態のボンドを鉛管ごと生き埋めにするのは頂けない。現に飄々と生還するボンドだが、工事現場の作業員に気付かれていればその時点で悪巧みも潰えていたはず。作業員がグルであったとしても結果は同じ。ただ、そんな緊張感にも事欠く60-70年代ならではの描写も、今では只々懐かしい。このウィントやキッドに代表される道化のようなヒールキャラと出会えるのも本作から「ムーンレイカー」までの5作品だけなので。 |
整形外科の医師 (デイヴィッド・デ・キーサー)
Doctor (David de Keyser)
ブロフェルドの影武者の整形を担当する医師。冒頭シークエンスのみで登場。演じるデイヴィッド・デ・キーサーは、シリーズ前作「女王陛下の007」ではマルク・アンジュ・ドラコの吹き替えを演じていた人。72年の「吸血鬼サーカス団」や74年の「ドラゴンvs7人の吸血鬼」など後年のハマー作品での吹き替えでも著名。 |
メッツ教授 (ジョセフ・ファースト)
Prof. Dr. Metz (Joseph Fürst)
ブロフェルドに唆されて強力レーザー光線を開発する科学者。元来はコテコテの平和主義者。東西両陣営をねじ伏せる事で冷戦に終止符を打つというブロフェルドの大ウソに騙されると云う筋書き。演じるジョセフ・ファーストは、「ハマーヘッド」「小さな目撃者」「さよならジェミニ」などの70年前後の英国映画ではお馴染みの人物。原作には登場せず。 |
シェイディ・トリー (レナード・バー)
Shady Tree (Leonard Barr)
国際ダイヤ密輸団の一味。原作では「日陰のトリー」と翻訳される重要キャラ。ボンドが持ち運んだダイヤの受け取り役になる辺りは原作に同じだが、アッサリと殺害される脚色での末路は原作とは大きく異なる。ちなみに原作では、ボンドと対決する密輸団の中でも唯一生き残るキャラがこの「日陰のトリー」。演じるレナード・バーは、モノホンの著名なスタンダップコメディアン。劇中では、あのヴァレリー・ペリンを傍らに置いてステージにも立つ。ステージと云えば、そのステージのシーンは何気に重要。と云うのも、赤と白のドレスの美女の間でボンドが銃を構える宣材のデザインは、実は"Shady
Tree's Acorn"のステージ構図のようにも見えるので。 |
ウィッスラー夫人 (マーガレット・レイシー)
Mrs. Whistler (Margaret Lacey)
南アのダイヤ密輸を仲介するアムステルダム在住の一味。孤児院のような施設で教鞭を執る一方、密輸に手を染めるというギャップが何とも云えないが、2人組の殺し屋ウィットとキッドが馴染みだった辺りを参照にすれば、幼い時分のウィットとキッドの面倒を見た人物という設定だったのかも。何れにせよ、冷酷な2人組に殺害された挙句、スキニー橋付近の運河に投げ込まれてジ・エンド。原作には登場せず。演じるマーガレット・レイシーは、79年の「ヤンクス」にも登場。 |
ピーター・フランクス (ジョー・ロビンソン)
Peter Franks (Joe Robinson)
ダイヤの運び屋。運び屋に成りすましたボンドに名前を拝借されるキャラ。原作では名前だけの登場。ついては、あのエレベーターでのボンドとの格闘シーンも脚色ならではのアレンジ。モノホンのフランクスがティファニーのフラットを訪ねる中、屋外で待ち伏せするボンドの一人抱擁パフォーマンスは、女性には事欠かぬボンドのキャラ性を考慮すれば、シリーズでも屈指の見せ場の一つ。 |
ミスター・スランバー (デイヴィッド・バウアー)
Mr. Slumber (David Bauer)
密輸団の隠れ蓑「スランバー葬儀社」のオーナー。ギャング団の一味。ボンドの持ち運んだダイヤが偽物だった事から、丸焼きにされかけたボンドの命を奇しくも救う事に。演じるデイヴィッド・バウアーは「007は二度死ぬ」では米外交官の役で顔を出していた人物。 |
