Return To Top
Dogville
ドッグヴィル (2003)
Den. / Swe. / Fra. / Nor. / Hol. / Fin. / Ger. / USA / UK 178min.
Introduction 序盤アウトライン
米ロッキー山脈の町ドッグヴィル。その道も廃坑となった銀鉱山で行き止まりになると云う最果ての町は、町を愛する善良で正直な人々で形成されていた。物書きを生業とするトムは、疎外感が加速する町の閉鎖的な人々の心を掘り起こすべく定期集会を主宰していた。ある日、集会への参列を呼びかけていたトムは、立ち寄ったヘンソン家を後にした所で、ジョージタウンの方角に響き渡る数発の銃声を耳にする。そのままベンチで眠り込んでしまったトムが目を覚ますと、田舎町には不相応なグレースと名乗る美しい女性が出現、間もなくして現れた裏社会の人物と思しきスーツ姿の男たちに彼女の危機を嗅ぎ取ったトムは、彼女を匿う決意をする。翌日、町の人々にもグレースの保護を訴えかけようと集会を開いたトムだったが、人々の反応は不安と懸念を露にしたものだったーー
Various Note メモ
(注意:以下、完全ネタバレ)

「審判の日がくる」と云う日本公開時のコピーだが、そのクライマックスに挿入されるヴィヴィッドなモチーフは、煩悩の捌け口とする形でグレースに対して数々の行為に及んだ町の住人たちに審判を下すと云った意図で描かれたものではない。ブレヒトの「三文オペラ」の劇中歌「海賊ジェニー」に大きな影響を受けたプロットだと云う話もあるようだが、もし、トリアー自身の口から「海賊ジェニー」についてのコメントがあったとするならば、アウトラインの下敷きにした程度の影響だったと云うコメントを歪曲して解釈している事になる。「海賊ジェニー」の顛末は、ある女中を徹底的にこき使っている宿を訪れた100人の海賊が、宿の住人を皆殺しにした上で女中を花嫁として連れ去ると云う物語だが、本作のシナリオと比較してみれば、そのプロットの違いも実に歴然としたもの。
作品の顛末そのものが国際社会で展開されて来た米国の対外政策を投影していた事は、エンドクレジットに流されるボウイの「ヤング・アメリカン」を待たずしても、グレースに訪れようとする悲劇的展開を予測出来る頃には気付けるが、ここで思い当たるのは、我々聞き手ですら予測の出来た悲劇的展開を、当事者のグレースは、何故、回避しようとしなかったのかと云う事。手配書をネタに最初の強姦被害に遭うグレースだが、それでも退こうとしなかったのは何故かと云う事なのである。更にはグレースに強姦を働いた夫の嘘や、その狡猾な息子への体罰を引き金に強姦男の女房までをも敵に回してしまうと云う展開に至っては完全に潮時だったと云えたはずで、自らの足で町に辿り着いた時のように、自らの足で市街地に向かう事も出来たはずなのである。善と悪の二面性、そして禁欲主義と云う足枷に囚われたグレースの自らにも負うべき責任があると云うキャラクター性が投影されていた事で、あのクライマックスの衝撃も痛烈なメッセージになっていたと云う事。ここが「海賊ジェニー」との決定的違いだったと云える。
作品のプロットでもある米国の表裏両面に於ける対外政策への批判だが、その根本には「奇跡の海」でもトリアーが描いている善と悪の二面性でのみ捉えようとする生命観に対する警鐘も。米国が過去に行ってきた対外政策の内側を単純に言ってしまえば、国民を守る為には経済の安定が必須、その経済の安定を図る為には他国の犠牲が伴ってしまうが、国民を守る為には「悪」の行為とも言える他国の犠牲も「必要悪」として割り切らなければならない。「善」か「悪」かと云う究極の二者択一に依存するしかないと云う宗教観や生命観に於いては、他国が血を流すと云う悪の結果にも「必要悪」としての善の行為と云う事で割り切るしかなくなる。この善か悪かと云う二者択一の生命観は、決して米国に限ったものではないが、過去や現在に於いても繰り広げられる世界の悲劇は、このエゴイズムとも呼べる偏った生命観が引き金となっているもので、ここでのクライマックスで描かれる二者択一の価値観で繰り広げられてしまう惨劇などは、正にその究極のエゴイズムを投影した痛烈なメッセージだったと云える。
父親であるビッグマン(ジェームズ・カーン)との会話の序盤では、町の住人には罪は無いと云うグレースだが、僅か数分後には、母親の見ている前で子供を撃てと云う。やられた事への仕返し、因果応報だと云うのであれば、軟禁状態に置かれる以前に町を去る事を選択せずに、住人たちの煩悩を引き出してしまったと云うグレース自身への因果応報はどうなるのかと云った所だが、当の彼女は、自身の生命観による「善=利得」の道を歩む事に納得したままで町を後にする。「彼女が町を去ったのか、それとも町と共に彼女が消えたのか」と云うジョン・ハートによる最後のナレーションだが、これは、二者択一の生命観しか持てなかったが故に凶行に及んでしまったと云うグレースの取り戻す事が出来なくなった人間性の消失を意味しているものとしか思えない。
