Return To Top
The Shining
シャイニング (1980) UK 119min.
Introduction 序盤アウトライン
小説家のジャック・トランスは、冬季間は閉鎖すると云う人里離れたコロラド山中のリゾート・ホテルに、管理人として妻子と共に住み込む事を快諾する。外部からの騒音もなく、執筆には最適な環境だと云う理由で快諾したジャックだったが、唯一、支配人から聞かされていた前任者の顛末には強い違和感を覚えていた。それは、狂乱した前任者が妻と二人の娘を斧で惨殺、自らも自殺を遂げてしまったと云う俄かには信じ難い血生臭いものだった。やがて、静寂の支配するオフ・シーズンのリゾート・ホテルに、仲睦まじいトランス一家がやって来るのだがーー
Various Note メモ
キューブリックは、撮影に臨むキャスト全員に対し、そのキャラクターイメージの参照とさせるべくデイヴィッド・リンチの監督作品「イレイザーヘッド」を鑑賞させていた。ちなみに、キューブリックとリンチが親交の深い関係だった事は周知の所。
シェリー・デュヴァル演じるウェンディがジャックをバットで殴る場面、あのバットは、MLB殿堂入りを果している元ア・リーグ東地区のボストン・レッドソックス伝説の左翼手カール・ヤストレムスキーのサインが入ったバットだった。レッドソックスの熱狂的ファンとして知られる原作者のキングだが、周知の通り、ボストンがNY相手に史上最大の大逆転劇を演じた2004年のア・リーグ・チャンピオンシップスの中継画面でも観戦中のキングが紹介されていた。VTRなども手元にはないので断言は出来ないが、ボストンが3タテ(後の4連勝で大逆転)を喰らったその3戦目(つまりボストンでの初戦)だったはず。
キューブリックのリテイク要求の多さは実に有名な所だが、本作に於いても、シェリー・デュヴァルに対しては、僅か一つのカットの為に127回、ニコルソンがスキャットマン・クローザースを殺害するシークエンスについても数十回を超えるリテイクを敢行、また、その1回のセットアップには9日間も要したと云うエレベーターでの流血の場面でも、リテイクが幾度となく繰り返されるなど、そのエピソードには枚挙に暇がないと云った所。また、たびたび繰り返される脚本の変更や、撮影当時70歳だったスキャットマン・クローサイズに対しての膨大な数のリテイク要求を非人道的な暴挙と捉えたニコルソンは、キューブリックの作品には二度と出演しないと断言していた。
本作の撮影当時、同棲生活を送っていたニコルソンとアンジェリカ・ヒューストンだが、そのヒューストンによれば、ニコルソンは、長い撮影を終えて帰宅すると一直線にベッドに向い、崩れ落ちるように倒れ込んでしまうと云う日々を繰り返していたらしい。
ジャックがタイピングを行うラウンジを含むホテル内部の全景は、英国のエルストゥリースタジオで撮影が行われたものだが、殆どのシークエンスを撮り終えた後、スタジオは大火災に見舞われている。その原因は、窓から差し込む日射を表現する為に用いられた照明の熱によるものだった。火災に遭遇してしまったスタジオだが、後に、高精度のシーリング加工の下で再建され、スピルバーグ監督作品「レイダース 失われた聖櫃」での多数の蛇が登場する墓場のシークエンスを始めとする様々な撮影でも使用されている。
パーティーショットの写真で終了する本編だが、周知の通り、それに続く含みを持たせた病院でのシークエンスによる別エンディングも存在していた。実はこのエンディング、当初の劇場公開の際には一週間だけ上映されていたもので、公開からその一週間後にキューブリックの指示により割愛されている。昨今まで劇場公開版として公開されていたヴァージョンは、最当初の劇場公開版とは異なるオリジナルとも云えぬヴァージョンだったと云う事である。
作品のタイトル「シャイニング」は、プラスティック・オノ・バンド名義でリリースされたレノン3枚目のソロ・シングル「インスタント・カーマ」の"We all shine on"と云う歌詞からインスパイアされたものだと云う。
本作は「1.37:1」のネガフォーマットを用いて撮影されている。「1.33:1」と云うテレビの縦横比では、その殆どが網羅されていた訳だが、縦横比「1.85:1」と云うスクリーンフォーマットで公開された劇場では、上下部分がマスキングされていた訳である。米盤でリリースされているテレビサイズのDVDでは、劇場公開の際にも観る事が出来なかったオリジナルに近いサイズでの鑑賞も可能だが、本作に限らず、テレビサイズとワイドサイズの2つのヴァージョンが存在すると云う米盤のDVDや一部のVHSには、このような然るべき理由が存在していたと云う訳である。