スランバー葬儀社の従業員 (マーク・ローレンス、シド・ヘイグ他)
Slumber Inc. Attendant (Marc Lawrence, Sid Haig, etc)
密輸団の隠れ蓑「スランバー葬儀社」の従業員を装うギャング一味。カジノの美女プレンティを階下のプールに放り投げた後、「プールがあるとは知らなかった」と凄む年長ギャングがマーク・ローレンス。空港でボンドを出迎えた後、車の後部座席で"I
got a brother."とトボケた台詞を口にする人物が、「ジャッキー・ブラウン」や「キル・ビル Vol.2」など後年のタランティーノ作品でも御馴染みのシド・ヘイグ。マーク・ローレンスは「黄金銃を持つ男」にも登場。 |
バンビ (ローラ・ラーソン)
Bambi (Lola Larson)
ボンドガール。大富豪ホワイトの監禁先でボンドを迎える猛烈美女コンビの1人。白人キャラがバンビ。原作には登場せず。 |
ザンパー (トリーナ・パークス)
Thumper (Trina Parks)
ボンドガール。大富豪ホワイトの監禁先でボンドを迎える猛烈美女コンビの1人。黒人キャラがザンパー。原作には登場せず。前段のバンビと同様、脚色の娯楽路線を露にする荒唐無稽な女戦闘員で殺気も皆無だが、ダイナミックなアクロバットに焦点を絞れば、後年の「ブレード・ランナー」に登場する女レプリカントのゾラやプリスを髣髴とさせる節も。 |
ブロフェルドの左側の立つ護衛 (ニール・マッカーシー)
Guard on Blofeld's left (Neil McCarthy)
クレジットをそのまま翻訳するのもアホらしい気がするが、要は、冒頭シークエンスで登場するブロフェルドの助さん角さん的な護衛の一人。ポケットタイプのネズミ捕りでアイテムで指を挟まれるシーンは、各種宣材などでも有名。演じるニール・マッカーシーは、60年代の「丘」や「荒鷲の要塞」、70-80年代の「フォロー・ミー」「暁の7人」「タイタンの戦い」「バンデットQ」などでもお馴染みの人物。一度見たら忘れられない顔なのかも。 |
マリー (デニーズ・ペリエ)
Marie (Denise Perrier)
ボンドガール。トレーシーの復讐に燃えるボンドにブロフェルドの居所を白状する女性キャラ。原作には登場せず。それにしても、悪役に葬られるボンドガールはある種の定番だが、ボンドに殴られた挙句にブラジャーで首を絞められると云うのもかなりのレア度。 |
タイナン医師 (ヘンリー・ロウランド)
Dr. Tynan (Henry Rowland)
ウィントとキッドに殺害される南アの歯科医師。密輸の仲介役。演じるヘンリー・ロウランドは「カサブランカ」にも出演した人物。密輸現場に単車で乗りつける医師キャラは原作にも登場するが、原作に登場する同様のキャラを殺害するのは黒幕のABCで、クライマックスでの出来事。 |
| company ボンドの仲間: |
M (バーナード・リー)
M (Bernard Lee)
。米国マフィアへの苦手意識も明らかにされる原作だが、メインのヒールもマフィアではない脚色では、博学のボンドに対する序盤でのアイロニーが唯一の見せ場。 |
ミス・マネーペニー (ロイス・マクスウェル)
Miss Moneypenny (Lois Maxwell)
Mの秘書。と云うより、ボンドガールのお局的な重要キャラ。演じるロイス・マクスウェルは、14作目「美しき獲物たち」まで本家シリーズ全作品に登場。原作での出番はごく僅かだが、脚色の方では、密輸ダイヤの運び屋ピーター・フランクスの逮捕劇で一役買う。渡蘭するボンドに税関職員のコスチューム姿でダイヤの指輪をねだるもアッサリかわされるマネーペニーだが、直後にボンドを見送るショットはなかなか印象的。ちなみに出張の多いQはさて置き、マネーペニーとMがそれぞれ別ロケーションで登場する辺りはシリーズでもかなり珍しい。 |