優しく思い遣りもある感受性も豊かだったグレースと云う女性、その結末は、劇中で描かれている通りになってしまう訳だが、米国による他国を食い物にすると云う対外政策に関与してきた人物たちにも、責任感と思い遣りはごく普通にあったはずで、世界を動かす立場にある人物の行動が、善と悪と云った偏った選択肢だけで推し量られようとするならば、如何に恐ろしい結末を生み出すのかと云う事。作品のクライマックスでは、そんな痛烈なメッセージが集約されている。



製作スタッフ
Staff
関連作品 (抜粋)
Related Works "excerpts"
脚本と監督
Written & Directed by
ラース・フォン・トリアー
Lars von Trier
エレメント・オブ・クライム Forbrydelsens element
ヨーロッパ Europa
奇跡の海 Breaking the Waves
イディオッツ Idioterne
ダンサー・イン・ザ・ダーク Dancer in the Dark
製作
Produced by
ヴィベク・ウィンドレフ
Vibeke Windeløv
ダンサー・イン・ザ・ダーク Dancer in the Dark
しあわせな孤独 Elsker dig for evigt
製作総指揮
Executive Producers
ペーター・オールベック・イェンセン
Peter Aalbæk Jensen
ダンサー・イン・ザ・ダーク Dancer in the Dark
しあわせな孤独 Elsker dig for evigt
撮影
Cinematography by
アンソニー・ドッド・マントル
Anthony Dod Mantle
ヴァキューミング
 Vacuuming Completely Nude in Paradise
28日後... 28 Days Later...
編集
Edited by
モリー・マーリーン・ステンスガード
Molly Marlene Stensgård
イディオッツ Idioterne
ダンサー・イン・ザ・ダーク Dancer in the Dark
美術
Production Design by
ピーター・グラント
Peter Grant
ロシア・ハウス The Russia House
奇跡の海 Breaking the Waves
衣装デザイン
Costume Design by
マノン・ラスムッセン
Manon Rasmussen
奇跡の海 Breaking the Waves
ダンサー・イン・ザ・ダーク Dancer in the Dark
挿入曲
Various Music
"Cum dederit" from Nisi dominus, RV 608 - Antonio Vivaldi
Young Americans - David Bowie
キャスト
Cast
配役
Plays
関連作品 (抜粋)
Related Works "excerpts"
ニコール・キッドマン
Nicole Kidman
Grace
Margaret Mulligan
アザーズ The Others
めぐりあう時間たち The Hours
コールド マウンテン Cold Mountain
ハリエット・アンデルション
Harriet Andersson
Gloria ファニーとアレクサンデル Fanny och Alexander
ゴシップ Gossip
ローレン・バコール
Lauren Bacall
Ma Ginger キー・ラーゴ Key Largo
マンハッタン・ラプソディ The Mirror Has Two Faces
ジャン=マルク・バール
Jean-Marc Barr
The Man
with the Big Hat
ダンサー・イン・ザ・ダーク Dancer in the Dark
ル・ディヴォース パリに恋して Le Divorce
ポール・ベタニー
Paul Bettany
Tom Edison ビューティフル・マインド A Beautiful Mind
マスター・アンド・コマンダー
 Master and Commander: The Far Side of the World
ブレア・ブラウン
Blair Brown
Mrs. Henson ペーパー・チェイス The Paper Chase
スペースカウボーイ Space Cowboys
