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Straw Dogs
わらの犬 (1971) UK / USA 118min.
Introduction 序盤アウトライン
英国南西部、地の果てとも呼ばれるコーンウォール州。米国人の若き天体物理学者デイヴィッド・サムナーが妻エイミーの故郷でもある片田舎の村に引っ越して来る。合衆国の雑踏での生活から離れて研究に没頭しようと一年間の期限付きで一軒家の農家を借りたデイヴィッドは、納屋の改修工事にエイミーとは顔見知りのチャールズら数人の若者を雇用するが、かつてはエイミーと肉体関係にあったチャールズの態度は、デイヴィッドに対する妬みを露にするものだった。やがて、エイミーの飼い猫が惨殺されると云う事件を受けたデイヴィッドは、その態度を改めさせる機会を伺うべくチャールズらと共にハンティングに出かけるが、一人猟場に取り残されたデイヴィッドは徒歩での帰宅を余儀なくされてしまう。一方、デイヴィッドの留守宅では、エイミーの肉体に未練を抱いていたチャールズがその鬱積されていた肉欲を爆発させようとしていたーー
Various Note メモ
妻の故郷でもある英国の片田舎に移住した非暴力主義の米国人男性が、自らの内面にも燻らせていた暴力性を思わぬ形で迎える四面楚歌の状況下で引き出されてしまう云う顛末だが、妻を寝取られた男の復讐劇と云った短絡的なドラマとは一線を画する緻密なシナリオは見応えも充分、傑出している。妻のエイミー(スーザン・ジョージ)が輪姦されるシークエンスは、あまりの衝撃故に、あの映画史にも残るであろう強烈なクライマックスにも繋がるダイレクトな伏線のようにも思えてしまいそうだが、実は全く違う。

以下、完全ネタバレ。未鑑賞の方はご留意下さい。
主人公のデイヴィッド(ダスティン・ホフマン)とチャールズ(デル・ヘニー)らの確執、デイヴィッドとエイミーの夫婦生活での不協和音、そして、村人同士の微妙な人間関係などがパラレルに描かれるシナリオだが、あのショッキングな輪姦シーンは、足も地に付かぬと云った未成熟な一面を持つエイミーが迎える然るべき局面とする節も強く、一方、チャールズとノーマン(ケン・ハッチソン)と云う2人の強姦犯の微妙な人間関係を燻り出すべくあのクライマックスに向けられて用意された伏線的な意味合いも強い。実際に、デイヴィッドは妻が輪姦されたと云う事実については露知らぬままにクライマックスを終えているもので、あのクライマックスの惨劇も、ヘンリー(カメオで出演するデイヴィッド・ワーナー)を匿うデイヴィッドたちが立て篭もる家の外で偶発的に起きてしまった大佐(T.P.マッケンナ)の暴発事故死が引き金になったものである。
大佐や神父の表敬訪問を受けたデイヴィッドが、社会生活では恩恵も齎される核化学を頭ごなしに否定する神父と交わすダイアローグや、その神父が主宰する教会イベントでは従順な態度に終始しながらも、一歩表に出れば弱者をいたぶると云う村人の二面性を燻り出す描写など、所詮は使い捨てのご都合主義と云った人間の道徳観を指す「わらの犬」と云う映画版のタイトル(原作小説のタイトルは「トレンチャーズ農場の包囲網"The Siege of Trencher's Farm"」)も実に的を得たものだが、命懸けでの四面楚歌の状況下では暴力も必然のものとして描かれる人間社会での虚しい様相を指して「わらの犬」と切って捨てるだけで終わられてしまう事には些かの抵抗を覚えてしまったりもする所。窮地を迎える弱者が力にも勝る多勢の相手を駆逐すると云ったクライマックスは、通常であれば胸を空くような様相の展開にも映るものだが、ここでの劇中の展開はカタルシスなどとは無縁のもので、エンドロールの直前、笑みを浮かべるデイヴィッドの表情が指すものは、誰しもが永遠に背負う人間の性への混沌である。
ドナルド・サザーランド、ジャック・ニコルソン、シドニー・ポワティエを押し退ける形で役を得たダスティンホフマンと、ダイアナ・リグ、シャーロット・ランプリング、ヘレン・ミレンと云った面々の中から抜擢されたスーザン・ジョージだが、2人は、ペキンパーの命令によって2週間の同棲を経て撮影に臨んでいたもので、劇中で披露される絶妙な掛け合いの一部のやり取りは、その同棲期間中に2人によって得られたアイディアを撮影間際にスクリプト化したものだったと云う。
ホフマン演じるデイヴィッドが地元のパブに初めて立ち入るシーンを撮影していたペキンパーは、デイヴィッドに向けられる他の俳優のリアクションに不満を覚えた為に、ホフマンをズボン無しの状態でバーに向わせたと云う。結果、ペキンパーも納得したと云うバーの内部での表情が収められたショットは、劇中でそのまま披露されている。
撮影期間中、ノーマン役のケン・ハッチソンとランズエンドの海岸で一晩飲み明かしたペキンパーは肺炎を患っているが、その製作の続行が危ぶまれる中、ロンドンの病院で回復したペキンパーが現場復帰の条件として医師から提示された条件は、撮影期間中はしらふでいると云う事だったらしい。