Q (デスモンド・ルーウェリン)
Q (Desmond Llewelyn)
秘密兵器を製造調達するMI6「Q」課の責任者。演じるデスモンド・ルウェリンは、シリーズ処女作「ドクター・ノオ」と「死ぬのは奴らだ」を除く「ワールド・イズ・ノット・イナフ」までの映像全作品に登場。Q課の職員は一切登場しない原作だが、アムステルダムでのピンチを凌ぐ偽の指紋や、ブロフェルドの手下サクスビーの声色を真似る音声変換装置などチョットしたアイテムが大活躍するこちらの脚色では出番も多い。と云うより、シリーズでも最長時間の出演だったのかも。「電磁RPM制御器」という指輪仕様のアイテムでは、Q自らがスロットマシンでその性能を証明。そんな中、ジャックポットに上機嫌のQとティファニーの脇を抜き足での女装姿ですり抜けるブロフェルドには大爆笑させられる。 |
ティファニー・ケイス (ジル・セント・ジョン)
Tiffany Case (Jill St. John)
ボンドガール。ダイヤの運び屋を監視する密輸団お抱えのお目付け役。原作にも登場するヒロインだが、ティファニーと云う名前の由来は両者の描写も全く異なる。あの有名な「ティファニー」で産み落とされた事が名前の由来とする脚色だが、原作では、生まれた赤子が男児ではなかった事に激怒した父親が現ナマ千ドルとティファニー製の白粉箱を残して家出した事がその由来として語られる。また、脚色では描かれる事がなかった密輸団への関与についても、原作ではその全てが明らかにされる。亭主に逃げられたティファニーの母親が売春宿の経営に乗り出す中、みかじめの支払いを渋った為にその取立て屋に輪姦された事が転落人生の始まり。やがて紆余曲折を経て流れ着いた賭博場でギャングと知り合った事が密輸ビジネスへの入り口だったというティファニーだが、ボンドの捜査に協力する中、悪事に加担してきた我が身を案じる辺りは原作と脚色もほぼ同じ。
若くして海千山千といったティファニーには打って付けのキャスティングだったジル・セント・ジョンだが、本作の撮影時には3度の離婚を経験していた辺りも芸の肥やしになっていた事は確か。シリアスなスリル感覚も二の次だったスクリプトでは、あの飄々としたパフォーマンスも必要不可欠だったはず。ちなみに90年から07年現在に至るまで、あのロバート・ワグナーとのおしどり夫婦ぶりでも知られるジル・セント・ジョンは、米国人の間では最も愛されるボンドガールの一人。 |
プレンティ・オトゥール (ラナ・ウッド)
Plenty O'Toole (Lana Wood)
ボンドガール。大盤振る舞いのボンドを見初めるカジノの女。原作には登場せず。連れ合いの男がカジノで丸裸にされる中、アッサリと見切りを付ける計算高い女狐キャラだが、ボンドと知り合ったばかりに、高所の部屋からプールに投げ込まれた挙句、変態殺し屋に惨殺される結末はあまりに哀れ。そんな劇中での配役はさて置き、プロダクションの中では、ヒロインのジル・セント・ジョンにも肩を並べる待遇だったラナ・ウッドだが、そのキッカケは、製作のブロッコリが彼女の71年のプレイメイトショットに目を留めた事。ナタリー・ウッドの妹と云う肩書きも、後から取って付けた程度のプラス要素だったのかも。 |
ウィラード・ホワイト (ジミー・ディーン)
Willard Whyte (Jimmy Dean)
ヴェガスの高層ホテルにペントハウスを構える大富豪。密輸団のダイヤを横取りする黒幕として捜査線上に浮上する人物だが、実はブロフェルドに囚われる中、その地位を利用された哀れな金持ち。原作には登場しない脚色ならではのオリジナルキャラだが、云うまでもなくそのモデルは、独禁法が施行される以前のヴェガスの「デザート・イン」で4年間ヒッキー状態だったあのハワード・ヒューズ。一方、役を演じるジミー・ディーンは、当のデザート・インでレギュラーステージも務めていたC&Wの歌手。ホワイト役のオファーを受けたジミー・ディーンがビビったと云うのも当然の話だが、ついては、この辺りのキャスティングが本決まりになった時点で、本作の米国での大ヒットも確実視されていたのではないだろうか。 |
