| Introduction 序盤アウトライン: |
| ローマ。中国人青年タン・ロンが空港に降り立つ。美しい娘チェンの出迎えを受けたタンは、所用を済ませた後、彼女が亡き父から相続する形で経営するレストランに足を運ぶが、厨房責任者である彼女の叔父は、自身が呼び寄せたはずのタンとの再会にも微妙な表情を浮かべ、店の裏手で空手の鍛錬に励むウェイターたちは、店の窮地を救う為にやって来たと云うタンの腕っ節にはチェンと同様に懐疑的だった。そんな中、店の引渡しを要求するギャング一味が来襲、一度は引き上げた後のその夜、二度目の来襲では、ウェイターを相手に暴力制裁を開始するが、一人目のウェイターがチンピラの右ストレートであえなく撃沈した後、勝算無くも立ち向かおうとする二人目のウェイターを制止し、4人のチンピラを瞬く間に叩きのめしたのは、笑顔を封印しドラゴンの技を披露したタン・ロンだったーー |
| Various Note メモ: |
| 邦題には「最後のブルース・リー」とも記された本作、ギミック無しの純然たるリー主演作としては最後の作品「燃えよドラゴン」の直前にクランクインしていた「死亡遊戯」以前に完成された作品だが、これは、最終作「燃えよドラゴン」が大ヒットした後の香港3部作の公開となっていた為に「最後」と形容されていたもの。 |
| 助っ人として窮地を救い、颯爽と去って行くと云うウエスタンのプロットそのものと云ったシナリオだが、序盤での様々なコミカルな演出や、土壇場で犠牲になってしまう味方の面々をヴィヴィッドに描き出すようなアプローチからも、マカロニ的なコントラストが十二分に伺える。しかし、特定の路線を踏襲する模倣的なプロットではありながらも、ステゴロ(投げ矢は登場するが)で多勢のマフィアに立ち向かうと云うブルース・リーの華麗な立ち回りを目の当たりにすれば、もはや、プロットのオリジナリティーなどどうでも良いと云った所なのである。 |
| とにかく印象に残るバトルシークエンスが満載。4人のチンピラを手玉に取る序盤のアクションシークエンスを筆頭に、レストランへの2度目の襲撃を試みる悪漢たちを返り討ちにするシークエンス、口笛と共にノラ・ミアオの救出に向うシークエンス、東宝TAMからリリースされていたサントラLPでのハイライトとも云えるインストナンバー「ビッグ・ボス」をBGMに展開されるウォン・インシクやロバート・ウォールとの決闘、そして、コロシアムにカメラが持ち込まれた撮影としては、古今東西に於ける映画業界での最後のロケーションとなったクライマックスでの一騎打ちと、洗練されたアクションシークエンスには事欠かぬ仕上がりとなっている。ファンの間では、ヌンチャク以外に披露される棒術や投げ矢など、過去の作品では登場しなかったバトルアイテムにも注目が集まっていた。 |
| 後に大スターとなるチャック・ノリスとの一騎打ちを描いたクライマックスだが、対峙する直前までのカメラワークやミステリアスな雰囲気を醸し出すシークエンス編集には、目を奪われるまでの美しさも感じてしまう。猫の絶叫がゴングとなる一騎打ちの最中、序盤での不利な形勢を打開する為にキックスタイルのフットワークが注入されると云うアイディアだが、この実践的で理にも適ったアイディアの引用は、実戦経験のある格闘者ならではの発想だったと云える。今でこそ立ち技最強の登竜門である「K-1」などが市民権を得ているが、その当時では、空手とキックが対戦するなどと云う事は珍事とも云えるような出来事で、本作での空手とカンフーの異種格闘技戦と云った様相の闘いもあり得ないような時代だったのである。 |
| 極真会館の当時の世界大会に参加していたムエタイやカンフーと云った面々も、顔面無しの空手スタイルでの闘いを余儀なくされていた為に、イーヴンな土俵で出された結果とは云い難いものだった訳だが、本作で描かれるクライマックスの異種格闘技戦は、映画ではありながらも、格闘技ファン垂涎とも云える一つの可能性を垣間見る事が出来る貴重なシークエンスだった訳である。フットワークが不利な形勢を打開すると云う描写は、故・大山総裁が体験されたと云う「空手バカ一代」にも登場するムエタイとの死闘を髣髴とさせるもので、このクライマックスでは、ルンピニーだったかラジャナムダンだったかその舞台は思い出せないが、あの漫画に登場するキングコブラとの死闘でも描かれていたフットワークに活路を見出すと云うモチーフが再現されている。 |
| その公開当時には、劇中での空手の胴衣を脱ぎ捨てると云う描写に故・大山総裁が立腹されたと云う逸話も伝えられていたが、実は、当のブルース・リーはと云えば、米国(ハワイ州だったか?)の極真道場で修行を積んだ事もあったようである。有段試験を受ける前に同門を去ったと云う話だったようにも記憶しているが、その真相を確認出来る資料が手元には一切無い。 |
| 文字が読めずにスープばかりを注文してしまうと云うアイディアには笑わされるが、そのローマの玄関とも云える空港のレストランで、無愛想な年配の女性がウェイトレスをすると云うナンセンスさが、そもそもの爆笑を誘う。ローマの市民は良い人ばかりだから、笑顔には笑顔で、仕草には仕草で応えろと熱弁するノラ・ミアオにコールガールが絡むと云うネタも笑える。 |
| 完膚なまでに信頼されずにいたブルース・リーが、胸を空くアクションで信頼を得ると云うモチーフは理屈抜きに痛快だったものだが、その4人のチンピラを手玉に取る英語版でのアクションシークエンスが、とにかくカッコ良いもので、DVDでも何回リピートしてしまったか判らないほどである。マイク・レメディオスが劇場公開版でのエンディングテーマを歌っていた事は周知の所だが、当時リリースされていたサントラや劇場公開版に即する形での英語吹き替えを収録したカルチャーパブリッシュ社発刊のDVDも、今では極めて入手が難しい。尤も、オークションで出回る海賊版などを除けば、レメディオスの歌が収録されたDVDのリリースは、かつて一度も実現していない訳だが、当時のサントラLPの売れ行きなどを考慮すれば、劇場公開版でのリリースを切望するファンも、かなりの数に上るはず。 |