ジェームズ・カーン
James Caan
The Big Man ゴッドファーザー The Godfather
シティ・オブ・ゴースト City of Ghosts
パトリシア・クラークソン
Patricia Clarkson
Vera エデンより彼方に Far from Heaven
エイプリルの七面鳥 Pieces of April
ジェレミー・デイヴィーズ
Jeremy Davies
Bill Henson セクレタリー Secretary
ソラリス Solaris
ベン・ギャザラ
Ben Gazzara
Jack McKay ビッグ・リボウスキ The Big Lebowski
トーマス・クラウン・アフェアー The Thomas Crown Affair
フィリップ・ベイカー・ホール
Philip Baker Hall
Tom Edison Sr. インサイダー The Insider
トータル・フィアーズ The Sum of All Fears
トム・ホフマン
Thom Hoffman
Gangster シャボン玉エレジー Shabondama Elegy
ミッションブルー Soul Assassin
ショバン・ファロン
Siobhan Fallon
Martha ダンサー・イン・ザ・ダーク Dancer in the Dark
ビッグ・マネー Big Trouble
ジェリコ・イヴァネク
Zeljko Ivanek
Ben ハンニバル Hannibal
運命の女 Unfaithful
ジョン・ランドルフ・ジョーンズ
John Randolph Jones
Gangster 大逆転 Trading Places
ダンサー・イン・ザ・ダーク Dancer in the Dark
ウド・キア
Udo Kier
The Man
in the Coat
神に選ばれし無敵の男 Invincible
ゲート・トゥ・ヘヴン Gate to Heaven
クレオ・キング
Cleo King
Olivia ナショナル・セキュリティ National Security
ライフ・オブ・デビッド・ゲイル The Life of David Gale
マイルズ・パーリントン
Miles Purinton
Jason Confess
ビル・レイモンド
Bill Raymond
Mr. Henson ザ・ハリケーン The Hurricane
オータム・イン・ニューヨーク Autumn in New York
クロエ・セヴィニー
Chloë Sevigny
Liz Henson パーティ★モンスター Party Monster
ニュースの天才 Shattered Glass
シャウナ・シム
Shauna Shim
June ウィット Wit (tv)
ミッシング・ハイウェイ(未) Octane
ステラン・スカルスガルド
Stellan Skarsgård
Chuck シティ・オブ・ゴースト City of Ghosts
キング・アーサー King Arthur
ジョン・ハート
John Hurt
Narrator
(voice)
コレリ大尉のマンドリン Captain Corelli's Mandolin
ハリー・ポッターと賢者の石
 Harry Potter and the Sorcerer's Stone
邦題タイトル一覧 Domestic Title List
原題タイトル一覧 Original Title List
製作年度別一覧 Production Year's List
キーワード別一覧 Various Categories
リンクのページ Excellent Links
サイト掲示板 bbs
管理人の部屋 Webmaster
更新履歴 Update - Blog

作品のチラシ画像 Here's Flyer Images
作品のチラシ画像 Here's Flyer Images
現時点で入手が可能な
作品の関連アイテム
トップページへ Go To The Top Page 邦題リストへ Go To The Domestic Title List 原題リストへ Go To The Original Title List 製作年度別リストへ Go To The Production Year's List キ-ワード別一覧へ Go To The Various Categories
Copyright Flyer's Nostalgia - Authored by clockrestorange
All trademarks and copyrights on this page are owned by their respective owners.