フェリックス・ライター (ノーマン・バートン)
Felix Leiter (Norman Burton)
CIAのエージェント。映像シリーズでは4度目の登場だが、原作では3度目の登場。「死ぬのは奴らだ」(原作シリーズ第2作目)で瀕死の重傷を負った後(右手と左脚を失う)、米ピンカートン探偵社の社員と云う肩書きで義足と義手の姿で登場する原作だが、ちなみにその設定が脚色の方で活かされるのも89年の「消されたライセンス」での事。バリバリのCIAキャラで登場するここでは、捜査の最前線で陣頭指揮を執るなど出番も多いが、何より面白かったのは、殺気のないボンドに対して炸裂するアイロニーの数々。さながらソープのようなスクリプトは結構笑える。演じるノーマン・バートンは、「猿の惑星」シリーズや「電子頭脳人間」「タワーリング・インフェルノ」などでもお馴染み。 |
ドナルド・マンガー卿 (ローレンス・ネイスミス)
Sir Donald Munger (Laurence Naismith)
ダイヤ密輸の現状をボンドに説明する人物。ちなみに原作では、M自らが密輸の現状をボンドに説明する中、ロンドン警視庁のヴァレンス副総監(「ムーンレイカー」にも登場)が潜入捜査について説明する。 |
クラウス・ハーゲルシャイマー (エド・ビショップ)
Klaus Hergersheimer (Ed Bishop)
ウィラード・ホワイトの科学ラボに勤務する保安課職員。メッツ教授のワゴン車に忍び込んだボンドがラボに侵入する中、知らぬ顔のボンドにスペアの保安バッジを手渡すイイ人キャラ。演じるエド・ビショップは、あの「謎の円盤UFO」ではストレイカー司令官を演じていたおなじみの顔。「007は二度死ぬ」では顔出し程度の出演だった中、キャリアを上げたここでは強烈なインパクトを残す。 |
水鉄砲風船割りゲームの客引きスタッフ (ラリー・J.ブレイク)
Water Balloon Game Barker-Operator (Larry J. Blake)
「サーカス・サーカス」の施設を包囲するCIAメンバーの1人。ボンドの正体も知らぬ上にスペクターの暗躍も露知らぬティファニーにダイヤを手渡すキャラだが、思えば、この辺りのスクリプトは結構おかしい。ボンドとCIAの連係プレイでティファニーを泳がせる中、横取りする謎の一味をおびき寄せる囮にするというCIAの算段だが、そもそもの誤りは、モノホンのダイヤを手渡してしまった事。結果的には、CIAの包囲網から逃走したティファニーが空港のロッカーにダイヤを預け入れる中、ティファニーからダイヤの在り処を聞き出したボンドが、スペクター一味が現れる空港の現場を寸でのタイミングで押さえた事で科学ラボの存在にまで漕ぎ付く訳だが、仮に偽ダイヤを手渡していた場合でも問題に火が付くのも科学ラボにダイヤが到着した後の事で、ボンドが科学ラボに辿り着いていなかったような場合でも、また捜査が振り出しに戻るだけで済まされる。と云うより、モノホンのダイヤを手渡していた状況では、ボンドがスペクターの尻尾を掴んでいなければ、取り返しの付かない状況にも追い込まれていたはず。何れにせよこの辺りは、娯楽路線ならではの安易な筋立てだったが、それにしても、理路整然とした路線のスクリプト以上に頭を捻らされると云うのもかなり微妙。 |
サミー・デイヴィス・Jr (サミー・デイヴィス・Jr)
Sammy Davis Jr. (Himself)