エイミーが2人の男に輪姦されるシークエンスとクライマックスでの一連の暴力描写を憂慮した英国のフィルム検閲委員会は、ホームビデオが普及し始めた1984年から2002年までの間、本作のソフトでのリリースを禁じていた。その渦中のエイミー役を体当たりで演じたスーザン・ジョージは、2人の男に強姦されるばかりか、2度目はアナルへの強姦と云うペキンパーのプランに降板するとまで訴えていたが、結局、2度目の強姦の際には背後から襲われると云うシチュエーションはそのまま残す形で、精神的苦痛を捉えるショットのみに止めると云うスーザン・ジョージの意向をペキンパーが受け入れる形で撮影は行われている。
絶妙な演技を披露するデイヴィッド・ワーナーだが、杖を突いて歩行すると云う設定はスクリプトで指示されていたものではなく、撮影前に実際に足を骨折していた為だった。彼がノークレジットでの出演となった理由は、プロダクションが団体で加入する管理下中の傷害保険の被保険者名簿に名前を載せる事が出来なかった為だが、これは、既に足を骨折していた事によって、傷害保険の保険金支払い対象となる事由となる偶然且つ突発的な危険の回避が難しい状況では傷害保険の加入は不可能となる為である。契約を引き受ける保険会社が、クレジットされているキャストやスタッフと云った形で被保険者を設定していた為に、ノークレジットにせざるを得ないと云う状況だったと思われる。



製作スタッフ
Staff
関連作品 (抜粋)
Related Works "excerpts"
監督
Directed by
サム・ペキンパー
Sam Peckinpah
荒野のガンマン The Deadly Companions
昼下りの決斗 Ride the High Country
ダンディー少佐 Major Dundee
ワイルドバンチ The Wild Bunch
砂漠の流れ者 The Ballad of Cable Hogue
ジュニア・ボナー 華麗なる挑戦 Junior Bonner
ゲッタウェイ The Getaway
ビリー・ザ・キッド 21才の生涯
 Pat Garrett & Billy the Kid
ガルシアの首 Bring Me the Head of Alfredo Garcia
キラー・エリート The Killer Elite
戦争のはらわた Cross of Iron
コンボイ Convoy
バイオレント・サタデー The Osterman Weekend
製作
Produced by
ダニエル・メルニック
Daniel Melnick
ザッツ・エンタテインメント That's Entertainment!
フットルース Footloose
殺したいほど愛されて Unfaithfully Yours
クイックシルバー Quicksilver
原作
Based on the novel by
ゴードン・ウィリアムズ
Gordon Williams
* novel "The Siege of Trencher's Farm"
身代りの樹 Tree of Hands
脚色
Screenplay by
サム・ペキンパー
Sam Peckinpah
* 監督も兼任
デイヴィッド・Z.グッドマン
David Z. Goodman
モンテ・ウォルシュ Monte Walsh
ふたりの誓い Lovers and Other Strangers
さらば愛しき女よ Farewell, My Lovely
2300年未来への旅 Logan's Run
撮影
Cinematography by
ジョン・コキロン
John Coquilon
バンパイアキラーの謎(未) Scream and Scream Again
嵐が丘 Wuthering Heights (1970)
戦争のはらわた Cross of Iron
ザ・アマチュア The Amateur
バイオレント・サタデー The Osterman Weekend
編集
Edited by
ポール・デイヴィース
Paul Davies
夜のたわむれ Nattlek
ベルサイユのばら Lady Oscar
トニー・ローソン
Tony Lawson
バリー・リンドン Barry Lyndon
戦争のはらわた Cross of Iron
ロジャー・スポティスウッド
Roger Spottiswoode
ビリー・ザ・キッド 21才の生涯
 Pat Garrett & Billy the Kid
ストリートファイター Hard Times
007 トゥモロー・ネバー・ダイ
 Tomorrow Never Dies (Director)
美術
Production Design by
レイ・シム
Ray Simm
HELP!四人はアイドル Help!