本作の為に膨大な数の電子音楽スコアを提供したウェンディー・カルロスとレイチェル・エルキンドだが、実際にその劇中で使用されたものは、オープニングでのベルリオーズの幻想交響曲・第五楽章引用の聖歌「怒りの日」のシンセアレンジ曲と、スポット的な箇所でのモチーフだけと云う極々僅かなものである。実際にサントラとしてリリースされたものは、バルトーク、リゲティ、ペンデレツキーなどの楽曲で占められているもので、これは、キューブリックの好みの問題だけではなく、カルロスが手掛けた楽曲のモチーフとなった原曲に対するデリケートな問題に配慮されたものだったと推測出来る。
理想のショットを取るためにはその信念を曲げる事がないと云うキューブリックだが、そんな彼にも面白いエピソードがあったりする。ある日、出演者のトニー・バートンが撮影の合間に息抜きをしようとチェスのセットを持ち込むと、それに気付いたキューブリックがバートンに試合を提案、その若かりし日には、賭けチェスでも鳴らしたほどの腕前だったと云うキューブリックは、大幅な遅れを見せていたと云う撮影すらも全停止にする形でチェスに没頭、その製作に影響を及ぼす事も辞さぬと云うほどのチェスマニアだったらしい。結局、行われた試合は、全てキューブリックに軍配が上がったらしいが、そのバートンのなかなかの手応えには、キューブリックも賛辞を惜しまなかったと云う。これは、一つの文化に対する並々ならぬ意欲を示すと云う健気で美しいエピソードのようにも思えるが、よくよく考えてみれば、その自己チューぶりにも拍車を掛ける話であり、勝手に撮影オフ宣言をされたスタッフやキャストらの表情を想像すれば、もはや、嗚咽して笑うしかないと云った所。
完成した作品を目の当たりにした原作者のキングによれば、キューブリックは自身の原作著書を全く理解していないとの事だが、これは、原作者のコメントながらも、実に微妙な所。自身の著作をベースにした映像化作品では、最悪の作品とまで語るキングだが、現実には、映像化されたキング作品の中でも、その無類の完成度は突出していたものだったと云える。それぞれの作品を鑑賞すれば、その理由も明らかと云った所だが、キング自身がメガホンを取った冗長なTVサイズ版の「シャイニング」と比較すれば更に明白、シュールなプロットをリアルな二次元の映像で表現するための創作表現と云うものが、コミックブックのコマや活字を書き進めるような作業とは異なる分野だという事も、満を持して再認識させられる。取り分け斬新でもなく機知に富んでいたとも云えぬシンプルな原作のモチーフを、究極の恐怖と極限の緊張感に終始するヴィヴィッドな映像で甦生させたキューブリックだが、彼を揶揄するキングに与えたその恩恵は、計り知れないものだったような気がしてならない。



製作スタッフ
Staff
関連作品 (抜粋)
Related Works "excerpts"
製作と監督
Produced & Directed by
スタンリー・キューブリック
Stanley Kubrick
2001年宇宙の旅 2001: A Space Odyssey
時計じかけのオレンジ A Clockwork Orange
バリー・リンドン Barry Lyndon
フルメタル・ジャケット Full Metal Jacket
アイズ ワイド シャット Eyes Wide Shut
製作総指揮
Executive Producers
ジャン・ハーラン
Jan Harlan
バリー・リンドン Barry Lyndon
フルメタル・ジャケット Full Metal Jacket
原作
Based on the novel by
スティーヴン・キング
Stephen King
キャリー Carrie
死霊伝説 Salem's Lot (tv)
脚色
Screenplay by
スタンリー・キューブリック
Stanley Kubrick
* 製作と監督も兼任
ダイアン・ジョンソン
Diane Johnson
ル・ディヴォース パリに恋して Le Divorce
撮影
Cinematography by
ジョン・オルコット
John Alcott
時計じかけのオレンジ A Clockwork Orange
バリー・リンドン Barry Lyndon
編集
Edited by
レイ・ラヴジョイ
Ray Lovejoy
2001年宇宙の旅 2001: A Space Odyssey
爆走! Fear Is the Key
美術
Production Design by
ロイ・ウォーカー
Roy Walker
バリー・リンドン Barry Lyndon
恐怖の報酬 Sorcerer
衣装デザイン
Costume Design
ミレーナ・カノネーロ