「ポギーとベス」「オーシャンと十一人の仲間」「スイート・チャリティ」など俳優業でも知られたデイヴィス・ジュニアだが、ここでは劇中での出番はない。と云うより、パフォーマンスのシーンが用意されながらも編集段階で割愛されている。ボンドが運び屋のシェイディ・トリーの雑誌記事に驚く中、その左側のページにデカデカと写る人物がデイヴィス・ジュニアその人。70年代の日本ではCMでも有名だった人ですね。 |
マクスウェル (バート・メトカリフ)
Maxwell (Burt Metcalfe)
ライター配下のCIAメンバー。「サーカス・サーカス」のシークエンスでティファニーを取り逃がすキャラだが、その後の展開でも出番は多い。演じるバート・メトカリフは、米TVシリーズ"M*A*S*H"の演出で著名な人物。 |
シェイディ・トリーの助手 (ヴァレリー・ペリン)
Shady Tree's Acorn (Valerie Perrine)
ボンドガール。シェイディ・トリーの右側に立つ白い衣装のショーガール。演じるヴァレリー・ペリンは本作が銀幕デビュー。「スローターハウス5」「ラスト・アメリカン・ヒーロー」「レニー・ブルース」と本作の出演から僅か数年後には大スターにまで上り詰めるヴァレリー・ペリンだが、そんな華やかなキャリアも本作に出演していた当時は誰もが予想出来なかったはず。ただ、無愛想に振舞うもう一方の赤いドレスの女性キャストと比較すれば、愛想良く笑顔を振りまくヴァレリー・ペリンが何処となく光っていた事は確か。 |
トム (シェーン・リマー)
Tom (Shane Rimmer)
大富豪のホワイトに八つ当たりされる工場の警備員。演じるシェーン・リマーは、レーダー技師を演じたシリーズ5作目「007は二度死ぬ」をはじめ、70年代の「スコルピオ」「合衆国最後の日」「スター・ウォーズ」「ジュリア」や80年代の「レッズ」「ガンジー」「ホワイトナイツ/白夜」「愛と哀しみの果て」、90年以降は「死の接吻」「スパイ・ゲーム」「バットマン ビギンズ」などハリウッドでも著名な中堅俳優。 |
| Various Note メモ: |
| 全ての段落で凄みに欠けるブロフェルドの描写はもとより、ボンドの始末でドジを連発する2人組の殺し屋や荒唐無稽なカーチェイスなど、スパイ映画の真骨頂たるシリアスさも置き去りにする大娯楽路線の脚色は、ウィットを通り越してコミカルにまで変貌しているが、その実これも、他ならぬ時代の要求に真摯に応える超真面目なエンターテインメント。そんな娯楽路線のトーンも、次回作の「死ぬのは奴らだ」から第11作目の「ムーンレイカー」に至る中で徐々にピークを迎える訳だが、思えば、エンタメ映画の流れを一つのシリーズで代弁出来ると云うのもボンド映画の醍醐味。と云うより、複雑多岐にわたるエンタメ映画の潮流を手頃な尺度で測ろうとすれば、ボンド映画をおいて他に手段はないような気もする所。70年代以降のポピュラー音楽の変遷を紐解くのであれば、ボウイのアルバムを聴けば事も簡単に済むが、ボンド映画も正にそんな感じ。 |
| ボウイと云えば、一時期はボンド映画の悪役の候補に挙がったりもしていたが、大英帝国が誇るエンタメの切り札ともいえるボンド映画とボウイが未だ接点なしというのもフツーに不思議。記憶では、ボウイが悪役の候補に挙げられていたのも「美しき獲物たち」の頃だったはずだが、ボウイの模倣コピーのようなナンバー("Planet
Earth"はボウイの"Speed of Life"ソックリ)を演っていたデュラン・デュランがテーマ曲で参画するなど、大御所としては出辛くなった事も確か。やがて、70-80年代のボウイのカリスマ性にも陰りが差し込む中、話題のアーティストとタイアップするボンド映画とボウイの距離も広がってしまったような気もするが、06年の「カジノ・ロワイヤル」が往年のファンへのアピールにも成功する中、次回作辺りが実力派ボウイの出番なのかなと。ボンド映画の往年のパワーも完全復活を遂げた今、80-90年代でボンド映画を諦めたような団塊世代もボウイの参入で一気に取り込めると思うのだが。 |