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Krotki film o zabijaniu
殺人に関する短いフィルム (1988) Poland 84min.
Introduction 序盤アウトライン
ワルシャワ。青年ヤチェクが彷徨うように町を徘徊していた頃、弁護士への最終関門に合格した若い司法修習生のピョートルは、その喜びを露にガールフレンドと共にカフェに向っていた。互いの存在など知る由もないヤチェクとピョートルだったが、そのカフェでは、ガールフレンドとの歓談が弾むピョートルを他所にヤチェクも一息入れていたが、店を後にしたヤチェクの方は、切断した一本の紐を腕に巻きつけると、拾ったタクシーを町外れの川堤まで向わせていた。すると、突如、ヤチャクはその手に巻き付けていた紐でタクシー運転手の首を締め上げた上に、抵抗する彼の手を棒で叩き潰すと云う凶行に及ぶ。更に、悶絶する運転手を車から引きずり降ろしたヤチェクは、毛布を被せた運転手の顔面に大きな石を何度も振り降ろすのだったーー
Various Note メモ
88年のカンヌ国際では、監督のキェシロフスキが「パルム・ドール」にノミネート、「審査員賞」と「国際映画批評家連盟賞」を受賞、同年度ヨーロッパ映画賞では「作品賞」を受賞している。
その冒頭の猫の首吊り他殺体にも驚かされたが、やはり、何より過激な描写と云えば、あの絞首刑の執行場面を描いた一連のシークエンスである。執行前の死刑執行室で受刑者の足元の段差に失禁用のトレーを挿入する所から嫌な予感は走ったが、やはりその最期には、人の命が奪われる瞬間であるにも拘らず、これは大捕り物なのかと云った印象すら与える仰々しい執行の描写が展開、その情緒も鷲掴みにされてしまったと云った所。この生々しさは、映画史にも残るものではないだろうか。
激情に駆られた刹那的な殺人と云う事で「故殺」として扱われてしまわれそうなヤチェクの殺人行為だが、ヤチェクはカフェにいる時から殺人をイメージして切られたロープを握り締めているもので、タクシーに乗り込む際は勿論、車内での攻撃を実行するに至るまで握り締めたままだった訳である。殺害する相手を選別する点についての計画性は無かったにせよ、これは単なる「故殺」として処理されるべきものでもなく、不特定多数を対象に計画された「謀殺」的な要素も含んだ犯罪だったような気もする所。何れにせよ、その殺害犯が実際に行った残虐極まりのない殺害と云う行為をあらかじめ提示しながら、あろう事か、被告側の弁護士が殺害犯を哀れむと云う理不尽なシナリオが展開する作品である。
ティム・ロビンズがメガホンを取った「デッドマン・ウォーキング」では、その刑事裁判とは全く関係のないシスターが、ショーン・ペン演じる受刑者青年が行ったとされる殺害行為そのものに疑惑も持って接見すると云う設定で、結果的には明らかなものとされるその真相に辿り着くまでの間に然るべく尊重すべき人間性を投影しながら死刑制度と云うものに一石を投じている。本作とは違い、受刑者と接見する人物は、当該刑事裁判とは無関係の第三者(シスター)だった訳だが、法の番人でもなく刑事法に基づいて弁護を展開する弁護士でもない民間人のシスターが接見者として設定されている為に、聞き手にも伝わりやすい話となっていたのである。
本作については、「作品のテーマは暴力以外の何物でもない」と云うコメントを残していたキェシロフスキだが、これは、一つの暴力が生む必然的に連鎖する悲劇、加害・被害者双方の当事者はもとよりその環境周囲にまで及ぼす悲劇を、そのメッセージとしていると思えるものである。ただ、作品では被害者側への同情は微塵にも描かれていないもので、むしろ嫌味なキャラクターを被害者に設定する事で、究極の自己中心的な加害行為が、如何に愚かな結果を生み出すのかと云う部分を強調しているものである。つまり、嫌味たっぷりな上に平気で乗車拒否をし、家庭持ちであるにも拘らず若い女の子にも平気で声を掛けると云った人物を社会から抹消すべく殺害に及んだ人物が、その本来は妹想いだった優しい青年であったとしても、殺人行為はどこまで行っても殺人行為にしか過ぎず、取り返しのつかない結果を生むもなのだと言う事で、そのメッセージ性も、暗に自嘲的な描写のようにも見える仰々しい刑務官達の様子も交えた生々しい絞首刑の執行場面で証明されている。
弁護士となる青年の倫理観については、その最終試験の面接のシークエンスでも描かれてはいるが、いくら新米で世慣れしていないとは云え、弁護士と云う立場の人物が、残虐な殺害行為に及んだ受刑者だと知りながらも、その男の懺悔に耳を傾けてしまうと云う設定には不自然さも拭えない所。また、弁護士の人物像についての蛇足だが、あの最終試験での面接の場面、刑罰や極刑で人は救えないと言うのなら、では、何を持って秩序を守るのかと云う事になってしまう。