Milena Canonero
時計じかけのオレンジ A Clockwork Orange
ミッドナイト・エクスプレス Midnight Express
音楽
Music by
ウェンディー・カルロス
Wendy Carlos
* 当時は性転換手術前でウォルター名義だった。
時計じかけのオレンジ A Clockwork Orange
レイチェル・エルキンド
Rachel Elkind
時計じかけのオレンジ A Clockwork Orange
挿入曲
Various Music
Béla Bartók - from "Music for Strings, Percussion, and Celesta"
György Ligeti
Krzysztof Penderecki
キャスト
Cast
配役
Plays
関連作品 (抜粋)
Related Works "excerpts"
ジャック・ニコルソン
Jack Nicholson
Jack Torrance チャイナタウン Chinatown
カッコーの巣の上で One Flew Over the Cuckoo's Nest
ラスト・タイクーン The Last Tycoon
シェリー・デュヴァル
Shelley Duvall
Wendy Torrance ナッシュビル Nashville
アニー・ホール Annie Hall
ポパイ Popeye
ダニー・ロイド
Danny Lloyd
Danny Torrance Will: The Autobiography of G. Gordon Liddy (tv)
スキャットマン・クローザース
Scatman Crothers
Dick Hallorann 黒帯ドラゴン Black Belt Jones
カッコーの巣の上で One Flew Over the Cuckoo's Nest
バリー・ネルソン
Barry Nelson
Stuart Ullman 大空港 Airport
おかしな結婚 Pete 'n' Tillie
フィリップ・ストーン
Philip Stone
Delbert Grady 時計じかけのオレンジ A Clockwork Orange
バリー・リンドン Barry Lyndon
ジョー・ターケル
Joe Turkel
Lloyd,
Overlook bartender
荒野のアニマル The Animals
ブレードランナー Blade Runner
アン・ジャクソン
Anne Jackson
Doctor のっぽ物語 Tall Story
ふたりの誓い Lovers and Other Strangers
トニー・バートン
Tony Burton
Larry Durkin ロッキー2 Rocky II
サンフランシスコ物語 Inside Moves
バリー・デネン
Barry Dennen
Bill Watson ブラニガン Brannigan
ケンタッキー・フライド・ムービー
 The Kentucky Fried Movie
ヴィヴィアン・キューブリック
Vivian Kubrick
Smoking guest
on ballroom couch
(uncredited)
* キューブリック監督の娘/ノークレジット
2001年宇宙の旅 2001: A Space Odyssey
バリー・リンドン Barry Lyndon
邦題タイトル一覧 Domestic Title List
原題タイトル一覧 Original Title List
製作年度別一覧 Production Year's List
キーワード別一覧 Various Categories
リンクのページ Excellent Links
サイト掲示板 bbs
管理人の部屋 Webmaster
更新履歴 Update - Blog

作品のチラシ画像 Here's Flyer Images
現時点で入手が可能な
作品の関連アイテム
トップページへ Go To The Top Page 邦題リストへ Go To The Domestic Title List 原題リストへ Go To The Original Title List 製作年度別リストへ Go To The Production Year's List キ-ワード別一覧へ Go To The Various Categories
Copyright Flyer's Nostalgia - Authored by clockrestorange
All trademarks and copyrights on this page are owned by their respective owners.