シャイヨの伯爵夫人 The Madwoman of Chaillot
シンデレラ The Slipper and the Rose
特殊効果
Special effects
ジョン・リチャードソン
John Richardson
ジャッカルの日 The Day of the Jackal
ジャガーノート Juggernaut
オーメン The Omen
ハリー・ポッターと賢者の石
 Harry Potter and the Sorcerer's Stone
音楽
Music by
ジェリー・フィールディング
Jerry Fielding
ワイルドバンチ The Wild Bunch
追跡者 Lawman
ジョニーは戦場へ行った Johnny Got His Gun
メカニック The Mechanic
スコルピオ Scorpio
ダーティハリー3 The Enforcer
キャスト
Cast
配役
Plays
関連作品 (抜粋)
Related Works "excerpts"
ダスティン・ホフマン
Dustin Hoffman
David Sumner 卒業 The Graduate
真夜中のカーボーイ Midnight Cowboy
ジョンとメリー John and Mary
小さな巨人 Little Big Man
アルフレード アルフレード Alfredo, Alfredo
パピヨン Papillon
レニー・ブルース Lenny
マラソン マン Marathon Man
大統領の陰謀 All the President's Men
ストレート・タイム Straight Time
クレイマー、クレイマー Kramer vs. Kramer
アガサ 愛の失踪事件 Agatha
トッツィー Tootsie
スーザン・ジョージ
Susan George
Amy Sumner 鏡の国の戦争 The Looking Glass War
おませなツインキー Twinky
小さな目撃者 Eyewitness
マンディンゴ Mandingo
恐るべき訪問者 Venom
ピーター・ヴォーン
Peter Vaughan
Tom Hedden 裸のランナー The Naked Runner
ハマーヘッド Hammerhead
砂漠の潜航艇 A Twist of Sand
小さな目撃者 Eyewitness
T.P.マッケンナ
T.P. McKenna
Major
John Scott
緑の瞳 Girl with Green Eyes
ユリシーズ Ulysses
1000日のアン Anne of the Thousand Days
ロンドン大捜査線 Villain
デル・ヘニー
Del Henney
Charlie Venner 八点鐘が鳴るとき When Eight Bells Toll
ロンドン大捜査線 Villain
ブラニガン Brannigan
ジム・ノートン
Jim Norton
Chris Cawsey 怪人フー・マンチュー The Face of Fu Manchu
アルフレッド大王 Alfred the Great
ハリー・ポッターと秘密の部屋
 Harry Potter and the Chamber of Secrets
ドナルド・ウェブスター
Donald Webster
Riddaway マッキントッシュの男 The MacKintosh Man
ケン・ハッチソン
Ken Hutchison
Norman Scutt ジュリアス・シーザー Julius Caesar
西部戦線異状なし All Quiet on the Western Front (tv)
ガンジー Gandhi
レン・ジョーンズ
Len Jones
Bobby Hedden シャーロック・ホームズ Sherlock Holmes (1965) (tv)
サリー・トムセット
Sally Thomsett
Janice Hedden 河のライバル(未) River Rivals
若草の祈り The Railway Children
バクスター!(未) Baxter!
ロバート・キーガン
Robert Keegan
Harry Ware ジュリアス・シーザー Julius Caesar
エンドレスナイト(未) Endless Night
フレンジー Frenzy
ピーター・アーン
Peter Arne
John Niles 血の河 Pirates of Blood River
八点鐘が鳴るとき When Eight Bells Toll
モルグ街の殺人(未) Murders in the Rue Morgue
ビクター/ビクトリア Victor/Victoria
チェリーナ・シェイアー
Cherina Schaer
Louise Hood  
コリン・ウェランド
Colin Welland
Reverend
Barney Hood
ケス Kes
ロンドン大捜査線 Villain
ブライダルシャワー Dancin' Thru the Dark
デイヴィッド・ワーナー
David Warner
Henry Niles
(uncredited)
* ノークレジット
トム・ジョーンズの華麗な冒険 Tom Jones
フィクサー The Fixer
砂漠の流れ者 The Ballad of Cable Hogue
呪われた墓 From Beyond the Grave
人形の家 A Doll's House
オーメン The Omen
戦争のはらわた Cross of Iron
クロエ・フランクス
Chloe Franks
Emma Hedden
(uncredited)
* ノークレジット
誰がルーおばさんを殺したか?(未)
 Whoever Slew Auntie Roo?
ブラッド・ゾーン(未) The House That Dripped Blood
魔界からの招待状(未) Tales from the Crypt
ジューン・ブラウン
June Brown
Mrs Hedden
(uncredited)
* ノークレジット
日曜日は別れの時 Sunday Bloody Sunday
サイコマニア(未) Psychomania
電撃脱走・地獄のターゲット Sitting Target
ニジンスキー Nijinsky
マイケル・マンデル
Michael Mundell
Bertie Hedden
(uncredited)
* ノークレジット
謎の円盤UFO UFO (tv)
SFドクター・フー Doctor Who (tv)
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