暴力が生む必然的悲劇を主軸にしながらも、敢えて被告側の弁護士を接見者と設定する事で、極刑に対する問題意識までもが強調されるシナリオだが、その意図は充分に伝わるものの、新米弁護士の葛藤については、噛締めるまでに抑制して欲しかったと云う気がしてならない。いくら同じカフェに居合わせていたとは云え、何かが出来たはずもなく、実際にはそのように感じるものであっても、取り返しのつかない現実を直視している者が安易なまでに「何かが出来たかもしれない」と云った台詞は口に出して喋る事ではない。また、刑務所では誰もが自分を憎むと話すヤチェクに対して「君に対してではなく、その行為に対してだ」と言って慰めるのも如何なものか。ヤチェクの抱える過去には間違いなく同情出来るもので、これから死刑を迎えようとする人間に殺人者であると云う事を再認識させても仕方がない事ではあるのだが、如何にも「君の行為は間違っているものだが、君は死刑に値する人間ではないのだ」と云ったニュアンスでヤチェクには伝わってしまうもので、死刑を免れる事など出来ようもない状況のヤチェクにこの世への未練を引きずらせるだけである。ヤチェクと云う「個人」に対して真に同情しているのであれば、迷う事無くすんなり刑に向わせるのが人情である。あの差し迫った局面で偽善的にも感じられる倫理観などを押し付ける事が一体、誰のためになると云うのか。あの刑務官達をもイラつかせた長ったらしい接見は、理性の確立した大人の所業とは到底思えないエゴにも満ち溢れた行為であり、「こうなる筈ではなかった」と云う後悔の念をぶちまける事によって、この世への未練が再燃したヤチェクは、その結末の通り、あの往生際での断末魔、苦悶の最期を迎える事になってしまう訳である。
成熟した倫理観も持たぬ青二才の弁護士がヤチェクの未練に火を点ける事によって拍車が掛かるあの壮絶な死刑執行場面だが、全てがキェシロフスキの意図した演出だったのだろうか。何気なく見てしまえば情緒を揺さぶられるような感動的なものにも見えてしまう接見の場面だが、実は苦しみを倍増させるだけの哀れみの欠片もない大人気なくも非情なやり取りを描き出したものである。「殺人」と云う行為は「死刑」と云う極刑を以ってしても安易に許されるような事ではないと云う鮮明なメッセージを、意図的に明確に打ち出した演出だったのであれば、感嘆し納得も出来る所。



製作スタッフ
Staff
関連作品 (抜粋)
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監督
Directed by
クシシュトフ・キェシロフスキ
Krzysztof Kieslowski
愛に関する短いフィルム Krótki film o milosci
ふたりのベロニカ La double vie de Véronique
トリコロール 青の愛 Trois couleurs: Bleu
トリコロール 白の愛 Trzy kolory: Bialy
トリコロール 赤の愛 Trois couleurs: Rouge
製作
Produced by
リシャルト・フトコフスキ
Ryszard Chutkowski
デカローグ Dekalog
愛に関する短いフィルム Krótki film o milosci
脚本
Written by
クシシュトフ・キェシロフスキ
Krzysztof Kieslowski
* 監督も兼任
クシシュトフ・ピェシェヴィチ
Krzysztof Piesiewicz
愛に関する短いフィルム Krótki film o milosci
ふたりのベロニカ La double vie de Véronique
撮影
Cinematography by
スワヴォミール・イジャック
Slawomir Idziak
コンスタンス Constans
太陽の年 Rok spokojnego slonca
編集
Edited by
エヴァ・シュマル
Ewa Smal
愛に関する短いフィルム Krótki film o milosci
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アルメン・ミナシアン
Armen Minasian
潜望鏡を上げろ Down Periscope
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美術
Production Design by
ハリナ・ドボロヴォルスカ
Halina Dobrowolska
愛に関する短いフィルム Krótki film o milosci
トリコロール 白の愛 Trzy kolory: Bialy
衣装デザイン
Costume Design
ハンナ・クヴィクロ
Hanna Cwiklo
デカローグ Dekalog
愛に関する短いフィルム Krótki film o milosci
マルゴルツァタ・オブローツァ
Malgorzata Obloza
音楽
Music by
ズビグニエフ・プレイスネル
Zbigniew Preisner
愛に関する短いフィルム Krótki film o milosci
僕を愛したふたつの国 ヨーロッパ ヨーロッパ
 Europa Europa
キャスト
Cast
配役
Plays
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